介護は、「騎馬戦」で乗りこえる

 介護は肩車ではなく、騎馬戦で乗りこえるのがポイントだ。一人で両肩に背負うと身動きがとれないし、共倒れというリスクもある。真ん中の心棒になる人の他に、両サイドに協力者がいると心強い。

 介護をしていない人は、よくケアマネジャーやホームヘルパーが心棒になってくれると勘違いしやすいが、彼らは介護のプロだが家族のプロではない。心棒役は家族がやるしかないが、親族や介護のプロの力も借りつつ、時々心棒役を代わってもらうとリフレッシュできる。

 介護に直面したら、介護を仕事のように1つのプロジェクトとして運営するといい。私の母は10年前に亡くなっており、私たち夫婦と弟夫婦は全員働いている。私の父に介護が必要になって、すぐに家族で「プロジェクト会議」を開いた。仕事での戦略会議のようなものだ。

 まず、父の意向をきいて、それをできるだけ実現できるようにゴールイメージを共有し、メンバー各々のできることや課題を明確にし、漠然とした不安を軽減した。そして経済的負担や時間配分、介護事業者(ホームヘルパーなど)に依頼する部分といったことを決めていく。ビジネスライクに話をすることで、感情的にならずに相談することができる。

 要介護者のちょっとした要望も介護のプロに丁寧に伝えることが重要だ。持病や飲んでいる薬の情報はもちろん、趣味や食べ物の好みといったことまで共有しておくことがスムーズな介護を実現するコツだ。

 私の父は当初、ヘルパーさんの作ったお味噌汁を「まずい」といって食べてくれなかった。しかし、私が食べてみると、私の作る味噌汁よりはるかにおいしい。ふと気づいて祖母の味、父にとっての「おふくろの味」を叔母たちに頼んで教えてもらった。再現したレシピを基に作ったところ、父は「おまえ、店を出せるぞ」と言うほどに喜んで食べるようになった。どんなに些細なことでも、介護をするメンバー全員で知恵を絞り協力することで、ぐっと介護がしやすくなる。

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