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買い(たかった)物の記録 2019.12.1

 恵比寿にお買い物に行った日のこと。

 午前中はハマプロ、来春のドン・ジョヴァンニ公演へむけて、この日はオーケストラのパート練習。

 トップをやっているのでバイオリン1stの練習をわたしが見た。久しぶりに指導的なことをやったが、大学のオケに本気で取り組んでいた数年前よりもだいぶんリラックスできていたのは、なぜだかわからない。人前でなんでもいいからとにかくしゃべり続けなきゃならない、というのがたいていの指導者ポジションに共通する要求だと思うのだけれど、わたしはなんでもいいから長くしゃべるということが本当に苦手なので、どうしても努めてパフォーマンスをするしか無くなってくる。そのことへの開き直り具合の差かな。今書いていたらそんなに歓迎すべきことでもない気がしてきた。

 午後から恵比寿へ。(昼飯は神戸屋キッチンのシチューだったが、(パンを除けば)ありふれた味に、座席の狭さとか人手の足りてなさとか色々目に余った。)
 気を取り直して、恵比寿駅の南西側の丘を登っていくと、まずはマルジェラのショップがあった。ここにあるということを知らなかった。せっかくなので、確信犯的に陳腐な白壁の建物に入る。
 直近のショーでお披露目された服が展示されていた。一つ一つのマネキンは正面背面以外を鏡に囲まれていて、なおかつ上から釣られている。縊ったみたいに。ある人がnoteで書いてた「マルジェラは死んだ」という言葉を思い出した。

 とはいえ、並べられているものも、そこにきている人たちも、見て面白いものばかり。ステッチと縫代を執拗に見せてくる立体的な服の作り、店内の香りも数種類場所ごとに変化あり、相方がテスターに出した香水が強烈にパリの記憶を呼び覚ましたり。
 各所に立っている店員たちはもちろん白衣だが、その没個性な出立とスタイルの良さから彼らまでマネキンのように見えてきたのも、ややヒット。時間あるときにもう少し勉強して、2020年を前にしたマルジェラ遺産を言語化したい。

 さらに坂を登ると角の半地下のようなところにContinuerが埋め込まれている。日曜だからか客は多かった。
 対応してくれたのは若い男の店員。ベーシックなボストンから、ヘキサゴン、ウェリントンなどいろいろ紹介してもらって知識を得る。おしゃれですねと言われて思わず顔が綻んだが、コートではなくてコーデュロイのパンツについて聞かれて、正直に「これユニクロなんです」と言ったら微妙な空気になった。
 コンタクトをしてこなかったのが大きなミス。かけている自分の姿が全然見えないので逐一写真を撮ってもらった。もとのメガネをかけて画像を確認しては、また外して新たなものを試す、ということの執拗な繰り返し。
 メガネは耳と鼻にかける、レンズを支える、という二つの機能をみたしさえすれば良いもの、それ以上の「高機能」などほぼ存在しない(Google Glassを除いて)。だから椅子のデザインのように、無数の別解を持つシンプルで美しい良問である。けれどもここに身体、特に顔という関数が入ると、自ずと「より良い解」のグラデーションが生まれてくる、ファッションの難しさ。
 辛抱強い店員は、結局今日は買わないでまた来ますと明かしたあとも明るい対応。マスナガの小ぶりなボストンと、Arch opticalのスクエア型を最終候補に絞ったところでお別れ。また来ます。

 またまた坂を登って横道に少し入ったら、YAECAは店名も表には出さずマンションの一階に埋め込まれている。非常に好感が持てるかまえ。しかしここの店には見たかったコートが置いていなかったそうで、手ぶらで引き返す。

 渋谷に戻ってスクランブルスクエアへ、ダントンとウルリッチを足して割って安くしたみたいなダウンをEDIFICEが売ってたので着てみたが、なんだかもっさりしすぎて惹かれない。東京の冬だったらそんなにダウンの量必要じゃないと思うのだけど。ユニクロを見習って欲しい。ヴォリュームを出すのが今の流行りなのかしら。無理無理。それから、変に大きいプラスチック製YKKファスナーは滅びて欲しい。無理無理。
 ことのついでにと、TomorrowlandとかUnited tokyoとかアローズもジャーナルもBも見たけど、ダントン、ノースフェイス、ウールリッチ、ピレネックス、等々、結局どれもしっくりこないと思ってしまった。困った。タトラスは上品だけど、10年後かな。
 しかもスクランブルスクエアの、フロア面積狭くてどうしようもない感じ、新宿ルミネなんかよりもっともっと雑多な混淆の世界、それでこそ渋谷だなんて言わないで欲しい、店側は真顔でアイデンティティを主張しようとしているのだからもっとたちが悪いんだ、もちろん人も多すぎ、そもそも、みんなわかってるのかわかってないのか、人類は縦方向の移動には全然向いてない。エレベーターエスカレーターとかいう150年前の技術じゃ、まだまだ不十分なんだから。ここまで移動しにくければ、上の階に行くほどテナントのクラスは下がっていくらしい。2020年を前にして、渋谷に「百貨店」がカムバック。
 ということで結構落ち込み気味で帰ってきた。厚さから逃れられないダウンを諦めて、メルトンの丈短めコートとか探した方が良いかしら。そうするとまたマーガレット・ハウエルに戻ってくるのかしら。とっても初歩的な段階で右往左往しているわたしは、真冬を越せるのかしら?
 今日着たコートみたいに、慎重なわたしを衝動買いさせるようなモノ、もしいるのなら、早く姿を現しなさい。

LEバルカラーコート
Batoner ブルーグレーのニット
ユニクロ+JWA ダークグリーンコーデュロイパンツ
NB classic 574 グレー
グレーのニットマフラー

お金も欲しいですがコメントも欲しいです。