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最後に選ばれる買い手はココが違う。M&Aで競り勝つ戦略4パターン

M&Aクラウドの及川です。M&AをUPDATEしていきたいです。今回のテーマですが、どうやったら売り手に最終的に選んでもらえるのか?という話をします。

「せっかく有望な売り手を見つけても、そういう売り手は価格が高すぎて...」「こんな経営者が弊社のようなカタイ会社を選んでくれるの?」。

M&A担当者や経営者の中には、そんな悩みを持つ方も多いでしょう。人材を採用したい企業と同じく、M&Aをしたい買い手も、「相手を選ぶ」だけでなく「相手に選ばれる」立場でもあります。ライバルに競り勝つための戦略は、しっかり練っておかなくてはいけません。

私が見る限り、買い手が意中の売り手にアピールし、成約へと持ち込める戦略は4パターン。M&Aがうまい会社はどこも、これらを組み合わせて実践しています。逆に、もし皆さんの戦略が4つのどれにも当てはまらなければ、一度戦略を見直した方がよいかもしれません。

それでは早速、4パターンの中身を紹介していきます。

1. 早く買う

人材採用と同じく、ライバルより早くオファーを出せば、売り手にとっての検討順位は必然的に上がります。価格での真っ向勝負を避けたい場合、タイミングで差を付けるのは有効な手段です。

オーナー企業は意図せず出来ているケースが多いですが、ガバナンスを求められている状況だとオーナーの一存で決めることは中々難しいので、オーナーの独断と偏見で決められない会社向けに書きます。

早く買うためには、事前準備が全て

まず会社としてスピーディーに動くためには、社内が一枚岩になっていることが大切です。M&A担当者から最終的な意思決定を行う経営トップ、さらにはPMIを担当する現場の責任者も含め、全員でM&Aに臨む目線をすり合わせておかないと、いざ魅力的な案件に出会ったときに素早く立ち回れません。

まず、「なぜM&Aを行うのか?」という背景認識と目的意識を社内でそろえておく必要があります。さらに、M&Aで獲得したいターゲットについても、できるだけ詳細に言語化しておきましょう。たとえば、「DX系の案件がほしい」といったあいまいな表現で話していると、その場は合意したつもりでも、現場とM&A担当部門の頭の中のイメージはずれたままになります。「UIデザインができる」チームなのか、「webアプリの開発ができる」チームなのかといったレベルは最低限具体化しておくことが大切です。

①「何」を買うのか?②あえて買収を選ぶ理由③ターゲット④想定するシナジー⑤面談からPMIまでのプロセス⑥バリュエーション⑦DD⑧インセンティブプラン⑨その他予算やのれんなどの前提条件を「何」を買うのか?毎に、策定しておくと良いと思います。

また、買えるならこの会社欲しいな〜という企業をピックアップして、この企業なら〇〇円で買うなどある程度シミュレーションしておくことも有効です。

2. 高く買う

高い買収価格を提示するのは、M&Aでライバルに勝つ王道です。とはいえ、それができるためには、価格に見合ったリターンを得られる見通しが必要。PMIを成功させる力、シナジーを発揮させる力が買い手にあることを前提とした戦いになります。

M&Aで期待されるシナジーの中で、比較的、計画通りに具現化しやすいのは、コストダウンを図ること。共同購買による原価や販管費の削減、オフィス統合による家賃カットなどです。バリュエーションは高くても、こうしたコストダウン効果で投資を回収できるなら、ある程度堅実なM&Aといえるでしょう。

一方、クロスセルを狙うなど、売上アップの方向でシナジーを描く場合、実現のハードルは高くなります。2社の関係部門同士がうまく連携できるかどうか、“人”の要素が大きいうえに、両社のタイミングにも左右されるからです。この場合は、大きな失敗を防ぐために、まずは事業提携からスタートし、相性や感触を確かめてから次のフェーズに進むのも一つの手です。

