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ビジネスを考える

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2019年10月の記事一覧

「やってみなはれ」と「やめてまえ」のバランス

 日経電子版の記事【山崎vsジムビーム 日米ウイスキー職人の意地 "やってみなはれ"世界へ(2)】は、経営の岐路に当たって、「やってみなはれ」と「やめてまえ」を絶妙のバランスで使い分けるサントリーの大変興味深い物語です。  そもそも、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求するコト消費の時代に、細分化されるスモールマスな市場を見極め、消費者のインサイトに肉薄したイノベーティブなプロダクトを作ろうとすれば、①プロダクトの入口である消費者のインサイトと、出口であるフィードバックに

明治維新はオープンイノベーションだった

 日経電子版の記事【ダイアモンド教授「国の危機解決に明治の経験を」】は、その著書「銃・病原菌・鉄」で有名なジャレド・ダイアモンド教授が、明治維新を、危機に直面した国家が参考にすべき好例と論じるものです。  この記事で最も印象深いくだりは、次の一節ではないでしょうか。 (記事より) 「自国の問題と誠実に向き合い、分野ごとに他国で成功しているモデルをうまく取り入れた」    そもそも、国家に限らず企業なども含めて、そこに内在する『課題』を放置すれば、やがて『課題』は『危機

イノベーションの課題とアイデアのマッチング

 日経電子版の記事【投資家も注目の道産子スタートアップ、目指すは世界一】と【メニコン、目からうろこの新事業 試験薬成分はサプリに】は、イノベーションの課題とアイデアのマッチングという根本的な問題について考えさせてくれます。  前者の記事では、全国有数の農業生産額を誇る帯広市にあるスタートアップによる、農業ならではの課題=トラクターの無駄な動きを改善する運転支援アプリや、北大から生まれたスタートアップによる、雪国ならではの課題=熱で地表の雪を溶かすロードヒーティングの降雪セン

『モノ消費』の逆襲~所有の復権~

 日経電子版の記事【未来のクルマ続々 トヨタ、共有と所有の二正面作戦】は、記事の表現を借りるなら「シェアリング向けのクルマと、自分の好みに合わせて作り込むクルマを想定。それぞれ利用者を取り込む二正面作戦で臨む構え」のトヨタに関するリポートです。  そもそも、『モノ消費』から『コト消費』への変化が叫ばれる昨今ですが、もとより『モノ消費』、モノの所有が完全になくなってしまう、とは思えません。――例えば、個人が金融資産以外何ものも所有せず、企業があらゆるモノを所有し、消費者がそれ

『おにぎり』の値段~料理の本質は変幻自在~

 日経電子版の記事【おにぎりの「適正価格」 ミシュラン店の問題提起】は、進行するコメ離れの中で一人気を吐く『おにぎり』のあり方、そしてその価格などについて考察した興味深いリポートです。  そもそも、『おにぎり』という料理の最もオーソドックスなイメージは、作るには炊飯などの手間があるものの、食べる分には、簡単(素手で食べられる)・時短(主食と副食をいっぺんに食べられる)・安価(昼食代の節約、など)・少量(小腹を満たす、など)といったコンビニエントな『お手軽料理』、というもので

計算式の裏を見通す逆転の発想

 日経電子版の記事【恵那川上屋の栗きんとん、農家潤う逆転の価格】は、デフレの時代に利益確保を名目に原価低減を図ることなく、逆転の発想を貫いた企業に関するリポートです。  デフレの時代に、価格競争を勝ち抜くには、中途半端は許されず、徹底してその道を突き進むか、価格競争を超越したビジネスモデルを築くしかなさそうです。  前者の場合、単純に計算式の上からは、原価を低減するような施策を採る事が常道のようにも思えますが、実際に原価を低減しようとしても、製造工程の効率化や、テクノロジ

コト消費への対応を迫られるネット通販~プロシューマーの時代のネット通販~

 日経電子版の記事【米ネット直販、アマゾンも揺るがす SNS駆使で台頭】は、①SNSを通じて消費者とコ・クリエーション(価値共創)しながら、②自社で企画・製造(ファブレスも)したプロダクトを、③中間流通をなくした自社サイトで直販する(販売価格を抑えられる)『D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)』に関するリポートです。  そもそも、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求するコト消費の時代に、細分化されるスモールマスな市場を見極め、ユーザーのインサイトに肉薄したイノベーテ

