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銀河鉄道の父@ユナイテッド・シネマ入間

 ふたりの「父」が登場する。
 息子の前に立ちはだかる厳格な父・宮沢喜助(田中泯)と息子に寄り添う優しい父·宮沢政次郎(役所広司)。入院した幼き日の賢治を看病しながら自らも病にかかってしまう政次郎に喜助は「お前は父でありすぎるんじゃ」と呆れながら言う。
 それでも政次郎は息子を承認し続けた。 成長した賢治(菅田将暉)が家業を継ぐことを拒否し、進学したいと言い出した時も、人工宝石を作りたいので金の無心をしてきた時も、学校をやめ、信仰の道(法華経)に生涯を捧げたいと告白した時も…。その都度、戸惑い、怒りながらも、最終的には父は息子を認め、見守り続けた。
 そんな男達を包み込むふたりの女。
宮沢トシ(森七菜)は兄である賢治に小説家になるきっかけを与え、その作品の良き読者であり続けた。また、死を前に惑乱する喜助を引っぱたき、優しく抱き締め、引導を渡した。
 賢治の母親・宮沢イチ(坂井真紀)は「旦那様」(政次郎)のうしろに一歩引きながらも適切な助言を与えた良妻賢母である。病の床にある賢治の体を拭こうとした政次郎に「私にさせてください。最後くらいは…私は、賢さんの母親だはんで」と静かに、しかし強く言う。
 承認するとは何か、分かり合うとは何か、家族ってなんのためにあるのか。そのヒントがこの映画には示されている。
 
 

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