見出し画像

【漫談散策】なぜ生理用品が「贅沢品」として課税されるのか

 今回はDaniel Sloss氏による生理に関する漫談になります。生理用品が「贅沢品」として課税対象となっている国もあるとのことで、試しにダニエル君は彼女の誕生日にプレゼントしてみました!的なお話です。

日本語字幕付きは ☞こちら(Telop Layer Playerを使用)

【以下ネタバレあり】######################################################################################

 

政策決定の動機は不純...?

 全般的に税率の高い海外では生理用品が課税対象になるかは大きな問題になるようですね。日本で生理用品の負担についてはそこまで大きな議論となってはいませんが、少し前の「妊婦加算」問題や、直近では不妊治療の支援拡充と、性関連の政策はホットな話題だと思います。

 今回の漫談で好きな箇所は、白人の中年男性が、笑いをこらえながらタンポンに贅沢税を課すシーンです。学問の進展や、2度の大戦の反省から人類はついに成熟することに成功し、現代人の多くは極めて論理的な思考を持ち合わせており、特に政界においてはよりその傾向が強い。などということはなく、現実では、非難を浴びない程度にそれっぽい説明をしつつ(悲しいかな、その素振りすら見せない事も珍しくなくなってきていますが)、好き嫌いの次元やパワーゲームの中で政策決定がなされる。国民はそれを同じ暗い感情から支持、あるいは合理的でないことを理解しつつも止められない・一度決まると変更させることができない。。。(´・ω・`)

科学的根拠は救いにならない...?

 一方、エビデンスベースで政策決定が行われたら万事解決ということにもならないでしょう。某サイバーパンクの作品で「不快指数」なる言葉が登場していました。脳内のデータを分析・外部出力され、痛みなどを数値化していたのだと思います。仮に現実世界でこのような数値化ができたとした場合、国が税金を投入する優先順位を決定する際に参考に出来るかもしれませんが、その一方で幸福度でのマウントの取り合い・不幸度自慢(数値の算出方法にあたって、いかに自分が不幸であるかを示せるかの競争)が始まって、なかなかの地獄絵図になりそうです。自分よりランクが下の人がいるからと我慢を促す強力な根拠が作られ、結果誰も幸せになれない。。。(同じカテゴリーの病気においても辛さの度合いが異なり、平均値ではなく個別事情に応じた支援が可能となるのであれば話は少し変わってきそうですが、当分実現するは難しそうですし、結局算出・測定方法の問題が付きまといそうです。)

 「俺はこれだけ不幸なのに頑張れている。だからお前も我慢しろ」「世界にはこんなにも悲惨な環境で暮らしている人がいる。だから私も文句を言わずに頑張らなくては」といった類の言動は、その苦痛の先に自らの成長が見込める場合等プラスに働くこともあるかもしれません。あるいは改善の見込みが全くないときに精神を保つ手段として有効かもしれません。しかし、生理のように、自らの意思に関わらず長期に渡って一定の負担が強いられている様なケースにおいて、持ち込むべき論理かは大いに疑問です。それを言ってしまうと、他の医療サービス等の支援との整合性が取れなくなり、かなり厳しい自助ベースの世界へと足を踏み入れることになります。

まずは正攻法で学校教育から

 公的な支援をすべきか、また、支援するにしてもどの程度行うかの意見は様々あると思いますが、そもそも議論の土台として生理(あるいは広く性)に関する知識が圧倒的に不足しているのが現状でしょう(自戒)。

 インターネットで誰もが情報を発信でき、VR・AR技術などで他人の経験を追体験するツールは増えてきています。しかし、それに触れるかどうかが自由である以上、共感には繋がりません。また、生理に関しては、多くの場合女性自身が積極的に情報を発信しようと思う事象ではないはずです。

 例えばメジャーなゲームにおいて、食事が必要なことがあっても、トイレに行く必要があるものは少なく、ましてや月経まで入ってくることはまずないでしょう。(漫画「アイアムアヒーロー」で生理関連の話が描かれていたのを見た時は、なかなか衝撃的でした。サバイバル系のコンテンツは詳しくないのですが、大人向けであれば結構描かれるものなのでしょうか。)

 恥ずかしながら、私(♂)自身も具体的な生理用品の事情なんてものは、ピロシキーズの動画が初めてかつ全てみたいなところがあります。今の学校教育でどこまで踏み込んで教えているのかも知りませんが、性教育をタブー視せず、しっかりと義務教育に織り込むことで、男女理解の促進、ひいては社会全体の幸福度が上昇すると思います。(ここら辺は生徒自身も関心があるはずなので、動画教材でも配って各自見てもらう形式で良いと思います。)


 ちなみに英国では2021年1月から生理用品への付加価値税を廃止することが決定されているようです。仮に男性の理解が進んだというより、女性の社会的地位の向上で政治が動かざるを得なくなったということであれば、まさに働く男が月経になったら手厚く保護されるという皮肉どおりであり、それはそれで少し悲しい気もしますが、どうなんでしょう。まぁ曲がりなりにも世界は良い方向に進んでいるということで('ω')b


【参考】

「英国で生理用品への課税撤廃」ニュースが伝えた“生理の貧困”とは?(上智大学教授 水島宏明)

タンポンを「ぜいたく品」指定から除外、消費税引き下げ 独(CNN)

タンポン税(Wiki)

月経に関する不調 (男女共同参画白書)

ナプキンは平均20枚 みんなの「生理」を聞いてみた(ANANニュース)