個人のお客さまの相談対応の考え方
お世話になっております。
長らく機能が停止していた私の質問箱に、「資産額いくらから相談できるのか?」との質問が寄せられました。質問いただくこと自体が有難いのですが、相談となると更に「おおっ!!」という感じになります。
しかしながら、誰とも分からない人にDMするのも気が引けるでしょうし、大変失礼ながら…実は私も、誰とも分からない方からご相談承るのも、ちょっと怖かったりします。
ですので、通常こんな感じで考えていきますよ、というのを見ていただき、もしご関心があれば、DMなり何なりご相談いただければと思います。
また、金融機関あるいはフリーランスの担い手の皆さんにも、相談対応の考え方の参考にしていただきましたら。
①納税 ②分割 ③対策 の順番で考える
おや…?どこかで見たことがあるような…?パクりでは?と思われた方、いらっしゃるかと思いますが、同じ研修を受けたのだと解釈していだければ。
「銀行員はそう考えるんだね」ということでは無く、個人を顧客とする担い手全てにおいて通じる話だと思いますので、未だにこの順番で考えているわけです。
別のnoteで、理由をこのようにまとめています。
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個体差はあるものの、人間である限りはいつかは死ぬ。納得感の有無に関わらず、避けられない事実として。
リテール営業は人の死と向かい合わされることとセットです。こと日本においてはご高齢の方が資産を多く抱えていますから、金融資産運用であっても不動産ビジネスであっても、生命保険はまさにそれ自体がビジネスのキモになるわけですが、相続を無視しては大きな話が進んでいきません。
故に、まずは資産承継の筋道を立て、そうすると余裕資金がある程度わかりますから、それを元にどの程度リスクを負って運用するか?あるいは潜在負債たる相続税を調節することにリソースを割くか?など、組み立てをしていくわけです。
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細かく説明しますと
①納税
まず第一に、相続税の納税ができるのかどうか?を考えます。
上の引用の通り、人間いつかは死ぬわけですから、いつか必ず相続が発生し、残された相続人は相続税を支払わなければなりません。ですから、相続税は、いつかは分からないけれども、いつかは必ず支払いが発生する『潜在負債』として管理をしておく必要があります。
税は現金で納税するのが基本です。物納や延納は認められていますが、誰でも簡単に、というわけではありません。
ベースが『現金で払え』なのですから、皆さん現金で払っているわけです。簡単に「物納するわ。よろしく。」とか「払えないから延納しまーす」ということを認めたら、物凄く頑張って現金を作って納税した人と「差」が出来ませんか。
ここで思い出して下さい。昨年、収益不動産の相続税評価を認めるのか認めないのかということが最高裁で争われ、否決されてましたよね。ご存じなければ「タワマン節税(タワマンじゃないんですけどね(;´・ω・))_最高裁」で検索すると分かります。この時の否決理由は「税の公平性保てなくなる」ということだったと思います。
つまりそれが出来る人は際限なく相続税を引き下げられて、できない人は相続税を引き下げられない。これは不平等であるから認められない、ということなんです。
故に、簡単に物納や延納が認められるわけでは無く、認められる為には、例えば現金納付の為に土地を売ったりすると生活が出来なくなるなど、どうしようもなくしょうがない理由が必要ということです。手順を踏めば認められますよ、の「手順を踏む」とはこの理由を備えることに当たります。
ということで、まず相続税を算出します(金融資産、不動産、絵画や車、金や宝石など、価値のあるものは相続税の対象です)。
次に、相続税を換金可能な金融資産で支払えるかどうかを確認します。
あなたの相続税は概算で1億円かかりますよ、となった時に、手元に現金1億円があればとりあえず支払えますよね。
ただし、納税によって預貯金の残高がゼロになったら、相続人は困りそうですよね。
現金で払えなければ、次は金融資産や不動産を売却して金策をすることになります。
「いや金融資産2億円あるんだけどその内1.8億円くらいビットコインなんだよね」というのも大変です。ビットコインの将来性云々の話ではなく、価格変動が大きいもので相続税を確保しようとすることは難しい、という意味です。価格が比較的安定している債券など、あるいは納税に使える土地など、売却の優先順位をつけていきます。
