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あんのこと

 香川杏(河合優実)は21歳。ホステスの母(河合青葉)と祖母(広岡由里子)の暮らしを支えるため、ウリ(売春)をやり、シャブ(覚醒剤)を常用していた。
ある夜、一緒にラブホテルに入った男性が覚醒剤中毒により昏倒する。それをきっかけに彼女は警察に捕まる。取り調べを担当した多々羅(佐藤二朗)は自らが主宰する薬物乱用者の自助グループ「サルベージ赤羽」への参加を彼女にすすめる。多々羅は杏を救うために動く。

 一方、「サルベージ赤羽」を取材するために多々羅に近づいていた雑誌記者の桐野(稲垣吾郎)は多々羅に関する良くない噂を聞く。

 死は絶望ではない。死んでしまったら希望も絶望もない。死を受け入れざるを得ないと思い込んでしまった状況そのものが絶望である。杏にとってのポイント・オブ・ノーリターンはどこだったのか? 母親がシェルターマンション(DVやストーカーの被害者が避難するための集合住宅)の場所を突き止め、娘を連れ戻しに来た時か? ある女性(早見あかり)から強引に押し付けられた子供を杏の母親に人質のように取られ、ウリを再開した時か?すべてをあきらめ、縋るようにシャブをまたやってしまった時か?

 彼女を度々救ってくれた多々羅は逮捕され、そばにはいなかった。すべてが彼女を絶望へと追い込み、ベランダの淵に立たせたのだ。

 死は救いではない。死んでしまったら「救われた」と感じる事もできない。要所要所で誰かが彼女のそばに立ち、抱き止めてやる事が必要だったのだ。

 河合優実と佐藤二朗の演技は半端ではない。

 杏はスクリーンの中にだけいるのではない。あなたのとなりにいるかもしれない。彼女を助けられるのはあなただ。

#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門


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