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映像試論

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映像装置としてのレンズを、通過する光の仕草、経年劣化が生み出す色彩の偶発性、時空の歪み、生成される感覚世界と対話することを通してひとつの「多様体」として捉える取り組み
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夏の光とスウェーデン・マルメ Leica Summicron 50mm f2 2nd #映像試論

家族がデンマークにやってきたので、コペンハーゲン発の電車に乗って海を越え、対岸のスウェーデンへ。南部の都市マルメ(Malmö)は晴れ。屋外はやや日差しが強いものの、室内には穏やかな光が差し込み、北欧らしい白を基調とした空間が美しく映えていた。 人類学の調査ではとてつもない時間を費やして街を歩くのだけど、その影響か、普段出かける時も公共交通機関にはあまり頼らず、できる限り自分の足で街を練り歩く。車が入れないような裏道も、観光客が訪れないような小さな飲食店も、歩くことで初めて出

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クリスマス前のコペンハーゲンを回想する

Kern Switar 13mm f0.9 #映像試論

#映像試論 映像装置としてのレンズを、通過する光の仕草、経年劣化が生み出す色彩の偶発性、時空の歪み、生成される感覚世界と対話することを通してひとつの「多様体」として捉える思索 ここ数ヶ月はもっぱら、明るくて光の滲みを体感できるようなレンズばかりを使っている。 スイスのKern-Paillardによって1959年にリリースされたSwitar 13mm f0.9は、その圧倒的な明るさとシュッと伸びたフォルムが印象的で、中古市場でもあまり見かけず、よって公開されている作例もさほ