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住宅ローンは変動金利の独り勝ちってホント?①

 お世話になっております。仙と申します。金融の個人営業一筋16年。昨年末に15年勤めた都銀を退職し、今は個人会社を設立して財産コンサルティング業を行うと共に、業務委託IFAとして活動しています。
今回は、最近話題の住宅ローンについて、自説を述べる回です。

 さる12月20日。日銀の黒田総裁から、YCCの誘導目標幅を±0.25%から±0.5%へ引き上げる旨が発表されました。これによって、10年国債の利回りを0.25%に押さえ込んでいたところを、上限がしばらく0.5%になりました。ちなみに12/27の終値は0.459%ですから、日銀が頑張って10年国債の利回りを抑え込んでいたということなんでしょうね。
 なぜ、これが大騒ぎになるのかというと、10年国債の利回りは『長期金利』と言われ、長期金利は様々な金利商品の金利を設定する際に参照されます。その代表的なものが住宅ローンの固定金利です。つまり10年国債の利回りが上がると、住宅ローンの固定金利が上がります。
なので色んな人の生活に関わるので、騒がれているということです。

 さて、12/28に日経から記事が出ました。
【三菱UFJなど大手行、住宅ローン金利上げへ 固定型で】

上げ幅は10年固定で0.2%程度のこと。
三菱UFJ銀行のホームページを覗いてみます。

すると、現在の借入金利の下限が表示されています。

試しに以下の条件でシミュレーションを入力してみます。
借入金額:5000万円(内ボーナス返済0%)
借入金利:10年固定金利0.87%
借入期間:35年

月額返済138,134円
年間1,657,608円
上の条件で、金利のみ+0.2%して、1.07%で試算してみましょう。

月額返済142,780円(+4,646円)
年間返済1,713,360円(+55,752円)
10年固定金利を選ぶ場合の金利負担は、10年間で約55万円増えました。
「なんだこの程度か」「いやバッグ買えるやん」「子どもの学費が…」などなど、人によって感じ方は違うと思いますが、まあどうでしょう?
マンション買うか買わないか、家建てるか建てないかの判断が変わるほどの違いにはならない気がします。
5000万円を35年返済で借入する場合、金利が0.2%上がると月の返済が約5,000円、年間返済が約60,000円上がる。こんな程度でざっくり考えておきましょうか。つまり、今と比べて金利が0.4%上がった時は月の返済が10,000円上がり、年間返済が12万円上がる。こんなイメージです。
まあ、住宅ローンの金利は毎月変わるので、都度シミュレーションをすれば、より正確に試算できますが。

 安易なことは言えませんが、わが国で30年続いたデフレから脱却する為に、2013年4月以来黒田バズーカと呼ばれる【異次元の金融緩和】を続けてきているわけです。世界的なインフレの影響を受けて、わが国のコアコアCPI(エネルギー、食品を除く消費者物価指数)はついに+2.8%を記録しました。日銀の目指す「2%のインフレ」は、このコアコアCPIを参考にしています。これから賃金の上昇を受けて、コアコアCPIが2%超に定着した時には、金融緩和は終わるのでしょうし、そこに至るまでには現状の緩和策の修正が為されていくものだと思います。
一方で、米国の景気後退が鮮明になってきた時には、世界的な高インフレは落ち着き、日本にも波及しているかもしれません。ここは様々なシナリオがありますが、現に大企業の華々しいベースアップのニュースを目にされていると思います。金利上昇は警戒するに越したことはないのではないでしょうか。

 横道に逸れましたが、筆者は住宅ローンは投資や投機(ギャンブル)では無く生活設計であり、得かどうかよりは「その支出で大丈夫か?」という観点で考えるべき、と思っています。
固定金利が上昇したことで、動いていない変動金利を選択される方は更に多くなるでしょう。変動金利は20年以上動いていません。こちらは短期金利を参照して金利を決めていますので、長期金利と連動するわけではありません。景気が良くなりそうな時は先に期間の長い金利が上がり、良くなる過程で変動金利も上昇していきます。景気が悪くなる時はその逆で、長い金利が悪くなる将来を反映して下がり、変動金利は悪い景気を反映してどんどん下がっていきます。景気の低迷が続けば変動金利は下がったまま。長期金利も下がっていきます。

 過去どうであったか見てみましょう。過去の金利推移は、イー・ローンのホームページで参照できます。https://www.eloan.co.jp/home/trendRate.php

「住宅ローンの変動金利は30年動いていない」というフレーズを目にするくらいです。ざっくり言うと、住宅ローンの変動金利は政策金利を参照しており、政策金利はバブル崩壊以降ほぼほぼ動いていません。要するにずっと日本は不況で、デフレが続いていたからです。日本国民は、30年間住宅ローンの変動金利の上昇を経験していません。
 20代の方が、親御さんや金融機関他アドバイザーに相談すると、「金利は変動金利が良い」と言うでしょう。さもありなん。彼らには、変動金利が低位安定してきたデータと、金利が高い固定金利から変動金利への借り換えで得をしてきた経験があります。
ところが、おじいちゃんおばあちゃんに意見を聞いてみると「金利が上がったら返済大変だぞ」という答えが返ってくるでしょう。これもまたさもありなんで、高度経済成長期のインフレを経験しているから、金利上昇の怖さが分かるからです。

 「長期金利が上がった。『まだ』変動金利は上がっていない。変動金利は長い間動いていない。だから変動金利で借りても大丈夫だ。」というのは、色々と説明を端折っている部分があるかと思います。
また、「125%ルールがある」とか「5年ルールがある」というのは、月の返済額がしばらく変わらない分、後にしわ寄せがくるという話ですから、あるから大丈夫という話ではありません。売れば返済できるといっても、返済できないから売るところまで追いつめられては、日常生活的に様々な支障が出てくることでしょう。

ちょっと長くなりましたので、次回はそのあたりについて。金利変動によって返済がどう変わっていくか?について述べていきたいと思います。
ここまで読んでいただき、有難うございました。

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