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「vol.10 職人さん100人数珠つなぎ」/麻生 翼(Yoku Asou)さん/ハイブリッド職人

肥後象嵌(Higo-Zogan: 約400年前の江戸時代初期から作られている金工品。象嵌とは技術の名称で、「象」は”かたどる”、 「嵌」は”はめる”という意味です。特徴は、ベースとなる鉄の表面に細い切れ目をつけて象り、できた溝に金や銀などの金属を嵌め込むことでできる装飾性とベースの鉄を故意に錆びさせることによりでき上がる漆黒色です。@熊本県熊本市中心

FB掲載3 cherry blossom

 麻生さんは23歳頃、仕事をして貯めたお金で、憧れを抱いていたアメリカにおいて宝飾技術を学ぶため渡米しました。身銭を切って留学している麻生さんは授業に対するモチベーションが高く、また幼い頃から手先が器用で細かい作業を得意としていた制作作品を見た講師から、工房で一緒に働かないかというスカウトを受け、彫金師として5年間アメリカで研鑽を積まれました。帰国後は地元熊本の伝統工芸である肥後象嵌の後継者育成コースで学ばれた後、独立。現在は、アメリカと日本で身につけた技術を活かして、麻生さんだからできるハイブリッドな肥後象嵌を生み出しています

1: Strong Point //漆黒に宿る艶のある錆!//

 “艶のある漆黒錆”が麻生さんのシグネチャーとなっています。黒の色にこだわりを持って作るようになったきっかけは、昔の象嵌と今の象嵌を比べた時に黒の色の表現が違うということに気付き、昔の象嵌に見られる艶のある錆がカッコイイと感じたからだそうです。
 麻生さんはカッコイイと思った表現を修得するために何人もの年配職人さんを尋ねヒアリングをする中で、江戸時代に行われていた通常より1ヶ月ほど多く手間ひまをかける工程を経ることで、艶のある漆黒錆が出せることを突き止めて、現在商品に取り入れています。加えて、販売後もお客様が艶を保つことができるよう、ケアの方法や長く使うためのコツを伝えてらっしゃいます。
麻生さんが大事にしていることは、なるべく多くの人に話を聞くこと。産地内にとどまらず、視野を全国に広げて専門家に話を聞くのがポイントで、それぞれの職人さんが持っている素晴らしい技術を抽出し会得していることがすごいと思いました。
“艶のある漆黒錆”の表現は視野を広げる行動力と様々な方からアドバイスを引き出し取り入れる麻生さんの能力の賜物なのだと感じます。

FB掲載2dragon

2: Action //パッケージ、ディスプレイも含めて自分の表現!//

 麻生さんが作り出すものは商品だけではありません。パッケージの企画はもちろん、パッケージの箱まで手作りで、そのパッケージが創意工夫に富んでいて素敵なのです!   
簡単に言うと、パッケージがディスプレイとしても機能するようになっています。
 例えば、蝶の羽のピアスを展示販売する際に、パッケージに仕舞うと同時に羽がゆらゆらと飛んでいるようなディスプレイにもなるのです。
麻生さんのこだわりに満ちたパッケージは、購入側にとっても収納兼ディスプレイする楽しみができて良いなと思いました。
 行動力と発想力のある麻生さんの表現活動は実用性を超えた魅力を私たちに与えてくれます。

//麻生 翼さんのInstagram//



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