財産以上に納税することは無い為、納税の算段がつけばこのステージはクリアです。
②分割
納税の算段がついたら、次は分割について考えます。
「まずは分割だろ。どう分けたいかが大事だろ」という考えもありますが、きっぱり間違いだと思います。こんなのを想像して下さい。
「A土地は長男に、B土地は次男に、C土地は三男に相続するぞ!現金は無いから、これから納税の算段しなきゃいけないがな!ガハハ!!」
分かりますよね?納税するのに現金が足りないまま相続を迎えたら、「じゃあC土地を売って納税しよう」となった場合には三男だけ損する感じになりませんか?その後に話し合って土地を共有にしたりするのでしょうか?それとも、3人とも折角相続した土地を売ってそれぞれ納税するのでしょうか?残念な感じになりませんか。
まずは納税できなければ分ける財産が確定しません。覚えておいて下さい。
当家としてどうしていきたいのか。それに対して相続人の納得はあるのか。相続人はどんな人生を生きていきたいのか。ご家族の間でこんなコミュニケーションを取りながら、自宅は誰が相続するのか、不動産は誰が相続するのか、金融資産はどんな割合で分けるのか…などを決めていきます。
重要なことは、親の考えと子の考えは必ずしも一緒ではない為、親の意向だけを反映させた分割が、子どもたちの事情に照らした際にベストな分割になるとは限らない、というところです。故に、コミュニケーションが大事だと。
平等は難しいですが、ストーリーを考えていきます。
『長男には家業である不動産賃貸業を継いでもらいたい。当地で不動産賃貸業をする為には行政とのやり取りが不可避で、故に多くの不動産を継がせなければならない。やり取りを有利に進める為には不動産が必要で、不動産を多く承継する為には資金も必要だ。なので、勿論次男三男を大切に思っていないわけはないのだが、大半の財産を長男に引き継ぐことになる…次男三男には苦労が無いように何とか財が行き渡るようにする」とか。
分割案を定めても、ご家族の事情や、世の中的な流れで変更を余儀なくされることは当たり前にありますので、方針は大事ですけれども死守するものでもない、という捉え方でいいと思います。
仮でも分割方針が決まったら、ここはクリアですね。
※例えば相続人の中に意思能力を発揮できない人がいらっしゃった場合には、遺言が必ず必要になります。自分で意思を発揮できない人の権利は守らなければならないので、家の事情は考慮されないからです。売りたくないものを裁判所の決定で売らざるを得ない…ということにもなりかねません。
仮にでも遺言を作成しておくべきです。
③対策
①②が決まったら、最後に対策を考えます。
対策とは、要するに①②で表れた課題の解決であったり、単純に資産を多く残したいか?ということについて検討して取り組む、ということです。
・生命保険を使って遺留分を調整したり、納税資金を別枠で管理する。
・不動産を相続人が株主となる法人へ売却して、納税資金を別枠でプールする。
・暦年贈与や相続時精算課税制度を使ってお金を生む資産を相続人に移して担税力(税を負担する資金力)を上げる。
・遺言によって強制力を持たせる⇒上述のように意思能力を示せない相続人がいるケースは必須。
・金融資産運用他、投資によって納税原資を長期的に増やしていく⇒納税原資と生活原資を確保すれば、それ以上はアクティブに運用していい…など
お客さまのご意向・リスク許容度に従って組み立てを行っていきます。
「自分が死んでも妻や子はとりあえず大丈夫」ということで、とても安心される方は多いですよ。あくまで私の経験則ですが。
こんなところですね。
上で触れていませんが、例えば「相続税どころか、債務超過で相続財産マイナスなんだけど」のようなケースもあるわけで、純粋にキャッシュフローを改善しないと将来に禍根を残すようなことがあれば、資産の売却や組み換えをする必要性を検討しなければならない、みたいな話もあります。
ざっと、個人のお客さまから相談を受けた場合の対応の考え方についてお話させていただきました。疑問点や詳細知りたいなどありましたら、是非コメントや質問箱に寄せて下さい。DMもお待ちしております。
お読みいただきありがとうございました。
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