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ウチナーンチュぬすばんかい、めーなちスバがあん。〜第一回 ルーツ編〜

ふと、ある記憶がよみがえった。
帰省の際、僕は那覇空港ターミナルビルを一歩出るたび、こう思っていたのだ。

あー、沖縄そばが食べたい・・・。

僕のように内地に住んでいた(住んでいる)ウチナーンチュは、こういう思いに心が囚われるんだと思う、たぶん。
そう、沖縄そばにはそんな魅力(魔力と言い換えても過言はないと思う)が秘められている。

それにしても、何故ターミナルビルを出た瞬間なのだ。ターミナルビルの中には、それこそ沖縄そばを出す店もあるのに、だ。

沖縄の暑い太陽の為せる技なのか。それとも沖縄の風が、各地の名物そばの香りを運んできて、鼻腔をくすぐり、大脳を刺激し、あの魅惑的な味を記憶から呼び覚ますからだろうか。

僕は今、目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をする。
沖縄そばの、あっさりとした中に濃厚な旨みを包み込んだ味が、じわり〜じわりと口中に広がっていく。

ああ、でもそこにはないのだ。沖縄そばは、ないのだ…。

「沖縄そば」のルーツは?

県民の心身を満たしてくれる「沖縄そば」のルーツは何だろうか。

「さあ〜!ここで、魔法の言葉に登場してもらうことにしよう。どうぞ、皆様拍手でお迎えください!この方の登場です!」

諸説あります

ああ、何と蠱惑的な響き。
その曖昧さの中に、全てを包み込んでしまう優しさの塊。

そう、沖縄そばのルーツには、諸説あるのだ。

諸説ある中でも、一般的に知られているのは、中華麺として沖縄へもたらされたというものだ。今から400年、または650年前に中国から伝えられたというもの。古来から琉球と中国の繋がりは深い。そのことからも、中国伝来説は、説得力マシマシだろう。
また、沖縄そばの麺は中華麺同様、小麦粉、塩水、かん水から作られていることからも、この一般的な説の説得力は更に倍!だ。

が、ここで重要なことに触れておこう。沖縄そばのご先祖様が唐から渡られた頃、沖縄では小麦粉がとれなかったのである。
と、いうことはである。当時、僕のような下々の者は、とてもとても口にすることは出来ない高級料理だったのである。

なんと言うことだ!この鼻腔をくすぐる、あの馥郁たる香りを、この口中を満たす、あの陶酔の深淵への導くような旨みを、味わうのことが出来なかったとは…。

事実、この沖縄そばのご先祖様を食べられたのは、中国からの使者や王族などの限られた特権階級限定。そう、即ちお上だったのだ。

ああ、沖縄そば、うちなーすばよ!貴方は何故そんな高みに佇んでおられたのか!
何故、真っ先に僕たち庶民の下へ来てくれなかったのか!
高嶺の花である沖縄そばは、いつ一般的なものになったのだろうか。

一体、僕はそばを口にすることが出来るのか!

そして、渡来してから数百年の間、高級料理として君臨した沖縄そばの、数奇なる一生が語られて参るわけなのですが!

丁度時間となりました。

また次回を、何卒お楽しみに。