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競争相手は他人じゃない。縦型比較で個性を伸ばす

桐蔭学園ラグビー部監督の藤原秀之さんとスポーツ心理学博士の布施努さんの共著『桐蔭学園ラグビー部 勝利のミーティング』を読了。

公立高校のラグビー部を途中退部した自分からすると、強豪校、とりわけ全国トップクラスの強豪校となると、どんな練習をしているのか、完全に未知の世界です。

なので、スポーツマンガにありがちな厳しい実力社会と、指導者による徹底的な管理、さらには全国から有力な選手をどんどん集めているイメージをもっていました。

神奈川県のみならず、ここ2年は花園で連覇するような桐蔭学園もきっとそうなんだろと思っていました。

実際、ラグビーマガジンに桐蔭学園では、花園期間中、ノンメンバーは会場で試合を応援することなく、別メニューでひたすら練習をしているなんて記事があったので、「やはり桐蔭は厳しいなぁ」と勝手に思ってました。

でもこの本を読んだら、高い視点と目標を持った桐蔭学園の選手たちには、すごく利にかなったことだったんだと認識が改められました。

藤原秀之監督の指導スタンスは、各選手の個々の成長や個性を見ていく「縦型比較」で、他の選手と比べる「横型比較」はナンセンスだと思っているタイプでした。

今できなくても、半年後にできるかもしれないし、1年後にできるかもしれないという考え方。

すごくフェアな評価基準だと思います。
評価される側からすると、他者と比較されると、

「レギュラーのあいつだって、◯◯ができてないじゃん」

みたいなネガティブな思考で評価を受けとります。

高校でラグビーをする理由は、人それぞれではありますが、大枠として「うまくなる」ことが大きな方向性なので、試合に出るか、出ないかは、「うまくなる」ための構成要素に過ぎません。

もちろんみんな試合に出たいから日々の練習を頑張る訳ですが、「うまくなる」を大目標に据えていれば、大きな試合に出れなかったとしても頑張る動機になります。

そうした考え方を根付かせているのが、この本のテーマである「ミーティング」という訳です。

常に選手たちにラグビーのこと、チームのことを考える習慣を身につけさせて、合理的な思考、ロジカルな思考を磨いていくのです。

去年と一昨年の桐蔭学園の花園での試合を見ていて、「大人だなぁ」「クレバーだなぁ」「でも意外と自由だなぁ」と思うことが多かったのは、その辺にあるのかもしれません。

印象的だったのは、藤原監督は、選手のモチベーションの維持などは特に注力していないと書いていたこと。

桐蔭学園で、ラグビーをする以上は、「モチベーションはあって当たり前」という考え方。

これは、関西学院大学でアメリカンフットボール部の監督(学生日本一12回の名将)をしていた鳥内秀晃さんの著書にも似たようなことが書いてありました。

それが日本一を目指すチームの空気なんですね。

監督もすごいけど、選手もまたすごい。選手としての能力だけでなく、高校生としての磨かれ度としてもすごいです。

少しだけ桐蔭学園ラグビー部の強さの秘密を理解できた気がします。

他にもいろいろ学びの多い本でした。





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