Rapha Prestige Onomichi #2

明確な返事をしていないにも関わらず、立ち飲み屋で話をしてからというもの雑談をやりとりしていたSNSのメッセージに栗林はRapha Prestigeの存在を匂わすようになった。はっきりと言わないところも栗林らしいが、その話は妙にチームビルディングをどうするかというところにフォーカスが当たっていた。僕には地元京都で所属するチームがあり、Rapha Prestigeには2013年から様々にメンバーを入れ替え2015年あたりまで毎回出場していた。そこまで帰属意識が強い方では無いが、自分のチームにはそれなりに誇りを持っているので、別のチームや急造のチーム的なものでそれに参加する意味をあまり感じず、何度かあった誘いはすべてやんわりと断っていた。そういう経緯もあり、栗林の話は正直面倒に感じたが、冬のPrestigeという初めての試みへの期待や、冬季に開催されるシクロクロスレースに毎週のように参加することで単調になる生活をどうにかしたいと思っていたところもあって、面倒とは思いつつも前向きだった気がする。思えばそれが栗林のやり方であり、結果チームが完成してスタートラインに立つことになった要因のひとつだろう。栗林の話は面倒な手触りを持ちつつも、気づけば聞いてしまう浸透力のようなものを有しているのだ。毎週日曜日の早朝に練習をしているような話も聞こえていた。それにはよくわからないハッシュタグが設定されていて、普段から気が向けば自転車に乗っている僕からすれば、わざわざそんなハッシュタグを設定してシリーズのように見せるのも理解できないが、ここはひとつ実現に向けて漕ぎ出してみようか、と思った瞬間があったのは覚えている。そうなると、まずは5人のメンバーというところだが、例のチームビルディング的な考えはすぐに忘れることにした。僕のサイクリストとしての方向性を決定づけた要因のひとつであるRapha Prestigeであるが、それは既に僕の一部であり、つまりは日常である。ただ普段のライドのように、その時に一緒に走りたいと思える友人に声をかけて、気心の知れた連中を集めればいい。であれば、まず声をかけるべきは森本だ。その時、スマートフォンが栗林からのメッセージを知らせたが僕は無視をした。心なしか通知を知らせるバイブレーションが浮ついていた気がしたからだ。

>> Rapha Prestige Onomichi #3

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