最後に、シナジーの可能性を検討する際の理想的な手段といえるのが、他社が気づいていない売り手のポテンシャルを見出すこと。ライバルとは別の次元で勝負する道が開けます。これはソフトバンクの得意技です。リクルートのindeed買収もこのパターンですし、海外の例では、FacebookのInstagram買収なども挙げられます。​

「他社が気づいていない売り手のポテンシャルを見出す」というのは、つまり「市場に過小評価されている売り手を見出す」ことです。気になる会社に対しては、まずは少額の出資をして関係性を築き、非財務指標を知ることで高くバリュエーションをつけて買うことを正当化するロジックを手にいれることも可能です。DeNAによるIRIAMの150億円での買収や、ポーラ・オルビスのトリコの買収などがこれに当てはまるかと思います。

ちなみに、ハーバード・ビジネス・レビューの『企業は与えることで成功する』という論文でも、成功している企業の特徴して下記4つを掲げており、戦略を立てる参考になるかと思います。ソフトバンクは、まさに「賢い成長資金の出し手になる」を体現しているように思えます。

①賢い成長資金の出し手になる

②より優れた経営ができるよう監督する

③価値あるスキルを移転する

④価値あるケイパビリティを共有する

3. 人の魅力で買う

M&A後も経営を続けたい経営者にとって、「どんな人たちとやっていくか」はかなり重要です。こうした売り手のモチベーションに火をつけるべく、買い手の側から本気度をアピールし、“人”の魅力で勝負するのが3つ目の戦略です。

M&Aのプレゼンといえば、売り手がするものという認識が一般的かもしれません。しかし、今、“人”で買うことを得意とする企業は、自ら売り手の成長シナリオを描いて勧誘する「逆プレゼン」をどんどん仕掛けています。そんな熱意あふれる買い手候補と終始上から目線で接してくる買い手候補がいるとしたら、どちらに売り手の気持ちが傾きやすいかは言うまでもありません。

日本電産永守さんのように、意中の相手には数年かけて口説き続けるということも効いてきます。

さらに、“人”パワーが特に絶大なのは、カリスマ経営者のいる企業です。ソフトバンクの孫さんや、「M&Aクラウド」掲載会社でいうならSHIFTの丹下さん。そうしたカリスマたちの薫陶を受けたい経営者は大勢います。また、カリスマまではいかなくとも、飛び抜けた個性を持つ経営者のいる企業であれば、その人を前面に押し出したブランディングをしていくことで、M&Aの場面でもパワーアップにつながる可能性があります。

4. 競争せず買う

4つ目の戦略は、「ライバルに勝つ」というより、「ライバルの少ない市場に特化する」パターンです。業種を特化してロールアップ戦略を取る企業や、一般的な買い手にとっては買いづらい条件を持つ企業でもリターンを出すことを得意とする企業がいます。

独自のリターンを出す力がある例を紹介すると、ロックアップがなく創業者が売却時に退任するような案件でも、事業責任者クラスが豊富で運営が可能であるといった強みを持つ会社などがあります。

買い方で工夫する企業としては、繰越欠損金のある会社を買って節税効果を狙う会社もありますし、金額は大きいが割安みたいなところを銀行からレバレッジを掛けて狙いにいくといった方法などもあります。

上場している買い手にとっては手を出しづらい業種でも、非上場の買い手にとってはさほど大きなリスクにならない場合もありますし、逆に世間のイメージが悪い企業を、ブランド力のある上場企業が買うことでリブランディングするといったケースもあります。

結論、事前準備段階で勝負が決まっている。

以上、買い手企業が意中の売り手と成約にこぎ着けるための戦略4パターンを紹介しました。競り勝つ企業は、事前準備段階でしっかりターゲットを具体化し、ポジションを明確にしつつ、社内の合意形成をしている会社が多いと言えます。同時にトップのコミットメントが非常に高いです。

中には、使える企業が限られる戦略もありますが、ぜひ自社の属性やケイパビリティに合わせて、最適な組み合わせを採用してください。そして、今「案件は来ているのに、成約できない…」という悩みをお持ちの皆さんが、選ばれる買収チームへと進化されることを願っています!ご相談等ある方は、お問い合わせ等いただけますと嬉しいです。


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