令和2年資金決済法改正と収納代行(パブコメ回答を踏まえ)
プラットフォーマーがユーザー間の資金の受渡しに介在する場合など、実務上、収納代行はきわめてよく用いられているが、令和2年資金決済法改正では、為替取引として規制される収納代行について明文化がされた(資金決済に関する法律2条の2)。
その具体的な内容は内閣府令に委任されているが、これと関係するパブコメ結果が3月19日に金融庁から公表されたため、これを踏まえつつ、収納代行と為替取引についてまとめたいと思う。
1.受取人が「個人」でない場合は「為替取引」に該当しない(受取人が法人や個人事業主である場合は「為替取引」に該当しない)。
・受取人が法人や個人事業主である場合は「為替取引」に該当しないことに関する法令上の文言は以下のとおり(資金移動業者府令1条の2柱書)。
・「個人」であっても、「事業」として又は「事業」のために受取人となる場合は為替取引に該当しない。
・「事業」に関しては消費者契約法上の「事業」と同様の解釈となる(パブコメ54番)。
2.受取人が「個人」であっても、いわゆるエスクローサービスのために行う収納代行は(原則として)「為替取引」に該当しない。
・エスクローサービスに関する法令上の文言は以下のとおり(資金移動業者府令1条の2第3号イ)。
3.受取人が「個人」であっても、いわゆるプラットフォーマーが行う収納代行は(原則として)「為替取引」に該当しない。
・プラットフォーマーが行う収納代行に関する法令上の文言は以下のとおり(資金移動業者府令1条の2第3号ロ)。
・多数の者が参加して取引を行うことが可能なプラットフォームを提供する事業者が、利用規約において当該プラットフォームの利用条件や取引成立条件を定めているような場合には「契約の締結の方法に関する定め」をしており、「契約の成立に不可欠な関与」を行っていると考えられる(パブコメ69番~72番)。
・プラットフォーマーが介在する取引に関しては、売買契約や役務提供契約のほか、負担のない贈与契約や、寄附型クラウドファンディングに係る契約等も含まれる(対価性のある契約に限定されるものではない)(パブコメ68番)。
→寄附型を含め、クラウドファンディングの運営事業者が行う収納代行は「為替取引」に該当しない。
※なお、パブコメ82番でも反対給付を要しないことが示唆されている。
・「受取人の同意」に関しては、債務者等から受取人に資金が移動するまでの流れを受取人が把握・許容していることが重要となる(パブコメ76番)。
→実務上は利用規約において資金の流れを明記すること等が考えられる。
4.上記2又は3の場合でも、資金移動業者府令1条の2第1号又は第2号に該当する場合は「為替取引」に該当する。
(1)1号は、収納代行業者が弁済として資金を受け入れた時(まで)に債務が消滅しない場合。
・もっとも、収納代行は、典型的には収納代行業者が資金を受け入れるのと同時に債務者の債務が消滅する(ゆえに債務者が二重払いの危険を負わない)ので、通常該当しない(1号を理由として「為替取引」に当たるとされることはない)。
・なお、パブコメ59番は、資金の受入れと同時点での債務消滅で足りることを明確化している。
(2)2号は、収納代行の原因関係が「信用供与」の場合(典型的には受取人が立替払いを行った結果、求償関係が生じた場合)。
・2号は、割り勘アプリで行われていた収納代行が「為替取引」に当たることを明確化するもの。
・原因関係が売買、サービス提供、寄附などである場合、通常は(※)該当しない(2号を理由として「為替取引」に当たるとされることはない)。
※なお、パブコメ62番は、売買の形式をとりながら実質的には貸付けであるなどの例外的な場合には2号に当たる可能性があることを示唆する。
5.事務ガイドライン(資金移動業者)Ⅰー2
・事務ガイドラインにおいて、資金移動業者府令第1条の2の規定は、資金決済法第2条の2の規定により為替取引に該当するものとされる行為の具体的な要件を定めるものであり、当該要件に該当しない行為であれば将来にわたって直ちに為替取引に該当しないことを意味するものではないとの考え方が示されている。
・もっとも、事務ガイドライン上は「今後新たなビジネスモデルが登場する可能性等もあることから」とされており、既存のビジネスモデルに関しては、基本的には、令和2年資金決済法改正で為替取引該当性に関する考え方が明確化されたと理解してよいのではないか。
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