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誰も置いていかずに、包み込んでくれる ~宇多田ヒカル~

好きな音楽アーティストについて文章が書きたくなったので、書いてみる。第一弾(?)は宇多田ヒカル。宇多田ヒカルさん、宇多田ヒカル氏、どの敬称を当ててみても違和感があるので、宇多田ヒカルと統一して書く。

「あなたの好きなアーティストは?」

「趣味は?」と聞かれたとき、音楽と必ず答えるので「好きなアーティストは?」と連続して聞かれる。音楽好きにとって好きなアーティストがひとつなわけもなく、どのアーティストを相手に示すかは大きく悩むところである。相手も知っていそうな名前を出すのか、マイナーだろうと関係なく名前を出すのか。提示するジャンルによって、偏った印象を与えるかもしれぬ。まあ間違いなく考えすぎなのだが。

現在の自分は、「好きなアーティストはUVERworldと宇多田ヒカル」と答えることが多い。UVERはチームの友情や夢に向かってぶれずに進む想い、宇多田は他者への寄り添い、内面で起きる葛藤、悲しみと共に生きる、などを表現している気がして、バランスの良い答えだと思って気に入っている。これは相手を意識した答えでもなく、実際にその2つが最も影響を受け、最も好きなアーティストである。UVERについてはまた別の記事で。

目の前で、自分のために歌ってくれている気がする

僕の生まれた1998年に宇多田ヒカルはデビューして、現在も圧倒的な存在感を放っている。幼少期に家で聴いたtravelingは今でも印象に残っているが、宇多田を素晴らしいアーティストだとはっきり思い、聴き始めたのは2019年ごろだ。まだ3年ほどなのか。

周囲の感覚と何か違う、自分の内面に存在する価値観をわかってくれる人などいるのだろうか、とマイノリティ性みたいなものに悩んでいた自分だったが、宇多田の音楽に触れるにつれて、悩みは無くならずとも、悩みの形が変わっていった気がする。

"思い出たちがふいに私を 乱暴に掴んで離さない"  真夏の通り雨
"どこへ行ってもいいと言われると 半端な願望には標識も全部灰色だ"  COLORS

日本語にこんな素晴らしい表現があり、得体の知れない生きづらさみたいなものが美しく歌に込められていて、大きく心を揺さぶられる。

出会ったこともないし、どちらかというと神聖で遠い存在であるはずなのに、自分の部屋でヘッドフォンをして宇多田の音楽を聴いているとき、すぐそばで自分のために歌ってくれているという感覚を強く感じる。

これは宇多田がすべて作詞作曲編曲して、細部の音まで綿密に作られていることが影響していると思っているのだが、楽曲を聴いている時の没入感、引き込まれる感覚は唯一無二であると思う。

誰も置いていかずに、包み込んでくれる音楽性がある

楽曲以外にも、出版されている書籍はほとんど読んでいるし、インタビューもドキュメンタリーもできるだけ見る。宇多田ヒカルから発せられる言葉、思考をできるだけキャッチしたいという想いがある。

宇多田:人は生きていく上で、最終的には他者との繋がりを求めますよね。浅いものから深いものまで。その関係性の築き方には誰しもモデルがあって、それはやっぱり最初の原体験というか、自分を産んでくれた人なり、面倒を見て、育ててくれた人たちとの関係だと思うんです。それがその人の一生の中で、おそらく多くの場合は無意識に作用して、他者との関係性に影響していく。その無意識の影響を紐解いては、「何故なんだろう?」と追求したり、時には受け入れようとしたりする。それが私の歌詞の大体のテーマだと思うんです。引用: https://realsound.jp/2018/06/post-211910.html

上記は自分が印象に残っている言葉のひとつで、やっぱり最高だな、と言う気持ちになる。悲しみや葛藤が含まれながら、誰も置いていかない、包み込んでくれる音楽性があると思っている。

悲しい出来事も「今」は評価できない。他人を憐れむという気持ちにはなれない。その出来事のおかげで5年後10年後に、それがあってよかったと思うかもしれないから。

この言葉も素晴らしい。宮沢賢治の文章に影響を受けたらしい。

これからも長く聴いていたい

最近はインスタライブをたまにやっていたり、新アルバムが出たりと嬉しいことが多い。そこで音楽、言葉に触れるたびに、「やっぱり宇多田なんだよな」と思ってしまう。

音楽好きとして、新しいアーティストや生まれる前のアーティストも分け隔てなく聴きたいと考えているが、宇多田ヒカルの音楽に触れるたびに「やっぱり自分はこの音楽が好きだ」と感じずにはいられない。また「生きている」という実感が最も湧いてくるアーティストと言えるかもしれない。


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