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「韓国現代戯曲ドラマリーディング」への特別な思い

この文章は、日本劇作家協会が発行する広報誌「ト書き 第60号」に寄稿した原稿です。劇作家協会の協会員ですら、日韓演劇交流センターについて、よく知らないという方が多いので、少しずつ、活動を報告していきたいと思います。

※写真は、『クミの五月』の舞台写真(2018年3月24日・25日/シアタートラム)

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日韓演劇交流センターの会議は、ほとんどの場合、新宿の喫茶室ルノアールで行われる。階段を上り、2階にある会議室の扉を開けると、演劇界の重鎮たちが怖い顔で居並んでいる。私なんぞはいつも怯えながらその末席に加わるのだった。

日韓演劇交流センターは、日本劇団協議会、日本劇作家協会、日本演出者協会、日本新劇俳優協会、日本新劇製作者協会、国際演劇評論家協会、国際演劇協会の7団体が参加して、2000年4月に発足。現在の一番大きな事業は、「韓国現代戯曲ドラマリーディング」である。

韓国の現代戯曲を日本に紹介をする目的で、隔年で5作品(5人の劇作家)を翻訳・出版し、内3作品をリーディング上演する。リーディング上演する際には劇作家本人も招聘しており、作品創作の経緯や韓国の演劇事情を直接聞くことができる。この企画は、韓国でも同様に行われ(「現代日本戯曲リーディング」という名称)、双方で戯曲と劇作家を紹介し合う事業となっている。これまでの18年で、40作品40人の劇作家を、日韓それぞれで紹介してきたことになる。

私自身は、日韓演劇交流センターに対して特別な思いを持っている。私は幸運にも上記のドラマリーディングで、2013年に「海霧」、2018年に「クミの五月」と2回も演出をする機会をいただいた。2014年4月からは委員として加わり、自分が演出した作品以外でも、ドラマリーディングの候補となった韓国戯曲は全て読むようにしている。すると、韓国の過去、現在、未来が、頭の中に広がるようになってきた。事業を通じて、たくさんの戯曲を深く読むことを重ねる中で、韓国の演劇史や近現代史が、自分の体の中に染み込んできたのだ。

怖い顔の先輩たちが始めたドラマリーディングは、予定では後2回で終了(2021年)となる。次はどのような事業を行っていくべきか、これまでの遺産をどう引き継ぎ、さらに私より若い世代を巻き込んでいく「場」になれるのか、次の課題が迫ってきている。

ト書き60(日本劇作家協会 発行)寄稿

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