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プリっとしたい。

この冬は、蒸し料理に注目していた。
野菜やお肉、魚の旨味を蒸気で閉じ込める製法。人によってはお菓子やパンを拵えることもあるが、わたしは殻に入った卵をそのまま蒸気にあてた「蒸したまご」が気になっていた。見た目の仕上がりは茹でたまごと変わらないのだが、白身の部分がプリっとした食感になる。

とはいえ、我が家には蒸し器がないので、炊飯器の蒸し機能が活躍中。
たまごの温度や時間設定にはコツが必要だが、なんとなく出来てしまう。湯に晒していないぶん、たまごの味も非常に濃厚。葉物野菜のサラダに入れたり、サンドイッチにしてもしっかり主張してくる食感と旨味にすっかり心を持っていかれた。「簡単にできるし、もっとつくってみたいな」なんて考えるまでに時間が掛からなかったのは、言わずもがなである。

しかし、ここで大きな壁に直面した。
炊飯器を使う、ということは「米が炊けなくなる」のである。週の半分は丼メニューにしてしまう私にとっては、米が炊けないことは大きな痛手だった。家で食べるならまとめて炊いて都度温めればいい。問題はお弁当だ。ズボラな性格ゆえ、特別な事情がなければ週2回はのっけ弁にしている。米と作り置きをのせればすぐできるので、腹持ちも栄養バランスも丁度いい。そんな食いしん坊の腹は、卵だけでは満たされない。

もちろん、ほかの調理方法や蒸したまご自体の作り置きも検討した。朝の忙しい時間帯に調理方法がひとつ潰されてしまったり、出来立てだからこそ味わえるあの濃厚な旨味に勝る妥協点など、見つかるはずもなく。量が多くても段を増やせば対応できる蒸し器、蒸篭(せいろ)を導入することに。

そうなればもう早い、土台となるフライパン(または鍋)の寸法に合わせて商品を購入すればいい。ほぼ解決!と考えた私が甘かった。世の中にはたくさんの蒸篭がある。
土台の寸法が合っていようと、素材や造りまで私の好みにマッチするか、たくさんありすぎて微妙なところ。ネットで気軽に探すのもいいが、実際に食材を入れて日々使うものなので、思い切ってかっぱ橋道具街まで出掛けて探すことにした。

「道具街なんだもの、何かしらときめくものはあるでしょう」といった呑気な考えは、すぐに絶望へ変わった。目当ての店は長期休業、ほかのお店でも蒸篭自体は取り扱っていたが、専門外だからか思っていたよりも品揃えが思わしくなく、少人数で使用する大きさに至っては、ほとんど店頭になかった。それもそうだ、道具街に用事がある人の多くが自身も店を営む業者か、個人であっても包丁や鍋、皿などの需要がほとんど、蒸篭を欲しがるのはだいたい前者だった。

ろくに下調べをしなかった自分を呪っては、残された選択肢を吟味してみる。初めての買い物なので、そんなに多くは望まない。失敗してもいい経験、で再挑戦しようじゃないか…と思っていたものの、ひとつの悩みポイントにとらわれてしまった。調理する食材と蒸篭の余裕、高さだ。

「蒸したまごを作りたい!」が蒸篭を購入するひとつの理由だったが、じつは卵以外に鶏の胸肉をよく蒸していた。炊飯器で作っていたときは、多少小さいものであってもぎゅうぎゅうだった。たとえフタが近くても、丈夫な金属だったので劣化を気にすることはないが、蒸篭は竹か木材で出来ている。耐久性を保つためにも、多少の高さを必要としていた。手元にあるものは飲茶用、小ぶりの肉まん程度しか入る余地がなかった。

ショックに打ちひしがれながら、店を去った。
また来るぞ。とつよく思いながら、スケジュールの都合がつくことはなく。偶然蒸篭がおいてある店に通りがかるも、ちょうど良いものが見つけられず…現在に至っている。炊飯器で蒸し料理をする際、主食となる米を差し置いて用意して良いのかと、自分の胃袋の機嫌を伺うビクビクした気持ちを拭えないまま、炊飯器と向き合っています。

これを読んでいるみなさんは、どんな蒸し器を使っているんだろう。
電鍋かな、鍋に入れる蒸し用の網かな…蒸篭かな。
ちょうどいい蒸し器情報、お待ちしてます。
蒸篭だとなお良いです。

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