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DALI MENUET と B&W 707S2との比較

大幅な値上げがあっても尚DALI MINUETシリーズの人気は衰えないようで、流行のYouTubeのスピーカー比較動画などを観ても、かなり興味を持たれている感じはする。同価格帯で特にライバルとなるのはB&W 707S2と706S2。特に707S2の価格性能比、もといコストパフォーマンスはピカイチで、個人的にも出来れば今すぐ導入したいスピーカーではあるのだけれど、「165x280x276mm」と僅かに箱のサイズが大きい点のみが躊躇してしまう部分。これはあくまで僕個人のサイズ感なので、小型ブックシェルススピーカーの中で707S2はむしろ小さいサイズではあるのだけれども…。ちなみにDALI MENUET/DALI MENUET SEは「150x250x230mm」と707S2より更に一回り小さい。

DALI MINUETは欠点も美点も理解した上で、あくまで書斎のサブシステムとして導入したもの。リビングにはVienna Acousticsで組んだメインシステムが別にある。レビューは本館の箱庭的"AUDIO STYLE"で詳しく書いたけれど、MENUETは、コンサートホールを彷彿とさせるウォームでAcousticな音色と、音楽的な抑揚感に全力で振り切った、かなり個性的な出音のスピーカーと云える。だから、クラシック音楽聴きであっても、MENUET一組でどんな音源も可過不足無く鳴らすリファレンス的用途には正直向いていない。録音の勘所が合わない音源になると、大なり小なりぼやけて篭もった鳴り方をする。

対してB&W 707S2はより高解像でワイドレンジ、現代的且つモニター的高音質をB&Wの最小サイズにまとめた、現代の最先端を地で行く音質になる。ハイレゾ音源にも向いているし、録音されたソースの情報を分析的に提示しつつ、音楽表現の面でも決して侮れない高品位なスピーカーと云える。

ちなみに一回りキャビネットの大きな706S2は、基本的な音色と音質は707S2とほぼ同じだけれど、より余裕のある音の出方をする。ただ、ウーファー側に音の比重が寄った結果、音楽、特にメロディーラインを浮き立たせて楽しく聞かせる能力については、小さい707S2の方がむしろ秀でているように感じる。モニタースピーカーとしては原音により忠実な706S2がより上質だけれど、707S2の多少チャーミングにデフォルメされている感覚は、音楽再生機として個人的に707S2をより評価する部分。特にこのクラスで組み合わされることの多い普及価格帯のプリメインアンプやデジタルアンプとの相性も考えつつ、一般的な小さな部屋での中~小音量再生になると、707S2の方が鳴らし易そうな感じがする。

以前、オーディオ初心者のとある知人に低価格な箱庭再生システムの構築についてアドバイスを求められた際、前述の理由でMENUETはサブ向きでメイン機にはあまり向かない、一般的にはB&W 707S2の方が音質は良い等々の話をしたのだけれど、結局MENUETを購入されてしまい、その後、音が篭もっている云々とかなりご不満な様子だった。一応、改善方法のアドバイスをいくつか試みてはみたけれど、その知人の場合、残念ながら納得できる音質には至らなかったようだ…。

これがもし上位機種のDALI MENUET SEだったのであれば、そのままで解像度がより高めになっているから、音質的な面でも不満を感じにくい水準にはある。それでも音楽再生機としてかなりデフォルメされた音場を提示することには変わりなく、特に無印MENUETを解像度の面で不満無く鳴らすには、それなりにシビアなセッティング感覚とアクセサリーのマッチングが要求されると思う。その辺りの経験値の無い初心者さんが安易に手を出すと、割と高確率で篭もったモヤっとした出音になる。反対にB&Wの場合、707S2/706S2に限った話では無いけれど、このメーカーはトゥイーターの音色が元々キツいので、聴き疲れする耳に刺さる音になりやすい。だから高域の歪み感を予め避けるセッティングとアクセサリ、機材の組み合わせが肝心になる。

いま僕の後で鳴っている無印MENUETは、もうさほど篭もった音は奏でなくなった。これは導入2年でエージングが充分に進んだこともあるけれど、やはり様々なアクセサリを取っ替え引っ返した試行錯誤の結果とも云える。あくまでMENUETだから、B&Wのようなクリスプでピーンと抜けの良いサウンドになる訳では無いのだけれど、まあまあ不満の無いレベルの中庸の解像度を伴う広い音場は得られている。(つづく)


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