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Report_5.東広島の有機農家さんインタビュー/「はなあふ農園」さん

2023年9月26日、離乳食プロジェクトに野菜を提供していただく「はなあふ農園」さんを取材させていただきました。

この記事は「野菜Labo×広島大学大学生チーム×東広島市の有機農家」で取り組んでいる「離乳食開発プロジェクト」に関するものです。今回は、離乳食に使うお野菜について学ぶべく、「有機農家さん」を「広島大学大学生チーム」が取材して記事にしました。最後までぜひご覧ください。

はなあふ農園さんは、農薬や化学肥料を使わず、米ぬかやなたね油粕などの地域の副産物や雑草、緑肥を使って農業を営まれている有機農家さんです。また、「食だけでなく、山里での遊び、知恵、技を届けたい」という思いで、農業体験や自然体験イベント、研修の受け入れなどの取り組みもたくさん行っています。スタッフの森昭暢(もりあきのぶ)さんからお話を伺いました。

はなあふとは、春夏秋冬の頭文字だそうです。音が丸くてかわいいです!

▶︎農業を始めたきっかけ

森さんが志和で就農されるまでには、たくさんのきっかけがありました。

広島県竹原市出身の森さんは、山口大学、名古屋大学大学院で微生物の研究をされていました。そこで将来、肥料の主成分でるリン酸の原料(リン鉱石)が枯渇してしまうことを知ります。リン酸は、農業に必要な肥料の重要な要素です。これをきっかけに、リン酸が手に入らないことを念頭した農業のあり方、リン酸に変わる肥料のあり方について考える必要があることに意識が向くようになりました。

また、窒素肥料などのほかの主な肥料も、日本の農家さんは輸入品で賄っています。輸出が途絶えたときのことも危惧し、肥料には地域のものを使うこと、持続可能な方法で農業をすることを考えられたそうです。

森さんの豊かな畑

その後、東京でサラリーマンとして働きながら、棚田オーナー制度を活用して新潟で稲の栽培をします。そこで、農業者の高齢化を実感したそうです。

また、身近に化学物質に対して過敏に反応してしまう人がいたこともきっかけになったそうです。その方は外気に触れることができず、農薬を使った野菜はもちろんのこと、有機野菜でさえ、体に障るため食べられないものがあったそうです。その方が近くにいたことを、「何かのメッセージかもしれない」と感じたと話してくださりました。

このように都市と農村を行き来する中で、将来の食べ物・飲み物への不安が膨らみ、自分が作り手に回りたい、農業を引き継ぎたいという思いで有機農業に従事することを決心されました。
 
ご自宅の裏の人参畑の前で撮らせていただきました。とってもいい笑顔、ありがとうございます!

▶︎「志和」で農業を始めた理由

志和には今多くの有機農家さんがいますが、その先駆けとなったのははなあふ農園さんでした。

その理由として一番はじめに森さんがおっしゃったのは、「縁」でした。
地域の人が有機農業を受け入れてくれたことが大きかったそうです。

志和には兼業農家さんが多く、農業と組織に属すること、両方に理解があることが、その寛容さの理由ではないかとおっしゃっていました。

▶︎「志和」は有機農業に適した町

また、志和は農業に適した条件もたくさん持っているそうです。

まず、日照時間が長く、野菜がたくさん光合成をすることができます。その上昼夜の寒暖差があります。光のない夜には植物は光合成ができず、その間は呼吸のためエネルギーを消費します。しかし、寒さで呼吸量が減るため、日中に蓄えたエネルギーがあまり消費されないのだそうです。

また、志和にはダイレクトに山の水が届くため、ため池から水を引くことなく野菜を育てることができます。さらに、志和の中でも一部の地域では、朝に霧がたちます。志和で育つ野菜のおいしさには、これらの要因があるのだと話してくださいました。

森さんは就農される前、志和の中でも条件のそろった場所を見つけるために何度も志和を訪ねたそうです。環境にこだわって尽力された結果が、おいしいお野菜に現れているのだと思いました。

また、若い有機農家さんが多い志和でも、農家さんの数は減少しているのだそうです。農業を引き継ぎたいという思いも持たれていることを話してくださいました。

 初めは「志和では農業はできない」といわれてしまった森さん。志和を見て回り、家庭菜園で育っている野菜を見て「ここでもできる」と思ったのだそうです。

▶︎森さんの思い

森さんのお話を聞く中で、農業をする上で外に向けた思いが強い方だと感じました。その思いは、農業以外の活動に現れているように感じます。

初めにも触れたとおり、はなあふ農園さんでは、農作業体験や地域の人を通して志和の伝統や知恵を教わる体験、地域の子供との生き物調査などのイベントを提供しています。また、研修の受け入れも就農3,4年からされています。

そこには、「現場のことを知ってほしい」という思いがあるそうです。野菜を育てるという仕事は、予定通りに行くものではありません。天候や動物など、自然に左右される大変さがあるお仕事です。

また、食べ物は公共性のあるもので、人口増加に従って足りなくなっていくのでは?という考えから、「大事にしたい」「お金を出せば手に入るものだと思ってほしくない」と思っているのだそうです。

さらに、農業を始めるまでにたくさん助けられてきたので、それを返したい気持ちがあると話してくださいました。

「これは何だかわかりますか?」と森さん。正解はごま(左)となたね油粕(右)でした!肥料に使うのだそうです。

▶︎愛されるはなあふ農園のお野菜

取材をする中でもう一つ感じたことがありました。

それは、はなあふ農園さんのお野菜はたくさんの人に愛されているのだということです。まず、森さんの3歳の娘さんはお野菜が大好きで、残したことがないのだそうです。また、近所の発達障害を持っているお子さんも、普段はあまり野菜は食べないのに、はなあふ農園さんのものなら好んで食べるのだそうです。

味覚に素直なはずの子供たちが好きになるのは、何か他とは違ったおいしさがあるからなのだろうかと感じました。

そしてもちろん、はなあふ農園さんからお野菜を買っている方たちからも、そのお野菜は愛されています。それを感じられたのは、森さんが畑を案内しながらしてくださったお話を聞いたときでした。

はなあふ農園さんでは、作る品種は完全に固定化せず、新しいものや珍しいものも毎年取り入れています。お客さんからリクエストを受けて作ることもあるそうで、野菜の写真と一緒に「これを作ってほしい」と頼まれることもあるのだそうです。

お店で野菜を見たとき、それを買うのではなく、はなあふ農園さんが作ったものを食べたいと考えるのは、はなあふ農園さんのお野菜が大好きで「おいしいものを作ってくれる」という信用があるからなのだと感じました。

地域の人たちに向けての野菜の自販機がある、野菜と卵の直売所も紹介してくださいました。まだお昼なのにかなり売り切れていて、地域の人たちにも愛されているのが実感できました。

▶︎取材を終えて

こんな風に愛されているお野菜を離乳食に使わせて頂けることに、まずは感謝の気持ちでいっぱいです。また、私たちが開発している「野菜のひとくちめ」という商品には、「初めて食べるお野菜がおいしいものであってほしい」「この商品を食べて、野菜を好きになってほしい」という思いがあります。

子供たちが好んで食べるというお話を聞いて、はなあふ農園さんのお野菜を使わせていただけることをとても心強く感じました。「野菜のひとくちめ」を食べてくれる赤ちゃんにも、はなあふ農園さんのお野菜を食べて野菜を好きになってほしいと心から思います。

また、森さんの背景や思い、努力も届くように商品開発を進め、伝えるための言葉も丁寧に選んでいきたいと思います。お忙しい中本当にありがとうございました!

取材・文:小島万莉菜

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