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ポール・ブレイディとローデンOモデル

昨日Music Plant主催の秋のケルト市というイベントに行ってきた

Music Plantさんは97年設立の音楽事務所でこの20年以上アイルランド、ケルト、その他ヨーロッパ辺境の素晴らしいミュージシャンの来日をプロデュースする活動をしてきた団体。団体といっても野崎洋子さんという女性がほぼ一人でやってきたようだ。

僕なんかはすぐ間違えてしまうのだが、同じような活動を行なっている団体でPlanktonというところがある。こちらは川島恵子さんという方が中心にやってきた団体で、ケルティック・クリスマスとか、チーフタンズの来日公演などのプロデュースをしてきた。

このお二人は当然知り合い同士だと思うが、どんな関係があるのか少し興味がある。お互いの活動が当然被ってしまうことが多々あるのだと思うが、どのように棲み分けているのだろうか。余計な心配ではあるけれど。

それは別として、僕自身これまで何度お二方が企画したライブに行ったか知れない。それぞれCDも企画・販売して居て当然たくさん保有している。僕の音楽体験の半分以上はこのお二人の女性のおかげだと言っても過言ではない。感謝してもしきれない。

ところでこの秋のケルト市のプログラムで二つ、興味があり出向くことにした。一つはピーターバラカンによるケルト音楽DJ、もうひとつはポール・ブレイディの未公開ライブの放映。

ピーター・バラカンのDJは遅れて入ったのだが、大盛況で300人くらいの人が熱心に聞いていた。シャロン・シャノン、ドーナル・ラニーとクールフィン、ポーグス、ルナサ、フルック、”Lasairfhíona”(なんと読むのか。ピーターはリサリオーナと言っていたような。)というアラン諸島に住む歌姫も紹介していた。最後はヴァン・モリスンの「イントゥ・ザ・ミュージック」で締め。トークは少なめであったが、アイルランドの音楽が本当に好きなんだろうな、ということは伝わった。

それに続いてポール・ブレイディのライブ。コロナ禍におけるダブリン・ナショナルコンサートホールでのなんと一人弾き語り、無観客。47年生まれだから70代だがとてもそうは見えない。何の加工もギミックもない生の歌と演奏。実力がないとこういうのはなかなかできない。僕が少し感動したのはその選曲、大好きな3曲「ナッシング・バット・ザ・セイム・オールド・ストーリー」「アーサー・マクブライド」「レイク・オブ・ポンチャートレイン」をチョイスしている。

ドーナル・ラニーと二人で演奏するこちらの動画は昔から大好きだった。この歌は彼が若い頃に経験したアイルランド人に対する差別を歌ったものだ、とライブの中でも語っていた。「気をつけろ、俺の前を横切ったら、お前を二つに切り裂くぞ」という乱暴な歌詞に迫力がある。

□Paul Brady sings Nothing But The Same Old Story

ついでにこちらも

□Arthur McBride - Paul Brady 1977

□The Lakes of Pontchartrain - Paul Brady 1977

今回のケルト市ではMusic Plantから出版された「アイルランド音楽名盤ガイドvol.1」として「Paul Brady/Welcome Here Kind Stranger」という新刊が売られていた。

この本にはポール本人への詳細なインタビューが載っているが、それによると自身は10代の後半までトラディショナルな音楽にあまり興味がなかったとのこと。元々ロックやブルースが好きで、大人になって音楽活動をする中で伝統音楽の世界に入って行ったという。上記1977年の演奏などを聴くと、アイルランドの太古の血を受け継いだようにも思えてしまうのだが、むしろ、どっぷり浸かっていなかったからこそいいのかもしれない。

上記ライブの中のMCでも話していたが「アーサー・マクブライド」はアメリカで居候をしていた家にあったアイルランドの伝統曲集から学んだというし、「ポンチャートレイン」はプランクシティのクリスティ・ムーアが歌っていたのを聞いて覚えたという。ちなみにライブなどで曲を演奏するときに、どこでその曲を覚えたのかを説明するのがアイルランドの歌い手のしきたりなのだそうだ。覚えておこう。

これなんか観るとやっぱりほんとかよ、と思ってしまうが。僕が一番好きな映像です。

□The Shamrock Shore

ギターについてもインタビューで語っている。彼はDADGADチューニングは使わないという。使うのは三つだと。普通のチューニング、ドロップD、そして6弦をCまで下げるGチューニング。しかし上記ライブでは4本のギターが置いてあって、全部チューニングが違うんだよ、と話していた。最近はDADGADも使っているのかな。

そしてその4本のギターが、なんと全部ローデンのOモデルだ(僕にはそう見える)。全てシダートップのようだ。ローデンのホームページにポール・ブレイディのシグネチャーモデルというのが載っているがこれは「ブビンガ」という材がサイドバックに使われている。このボディの大きなOサイズのローデンを文字通り掻き鳴らして振るわせる。

ポールのようなギターが弾きたい方はぜひ、当店にも90年代のOサイズが一台ありますので。

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