ルネサステクノロジー 企業分析
火災事故から立ち直りつつある。今一度この企業の業況などについて確認し、国内半導体業界を見るべきかとこの火災でおもいました。国内半導体1位のキオクシアが、メモリ向けとしては国内最先端にして世界最先端プロセスである四日市工場に1兆円規模の投資を行って10nm世代以降にキャッチアップ・・・
会社の沿革など
2010年設立し、本社は東京都江東区。半導体メーカー大手で、三菱電機および日立製作所から分社化し「ルネサス テクノロジ」が前身。後に、NECから分社した「NECエレクトロニクス」と経営統合
国内の生産基盤(21年4月現在)
前工程を担当する6工場(那珂、川尻、西条、高崎、滋賀、山口工場)、後工程を担当する3工場(米沢、大分、錦工場)を抱える。
また、東京都小平市に武蔵事業所がある。
那珂工場は、130-90nm世代のマイコンが主力、ロジック向け国内最先端の40nmプロセスのLSIも製造する。なお、2001年に世界初となる300mmウェハの量産成功。ちなみに、この度出火した「N3棟」では非常にその当時の古い設備を使用していることがわかった。
また2008年に、当時はルネサスが保有した鶴岡工場(現ソニーセミコンダクタ山形)において、当時は世界最先端プロセスだったHigh-κ絶縁体を用いた40nmプロセスによるシステムLSIの量産開始。しかし、その2年後にルネサスは微細化を打ち切り、28nm以降の生産はTSMCに委託している。
過去の災害・被害
2011年の東日本大震災で被災した那珂工場、2016年に被災した川尻工場は、数ケ月で復旧。2021年2月の福島県沖地震で停止し、同年3月に火災で再び停止した那珂工場の復旧は継続中。
競合相手企業(2019年の統計)
国内半導体製造
1 キオクシア
2 ソニーセミコンダクタソリューションズ
2 ルネサス
車載向け半導体
1 NXPセミコンダクターズ(オランダ)
2 インフィニオン(ドイツ)
3 ルネサス
ルネサスは車載BIG3の一角。車載向けマイコンは世界シェア1位である。ただし40nm以前の世代で構築した「レガシープロセス」の製造であり、自動車メーカーを頂点とする垂直統合の最下層に位置する半導体である。従って、安く買い叩かれることから、車載半導体製造業界では90nm以前の成熟した安価なプロセスを用いるて製造することが多い。そのため、40nm以降をGLOBALFOUNDRIESに委託しているインフィニオンを始め、2010年代以降の大手車載メーカーはほぼ同様の戦略を取っている。
汎用マイコン
1 マイクロチップ・テクノロジー
2 STマイクロ
3 ルネサス
ルネサスの主力商品
繰り返しになるがレガシー半導体(旧世代の半導体)に強み
三菱・日立・NECは、過去は世界を代表するマイコンメーカー。統合前の全てのレガシーを引き継いでいる。統合後は新世代マイコンへ。
レガシーの代表格はSuperH(SHファミリ)、統合後にディスコン
現在の主力商品は以下です。
RL78ファミリ:NEC 78Kファミリの系譜(8ビット/16ビットマイコン)
RXファミリ :32ビットマイコン
RH850ファミリ:NEC V850ファミリの系譜
R-Car:SH-Navi」の系譜を次ぐハイエンド車載SoC
NEC 78K(Z80の系譜)の低価格・低消費電力、、ルネサス独自のCISCプロセッサコアによる高性能・低価格・信頼性ある「RXファミリ」、車載向けマイコンの「RH850ファミリ」、カーナビ用SoCとして世界シェア過半を占める「R-Car」が主力である。
しかし、車載半導体の現在は2010年代にNVIDIAやソニーセミコンなど異業種が殴り込み、2019年「RAファミリ」を発表してARMビジネスに本格参入し、2020年にはRISC-Vを採用する等、新たな動きがある。自動運転時代を見据えた2015年リリースの「R-Car H3」ではついにSHコアが消え、ARMコアに置き換わった。
ルネサスの戦略
最小限のファブのみを抱える「ファブライト」(工場軽量化)戦略を取る。先端プロセス開発の為にファブに莫大投資を必要しない、最小限の投資で済むレガシーなファブのみを抱える「ファブライト」戦略である。よって、車載大手として2020年代まで生き残り成功した。
150mmウェハ以下の工場の生産能力ランキングでは世界TOP10に入ることがない。
ルネサスへの依存度
車載用に強いということもあり、トヨタもルネサスに依存する。ルネサスの工場停止は自動車販売の好不調を左右する。トヨタは在庫を持たない「ジャストインタイム」方式を取っているためです。
一方で、トヨタは特定サプライヤーへの依存を避け、下請けを分散する方針を取っていた事で知られるが、東日本大震災で那珂工場が被災した際、ほぼ全てのサプライヤーが2次下請けであることが判明したことも有名な話である。当時那珂工場ではECUを製造していた。
今冬米国のオースティン工場がテキサス寒波により停電し生産が停止したこと、ルネサス那珂工場の火災において、世界のほぼ全ての自動車工場が稼働を停止。もちろん、トヨタや他の自動車メーカーのみならず日本経済への影響を与えることが露呈した。数千人規模の支援が自動車メーカからなされたとの報道もある。
2020年12月 本決算(概要)
2月10日に開示した本決算は、連結税引き前損益は652億円の黒字(前期は△3.2億円)に浮上。今期の見通しは非開示、配当は未定であった。直近3ヵ月(4Q)実績は連結税引き前利益は前年同期比3.0倍の186億円に急拡大であった。
セグメント別に見ると、自動車向け事業は、前連結会計年度と比べ8.1%減少し3,410億円である。「車載制御」と「車載情報」用のマイクロコントローラ、SoC、アナログ半導体およびパワー半導体等の供給が、自動車生産減少の影響を受けたことが要因。
産業・インフラ・IoT向け事業は、マイクロコントローラ、SoCおよびアナログ半導体を中心に好調であり、前連結会計年度と比べ10.3%増加し3,636億円となった。