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楽器修理トラブルの見聞録|預ける前に読んで欲しい

日々楽器屋さんをしていると、トラブルに遭うことがあります。

この記事は私が見聞きした楽器リペアのトラブルについて書いています。ご自身の楽器を修理に出すこともあると思うので参考にして頂けたら幸いです。

配送事故

楽器屋さんに預けると修理内容によっては店舗で対応できないことがあります。弦交換や楽器のクリーニング以外は預かって修理の工房に「送る」なんてこともあるかもしれません。

「送る」時にはお客様から預かった大切な楽器なので段ボール箱に入れて、周りに緩衝材を詰め慎重に梱包しています。配送業者は皆さんが聞いたことがある大手の会社のいくつかを使って、店舗とリペア工房を往復することが多いと思います。

それでも梱包が甘かったり配送の仕方が雑だったりするとトラブルが起きます。

例えば預けた楽器がソフトケースだったりすると、段ボールで梱包していても地面にトンと置いたりすとことで打痕(ダコン)という傷がつくことがあります。打ちどころが悪いとギターやベースならネック折れなんてこともあります。

トラブルが起きた場合、ちゃんと教えてくれることの方が多いのですが、預かり時のスタッフとお渡し時のスタッフが違ったりすると気づけない、なんてことが起こります。

万が一配送事故が起きて修理受付店舗や配送業者に過失があるとなった場合には、無償で修理してくれるのですが納期がさらに伸びたり、修理しても痕が残ってしまうこともあります。

ということでお客さんとしてできる対策

・預ける直前に店員さんと各部をチェックして、楽器の写真をいろんなアングルで撮影

→スマホのカメラ機能などでOK。預けたときの楽器の状態を撮影しておくと何か起こったときに主張の根拠がはっきりします。

楽器屋さんで引き取るときにその場で楽器を確認。撮影した写真と見比べる

→持って帰って家で異変に気付くよりも、その場で確認した方が「もしかして帰り道で起こったんじゃないか」のような不確定要因を防ぐことができます。

預ける人、引き取りに行く人は同じ人にする

→場合によっては預けるとき使用者本人で、引き取りは別人というようなことがあります。さまざま事情はあると思いますがなるべく同一人物、できれば使用者が預けに行くというのがベストではないでしょうか。

ハードケース、セミハードケースで持ち込む

→ハードケースやセミハードを持っているのなら楽器を預けるときはより安全なケースで修理に持ち込むのがベターです。ただしハードケースだから絶対安心ということでもありません。

納期遅延

大掛かりな修理になるほど納期は長くなりがちです。例えば塗装は梅雨の時期や夏場の湿気によってうまく乾かなかったりして、その納期が予定通りにいかないこともあります。他にも修理部品の取り寄せに時間がかかったり、何かの手違いで修理が進んでいなかったりと原因は色々あります。

お客さん ⇄  店舗 ⇄   修理工房 の間で連絡のやり取りをしているので伝達ミスが起こることも…。本来あってはいけないんですが。

ということでこの点で理解しておくべきことは

・納期が遅れる可能性がある

どうしても納期予定日の翌日や当日に使用するんだ!ということもあるかもしれません。その場合は預けるときに使用する予定があることをお店のスタッフにあらかじめ伝えておく。そして心配であれば納期予定日の2〜3日前に納期は間に合うか店舗から工房に確認してもらう。というのが取れる行動でしょう。

店舗に「納期は間に合いますか?」と聞いても、聞かれたスタッフの思い込みで「大丈夫ですよ」と答えていて、実際は修理が進んでいないこともあります。回答が即答だったなど心配がある場合は「念のため修理の部門に確認していただけますか?」とお願いしてみると良いかもしれません。

修理中の事故

リペアマンも人なので細心の注意をしていてもミスをすることもあります。うっかり傷をつけてしまったりすることもありえます。また楽器側の耐久性の問題で事故につながってしまう場合もあります。例えばアコースティックギターの修理中に全く作業に関係のないブリッジが剥がれてしまった。みたいなことも稀にあります。

リペアマン側に過失があったり、さまざまな状況を加味して該当の箇所は無償修理になることが多いように思います。

注文以上の作業をされる

個人でやっているリペアマンだと思いますが、良かれと思って必要以上の作業をされるケースです。サービスの一環としてやってくれていることが多いようですが、許可なく作業されるのでラッキーと思うか、使い勝手が悪くなったと思うか意見が分かれるところです。

楽器を預けたまま連絡が取れなくなる

稀なケースかもしれませんが、預けたリペアマンと連絡が取れなくなったという話を聞いたことがあります。リペアマンが個人で自宅でやっていて自宅住所を公開できなかったり、嘘の住所を公開しているなど連絡をとる手段がメールや電話、SNSのみという場合には楽器を預けると最悪預けた楽器が帰ってこない可能性があります。

預かった楽器を転売するのか目的は不明です。

個人工房という営業スタイルが悪いわけではなく、腕のいい方もいると思うので個人工房に預ける場合には信頼できるかどうかを見極める必要があります。

過去の実績やユーザーからの評価などから総合的に判断しましょう。

楽器の買い替えを提案される

預けたときの楽器の状態によっては買い替えを提案されることもあります。楽器を販売している店舗でこういった提案をされる傾向があります。思い入れのある楽器であればあるほど買い替えの提案をされたことにイライラしてしまう人もいるようです。

そんなときは「大切な楽器なのでどうにかなりませんか?」とお願いしてみると可能な範囲で修理の方法を考えてくれるかもしれません。

他にも色々あるかもしれませんのでまた思い出したら加筆していこうと思います。あらかじめ起きうるトラブルを知っておくことで、冷静に対処することができたらいいなと思います。もちろん修理受付店舗や工房が気をつけたらいい話ですが、今回は預ける人目線で記事を書いてみました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちなみに完全に蛇足ですが修理が完了してから何年も連絡が取れなかったお客様がある日楽器を引き取りにいらっしゃったなんてこともありました。修理代を頑張って貯めていたのかな?など色々考えましたが、とりあえず持ち主の元に楽器が届いて安心しました。


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