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これは、ほかでもない「わたし」の、あるいは「私」の。 そして、「わたしたち」の物語だ…
「LINEでは久しぶり。藍、元気?」 『元気だよ。紫はどう?』 「なんとかやってます。……とこ…
贈り物を考えるのは、この世で一番楽しい時間の一つだと思う。脳内で、相手の好きそうなもの…
Q:自分に似ていると思う動物は? A:蛇 ――普久原 紫 小学校の時の卒業文…
その人は、雨降る中、薔薇の下のベンチにいた。 薔薇公園と呼ばれるその憩いの場は、文字…
1. 始業式の朝の校内は、とろりとした春の明るさに満ちている。 春休みはもう少し長くた…
■うたえないから “―――ごめんなさい” 音楽室から戻るや否や、手渡されたノートの切れ端には、それだけが書いてあった。 穏やかで優しい人なんだろうな、と思っていた。 後ろの席の、福本 藍(ふくもと あい)。中高一貫の女子校で、高校一年の今年、初めて同じクラスになった。中学の頃から存在は知っていた。色が白くて、すらっと背が高くて、すがすがしい後姿が遠くからでも目立つから。涼しい目鼻立ちで、赤い縁の眼鏡が似合っていた。大人しい子たちのグループにいて、教室の隅でいつも本
「これ、捨てていい?」 わたしが食器棚の中を見ながら声をかけると、比呂は怪訝な顔をした…
「最近、思わず泣いてしまったことってある? 私は、――」 この街は、散歩に向かない。 …
駅から帰宅する途中、“Endless”という古い喫茶店が、閉店の貼紙を出しているのが見えた。…