中山淳雄

エンタメ社会学者&Re entertainment代表。慶應・立命館大学客員研…

中山淳雄

エンタメ社会学者&Re entertainment代表。慶應・立命館大学客員研究員。リクルート、DeNA、Deloitteを経て、バンダイナムコやブシロードでカナダ・シンガポール駐在し事業立ち上げ後、現在は独立してエンタメ支援事業。著書に『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』

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【映画業界】なぜ東宝・東映・松竹はディズニー『ブラック・ウィドウ』を拒んだのか

ドメスティックランキングは米>日>中  これまで映画市場における世界3大国家、米国(1兆円)・中国(1兆円)・日本(0.2兆円)の3つの市場の違いについて分析してきました(第82回引用)。今回はそれが「どこの国で作られた作品か」という、いわば映画としての自給自足率を図ろうという試みです。図1において各国市場の映画消費がどのくらいアメリカ(ハリウッド)映画と、国産映画に依存しているかを見ていくと、意外なことに気づきます。国産映画が国内市場5割以上を占める国は、実は世界中でも片手

    • 世界一のゲームエンパイア「テンセント」

      10年で時価総額80倍、80兆円超えの世界一ゲーム会社  世界最大のゲーム会社はどこでしょうか。任天堂でもソニーでもなく、それはテンセントです。現在売上8兆円規模、時価総額80兆円超の会社で、SNS(MAU8億人のQQ)、金融、エンターテイメント、情報、ツール、プラットフォーム、AIのインターネット総合大手企業です。時価総額でみればGAFAに次ぐ世界7位、Alibabaに次ぐ中国2位。なによりすさまじいのはその成長速度です。2005年に15億ドル、2010年に120億ドルとな

      • 音楽業界の野茂英雄となったBABYMETAL

        Xジャパンが成し遂げられなかった境地  1992年はXJapanにとって記念すべき年でした。アルバム「Jealousy」がオリコンチャート初登場1位を獲得、史上初の東京ドーム3days公演の大成功。マイナーな存在だったV系(ヴィジュアル系)の始祖になりました。のちに海外進出を夢みて米国レコード会社タイム・ワーナーと世界デビューの契約を締結。しかし彼らはその後海外市場向けに作品を発表することなく、1997年に解散しています。なぜV系ジャパメタ(ジャパニーズメタル)として一つのジ

        • サイバーエージェントと電通の政権交代からみる、アナログ広告とデジタル広告の変化

          2008年アナログ広告の危機とデジタル広告の勝機  コンテンツにとって広告はなくてはならないものです。コンテンツをメディアに乗せながら、広告でプッシュすることで興味関心を引き出す。コンテンツ業界の成長は広告業界の成長でもありました。そんな広告の時代は3つに分けられます。戦後から1991年の「成長の時代」、そして92-2007年の「停滞の時代」、最後の2008年以降の「危機の時代」。成長の時代は経済成長・消費拡張に従ってあらゆるマスメディア・セールスプロモーション(SP)の広告

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          ガンプラが生み出した模型業界の革新

          衰退するこども向け玩具業界  最後におもちゃを買ったのはいつごろだろうか。ブロックや模型を買った記憶はとうに古く、ゲームだけは中高生になっても買い続けていた。大学にはいるとそれどころではなくなり、だんだんモバイルだけで完結してアプリにくらいしかお金を使わなくなり、最近生まれた子供のために久しぶりにトイザらスに訪れる。当時わくわくしたおもちゃ屋は、自分や友人の子供のためのギフトショップになり、玩具との接し方というのは多分に自分のライフステージで大きく変化してきたように思える。

          ガンプラが生み出した模型業界の革新

          米国玩具市場とパワーレンジャー

          北米で空前の大ヒット、『パワーレンジャー』  日本コンテンツが北米を席巻するのは一度や二度の話ではありません。マリオやポケモンなど日本が先陣をきっていたゲーム市場では数々の成功例はあります。アニメもまたそうした位置づけです。ただ、映画・出版・玩具といった歴史ある産業における成功例は非常にまれ。手塚治虫の時代から、世界最大の北米市場に向けて精力的に輸出を続けてきましたが、ほとんどがニッチなファンダムを形成して終わる中小ヒット。ではそうした歴史を覆したのは何か、と言われたときに私

          米国玩具市場とパワーレンジャー

          ジブリとは何だったのか

          1980年代衰退期にあった映画業界  日本の映画史上「スタジオジブリ」の偉業をおいて右に出るものはそうないでしょう。出す作品はすべて2桁億円以上のヒット、「千と千尋の神隠し」は興行収入308億と、いまだ日本の映画史上もっとも売れたタイトルとして輝いています。(ちなみに2位「タイタニック」262億、3位「アナと雪の女王」255億、4位「君の名は。」250億、5位「ハリー・ポッターと賢者の石」203億。こうみると2~4位を大きく引き離す、断トツトップですね)。今回は「スタジオジブ

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