「DUNE 砂の惑星 part2」感想
IMAXで鑑賞。
日本ではどうしても受容されづらい作風だから、
劇場が縮小する前に急いで観に行ってよかった。
日没に近づく砂漠の美しさ、吞み込まれそうな音響づくり、たまらない体験。
それにしても前作はコロナ禍、今作はストと毎回無事公開されるかハラハラさせられちゃう。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品は前作の他に「複製された男」「メッセージ」を鑑賞済。
哲学的な観念やSF設定の説明を映像で叶えてくれる監督という印象。
DUNEの原作のことはほとんど知らず、影響を受けたというスターウォーズさえ未履修。
この監督の新作でT・シャラメ主演という理由だけで一作目を映画館へ行った私を褒めたい。
演出上仕方ないけど、素顔を晒しているから異なる惑星感は薄い。
大気構成は地球と同じはずないけど、そのへんどうなのかな?
トランジットで一瞬だけ降り立ったアブダビの熱っぽい空気くらいしか想像できない。
ノーランと同じであまりCGが使われていないこともあるかも。
専ら、ヨルダンの砂漠の美しさと既視感のない造形物で説得力を持たせてある。
トンボ型のヘリ(オーニソプター)や人の肺じみた気球で降り立つタコっぽい採掘機、
「メッセージ」のヘプタポットもよかった(宇宙船はばかうけって呼ばれたけど)。
ハルコンネン家の諸々の機械とかスーツもいい。
設定的にどうやらロボットや人工知能についてひと悶着あった後の時代らしい。
そういえばイエス・キリストがヨハネから洗礼を受けたのもヨルダン川だし、
ポールはキリスト、ジェシカがマリア、ハルコンネンはポンテオ・ピラト、
ユダは誰かな?とつい関連づけたくなる。
壮大なフィクションを展開するうえで、示唆的にモデルされているはず。
今後はイルーランが物語の観測者、チャニが観客の目線として進んでいくのかな?
アラビア語がベースになっていたり「聖戦」等アブラハム宗教の用語が出て来る。
原作がもっとイスラム教の用語そのままっぽいので
大人の事情でストーリーや用語の改変は出てきそう。
ゲースロも原作は読めてないし、デューンもなかなかヘビー。
正直、なんとなくで観ていても映像美と音響と緻密な世界観に殴られるだけで面白い。
一作目が「世界観説明のための壮大な予告編」と呼ばれるくらい、
二作目のエンタメパワーは圧倒的だった。
主としては一作目の復讐の達成とポールの覚醒の物語だったけれど、
正義臭さや勧善懲悪的な爽快感は微塵もなく、
観客に狂信的な印象を煽るよう意図的に作られていた印象。
前作で不快な存在感を放っていたハルコンネン男爵が呆気なく討たれた点も
覚醒したポールの超越者としての格の違いを表していた。
今回、ポールは新たにフレメンの名としてウスール、戦士名として「砂漠のネズミ」を表すムアディブ、「ポール・ムアディブ・ウスール」として一員として受け入れられていった。
(次回、誰だっけ?とならないために書いておく)
ちなみにチャニの別の名は「シハヤ」は字幕で「砂漠の春」となっていたが、
原作では「砂漠の泉」であるらしい。
ここも原作からの改変に関わってくる部分なのか誤訳なのかは不明。
ラストでチャニはどこへ向かったんだろう。
ポールと愛し合った描写があったけど、ポールの子を授かっているのかしら。
フェイド=ラウサの娘を身ごもったフェンリングも存在感を放っていたし、
子世代でここが宿敵になったり運命の相手になったりするのかな?
第二作の熱狂は絶対によい方へは転ばないだろうし、
冒頭で強かさの片鱗を見せていたイルーランが誰を使ってどの側につくか見もの。
◆自分用のDUNE用語メモ(主に2のネタバレ)
アラキス:砂の惑星。首都はアラキーン。フレメンの言葉では「デューン」。
スパイス(メランジ):デューンのみで産出する高揚や抗老化作用等を持った香料。
砂虫:規則的な音(振動)に反応して砂の中を渡る巨大生物。フレメンはシャイー=フルードと呼び崇める。水に弱く、溺死の際生じる青い体液は「生命の水」と呼ばれ、覚醒か死をもたらす。
クリスナイフ:砂虫の歯から作られた神聖なナイフ。
リサーン・アル・ガイブ:フレメンが待望する指導者で、圧制を開放し惑星を緑の楽園へ導くとされる。マフディーはおそらく「救世主」と同義。
フレメン:デューンの先住民。メランジの影響で瞳が青い。
・チャニ:フレメンの戦士。覚醒前のポールの夢に度々現れていた。
・スティルガー:チャニたちの部族長で、原理主義者。
・ジャミス:前作でポールを認めず決闘を挑み死亡。
ベネ・ゲセリット:預言者の修道女たちによる秘密結社。救世主「クウィサッツ・ハデラック」の誕生を目指す。「声」で人を操ることができる。
・ガイウス・ヘレン・モヒアム:教母。ポールの母ジェシカの恩師で、シャダム4世に仕える読真師。
・フェンリング:フェイド=ラウサの娘を妊娠する。
アトレイデス家:水の惑星カラダンを治める。
・ジェシカ:ベネ・ゲセリットの一員で、レト公爵の愛妾。ハルコンネンの娘だった。
・アリア:ポールの妹。ジェシカの胎の中で囁く。未来視ではアニャ・テイラー=ジョイの姿。
ハルコンネン家:皇家の腹心で、惑星ジエディ・プライムを支配する。
・ウラディーミル・ハルコンネン男爵:肥満のため重力をコントロールする装置で浮遊している。
・ラッバーン:男爵の甥。ガーニイの頬に傷を負わせる。
・フェイド=ラウサ:ラッバーンの弟。ポールとの決闘で死亡。
コリノ家:惑星サルーサ・セクンドゥスを根拠地とする皇家。最強の軍サーダカーを擁する。
・シャッダム四世:アトレイデス家を疎み弱化を目論んだが、決闘代理敗北によりポールに跪く。
・イルーラン:王の娘で、ポールの妻となる。