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話題のM&A仲介手数料についてM&Aプラットフォーム運営者が思うこと。

日々感じているのですが河野大臣が、最高ですね。前に進めようという意志が半端じゃないです。ハンコ廃止とか官僚の残業問題とか痺れました。そんな河野大臣ですが、M&A業界にもメスを入れようとされているということです。

「中小企業のM&Aの際に仲介業者が買い手・売り手の両方から手数料を取るのは利益相反だ。中小企業庁に働きかけてこうした慣習を変えたい」

と、中小企業のM&Aの仲介業者がいわゆる「両手」であることは、利益相反でよくないよねということを指摘しています。私も利益相反は良くないと思っています。

M&Aにおいては買い手がリピーターで、売り手は一回限りの取引になりやすく、両者のためになると言ってもどうしても買い手本意になりやすいです。加えて、成功報酬モデルと非常に高いインセンティブ構造のためどうしても提供者本意になりやすい構造であるとも言えます。

この問題については、インテグラルの佐山さんがNewspicsで指摘しています。

Newspicsの対立意見として元日本M&Aセンターの大山敬義さんも意見を述べているので参考にしてみてください。その他コメントを見ると、両手取りの高額な手数料がM&Aを阻害しているという声もありました。

M&Aプラットフォームを運営するものとして、別の見方も結構あると思っているので、議論を前に進めていくべく持論を述べていきたいと思います。

両取りで高額な手数料だから、買い手が尻込みしM&Aが増えないというのはダウトでは?

世の中から見た際に、事業承継が増えるべきなのは前noteでも触れました。ただ一部の有識者が指摘する買い手の手数料がネックで、M&A数が増えないという言説はダウトだと思っています。
どちらかというと供給サイドが課題だと思っています。成約率の低さと同時並行できる数の限界があります。ゆえにM&A業務というのはめちゃくちゃ働くしかなく、めちゃくちゃ生産性が低いのです。仮に生産性が2倍程度改善しても、M&A従事者数が少なすぎます。

実際、黒字の後継者がいない高齢な経営者60万人いるとされていますが、中小企業のM&Aは3000件程度です。大手M&A仲介3社合わせてもアドバイザーは700人程度で一人年間1.2件程度しか成約ができていないというハードな現実があります。

M&A業界は、レモン市場。手数料を安くすると競争に負ける。

経済学にはレモン市場という言葉があります。

レモン市場(レモンしじょう、英: lemon market)とは、経済学において、財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場のことである。 出典:wikipedeia

まさにM&A取引は、こんなかんじですね。これは売り手がM&Aアドバイザーの品質を理解できないということです。そのM&Aアドバイザーと結ぶ契約条件や腕が分からないんですね。その結果、逆選択という現象が発生しています。

結果、売り手は高品質の財を売ることができず、低品質の財ばかりが市場に出回る結果となり、社会全体の厚生が低下してしまう。このような現象は、逆選抜と呼ばれる。 出典:wikipedia

結果として、今のM&A市場は品質よりもどちらかというと営業力に重きが置かれるようになっています。

つまり、中小企業のM&A仲介業者の視点に立って考えるとですね。片手にしたらからといって、売り手の獲得コストが爆発的に下がるかと言うと増えない。そして満足度がさほど変わらない。
さらに、インセンティブで儲かる構造のM&Aアドバイザーの採用で負け、紹介者への紹介料支払いや広告宣伝費の観点で負けてしまうのです。ゆえに手数料を下げない人が悪い、両手の仲介業者があくどいというのは中々難しいのです。これは市場の失敗という現象だからです。実際弊社のアドバイザリー事業でも両手でやらせていただくことはあったりします。

そんな時こそTechの出番。プラットフォームが必要。

アイデアとは「複数の問題を一度に解くこと」という言葉がありますが、M&A領域にはイノベーションが求められているのだと思います。この課題を解くのがM&Aプラットフォームという仕組みです。

多くの買い手と売り手を集約し、ダイレクトにつないで、M&Aの取引を効率的にするというシンプルなアイデアです。ダイレクトにつなぐことで、マッチングデータを学習し、どんどん改善していくことが可能になります。

売り方や買い方が分からないという方には、カスタマーサクセスとアビリティを補完する機能を提供して問題解決していこうとしています。そして、利益相反はよくないので、ダイレクトマッチングをベースとしたM&Aプラットフォームを運営している側面もあります。原則成功報酬として買い手から紹介料をいただくのみです。売り手に資料作成でお手伝いしてお金をいただくこともありますが、交渉には原則立ち会いません。

ただしかし、悲しいことに売り手はM&Aプラットフォーマーの何が優れているか?M&Aアドバイザーの良し悪しについて分かるのが難しいという課題もあります。

最後にM&Aクラウドとしてはどういうスタンスか

国に従うというスタンスです。手数料が適正化され取引が効率的な未来を作ってくポジションなので、規制によって手数料が調整されても良いと思っています。それに耐えられるモデルを作っています。
どんどんクリーンにしていって欲しいです。なんなら質の低いアドバイザーも乱立していますし、ただのブローカーも多いので、免許制も検討して欲しいくらいです。

では、両手が禁止され買い手売り手にアドバイザーが分かれて、欧米的にお互いにバチバチやって騙される方が悪いというのは、我々が嫌だなぁと思うディール文化であり壊したい世界そのものです。

綺麗事で締めくくりますが、売り手にとっても買い手にとっても情報がきちんと開示され一緒に手を取り合って行く世界が一番ハッピーなはず。そして、人の手をなるべく介さずにM&Aが一般化する世界を作っていきたいと思います。

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