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仕事辞めた僕に起きた嘘みたいな出会いの話(3)

僕がレインボーブリッジが見える公園で、
一回だけ会ったアイドルの子は、
有名なアイドルグループの新生としてかなり期待されている子だった。

彼女の正体を知った僕は、彼女に会うためではないが特に仕事を辞めてすることもなかったので週に3回は訪れていた。
あれから1ヶ月が経ったが彼女が現れることはなかった。

そろそろ僕も仕事始めなきゃと思い、何社か応募してみて、面談をいくつかこなす毎日になっている。話を何社か聞いたが入りたい!って思う会社も少なく、フリーランスで今の月6稼働で同世代よりは稼げるのであまり考えず、話を聞いて本命だけ望むつもりでいた。

そんなことを考えていたら眠くなってしまい、公園のベンチで寝てしまった。

トントン、肩を叩かれた気がした。
目を開けたらそこには彼女がいた。
国民的アイドルグループに所属している彼女。

思わぬ再会の仕方にパニックってしまい、
「あ、多分人違いです」と言ってしまった。
彼女は僕を見つめて、「人違いじゃないです。あなたあの時歌詞カード拾ってくれた方ですよね」と自信満々に答えてきた。

僕は今思い出したかのように「あ、あの時の?」と答えた。
「はい、これ落としてましたよ。これでチャラってことで」
僕は寝ている間にスマホを落としてしまい彼女が拾ってくれたらしい。

ここで僕は1番まずい展開になってしまったと悟った。
あれから僕は彼女が所属するアイドルグループにハマってしまい、彼女と同期のメンバーをスマホの壁紙にしていたのだ。
はっきりとその子とわかる写真ではない、ヲタバレ防止壁紙なので彼女が気づいたかはわからないが見られてしまった。

彼女は僕がそのアイドルグループのファンだと知ったらもう会ってくれないだろうし、彼女はファンとして僕と関わる形になってしまう。
あの時初めて話したカタチが僕は良かった。
けど僕が悪い。彼女にすべてを打ち明けた。

彼女は頬を膨らませながらこう言った
「私のことは推してくれないんですね」
思わず僕はドキッとした。
ファンがお金を払ってまでアイドルと話す理由がわかった気がする。

僕はタジタジしながら、「いやその、あの、これであなたのこと好きになるのは何か違うのかなって思って」と意味のわからない返事をしてしまった。
彼女はそんな僕を見て笑いながら「冗談ですよ、私のこと気になって調べてくれて嬉しいです。」と僕にいってくれた。

僕はどうしても彼女聞きたいことがあったので
ベンチから離れようとする彼女を引き留め、
「あ、あのなんでそんな強くいられるんですか??あなたは過去に嘘か本当かわからない事実で誹謗中傷されて活動休止にまで追い込まれて、
それなのにアイドルに戻って、弱さ見せずに強くあろうとする理由ってなんですか??
そんなに達成感や幸福感があるんですか??」
自分でもびっくりするくらい饒舌に言葉が出てきてしまった。

彼女は一瞬考え込んで僕に言った。
「世の中そんな嫌なことばっかじゃないですよ、
アイドルって仮面を被っているから批判されてるのはアイドルの仮面被ってる私でそれは本来の私ではないので。今は仮面外してるので、さっきにあなたに
他の子が好きになったって言われたのはほんとにショックでした」と僕に背を向けベンチから遠ざかりながら言った。

彼女の後ろ姿を見て僕はこれが会うの最後になる気がして、「僕、毎週火曜日のお昼から夕方までここにいます。何か僕に話したいことあったら話しかけてください。仮面を外したあなたを受け入れることも傷付けることもできる貴重なファンだと思うので」
と意味のわからないことを言ってしまったが
彼女は振り向くことは無く、小さくお辞儀をして歩いて言った。

1週間後の火曜。
彼女は来るのだろうか。
来ても話しかけるだろうか。空を見ながらボーっとしてると彼女の顔が視界に入った。
飛びきりのアイドルスマイルで「バァー」と驚かしてきた。

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