対症療法でもなく原因療法でもない第3の道~狭まる選択肢と『気候工学』~

 日経電子版の記事【気候工学で地球を冷やせるか 科学記者の目】は、昔からないではなかったアイデア、成層圏への微粒子散布で太陽光を遮り地表を冷やすソーラー・ジオエンジニアリングなどの気候工学に関するリポートです。  地球温暖化などによる異常気象がいよいよ顕在化しだした昨今、災害に備える堤防・防潮堤などの『対症療法』がその限界を露呈し、限られた予算の中での抜本的な見直しが迫られ、また、CO2排出規制などの『原因療法』がはかばかしく進捗しない状況にあって、私達人類の選択肢はみるみ

TaaM(テクノロジー・アズ・ア・モノ)からTaaS(テクノロジー・アズ・ア・サービス)への跳躍

 日経電子版の記事【市場が暴く技術大国の陰】は、自然科学系ノーベル賞の受賞者数が、今世紀に入って18人と米国に次ぐ世界第2位のノーベル賞大国でありながら、『株価純資産倍率(PBR)』が1倍を下回っている「1倍割れ企業」が、今年9月末時点で全上場企業の50%という日本の現状に関するリポートです。  確かに、『PBR』が1倍に届かないという事は、数字の上からだけでは、資産を売り払って解散した方が、このまま経営を続けるよりマシ、という事で、何のために資金を募って経営しているのか分

コ・クリエーション(価値共創)のエコシステム

 日経電子版の記事【アマゾンの「Day1」 お試し利用の感想、革新の糧に 先読みウェブワールド】と【のび~るパンを発売 ローソン、高校生と共同開発】は、全く違う分野の異なるアプローチによるものですが、共に、商品の開発に消費者が関与するコ・クリエーションに関するリポートです。  消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求するコト消費の時代に、細分化されるスモールマスな市場を見極め、ユーザーのインサイトに肉薄したイノベーティブなプロダクトを開発するにはどうすれば良いのか?  ――

『取説型文章』と『小説型文章』~より重要なのは『小説型文章』ではないか~

 20年度から始まる大学入学共通テストのモデル問題に「駐車場の使用契約書」が出題されたとは知りませんでした。日経電子版の記事【国語も「トリセツ」重視? 文章の海は豊かなのに】を読むと、2022年度から実施される高校の新学習指導要領で、国語の選択科目が「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探求」に再編成されるなど、『文章』を巡る最新の動向が見えてきます。  あえて『文章』を『取説型』(論理国語)と『小説型』(文学国語)に分類するなら、前者には、取説・法律文書・新聞記事・小

『コネクテッド・スタディー』、教習でも自習でもない第3の道

 日経電子版の記事【米国で新フィットネス 鏡やゴーグル、ネットにつなぐ】は、クラウドと繋がったスマートミラーを活用した『コネクテッド・フィットネス』に関する興味深いリポートです。  一般論として、ディスプレー・カメラ・マイク・スピーカーが搭載されたスマートミラー、さらには脈拍などをモニターできるスマートウォッチを組み合わせて、ユーザーがサブスクでクラウド経由のレッスンを受けられるようにしたビジネスモデルには卓越したものがあると思います。――ユーザーは、スマートミラーに映った

『レシート』情報のポテンシャルと限界~レシートのデジタル化とは~

 日経電子版の記事【捨てるレシート、実はお宝 企業驚く買い方「発掘」】は、うっかりすると捨ててしまうレシートが持つデータとしての価値についてリポートしたものです。  確かに、レシートのデータとしての価値、レシートから読み取れることは、非常に大きいと思います。  例えば、冬の鍋の時期に、とあるスーパーの青果売場で、ピークタイムの17時頃、白菜が品切れしてしまったとします。それが、どのようにレシートに表れるか?――POSデータを見れば、17時までのレシートでは、白菜をはじめと

『KOC』と『KOL』

 日経電子版の記事【中国でインフルエンサーに異変 注目集める「KOC」】は、急拡大の時期が終わり陰りの見え始めた中国の動画投稿アプリ市場で、より消費者に身近な『KOC』の存在に活路を見い出そうという潮流に関するリポートです。  そもそも、『KOC』、『KOL』とは何なのか、定義自体にあやふやな所があるので、ここでは、ざっくりと次のように考えることにします―― ▶『KOC』、『KOL』とは何なのか?●『KOC(キーオピニオンコンシューマー)』  ・・・特にSNSにおいて、情