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超短編小説まとめ

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夏菜

 夏菜はとても背が高くて、いつも青いワンピースを着ていた。そして、少し不機嫌そうだった。  夏菜のことを初めて実際に見たのは、僕が小学三年生の夏休みだった。それまで夏菜は噂の中の存在でしかなかったのだ。 「毎年夏祭りの時だけ現れる女がいるらしいぜ」  駐車場の小石を車道にぶん投げながら、友達は言った。 「えー、だれ?」 「わかんないけど」 「おばけかもよ」 「ヒィー」  車が通り過ぎて、排気ガスの匂いがする。僕たちは汚れた手足をコンクリートに投げ出して、ぼーっと1日の終