十月二十六日・二十七日@ベオグラード

十月二十六日

月曜日から『Psychology & Music』という国際学会のためにセルビアのベオグラードに来ている。ウィーンからそう遠くないので電車で行きたかったが、セルビアはEU圏内ではないため鉄道がつながっておらず、飛行機以外では車やバスで七時間ほど移動するというような次第だったので、あまり乗りたくないが飛行機でこちらに来た。EU圏外に出るので、もちろんパスポートチェックがあり、出入国のスタンプが押される(ヨーロッパ内の移動ではこれがないのが残念…)。

月曜日は問題なく着き、市内までのバスに乗り込む。隣のおじさんが喋り好きで色々質問してきて、ついには街中を案内してくれるという。変な人じゃなさそうだったので一時間ぐらいご一緒させてもらったが、永遠と続きそうだったので途中で電話しないといけないと嘘をついて切り上げた(ごめんなさいおじさん)。

ドナウ川とサヴァ川の合流地点

今日から学会だったが、午後四時からのスタートだったので、市内やベオグラード要塞、カレメグタン公園を歩き回る。

Espresso Bar。廃墟(というか古い建物)の一角をカフェにというのは東欧によくあって
私の大好物である。

夕方のセッションはクラシック音楽における即興というテーマで、講演とともに弦楽器のカルテットが実演もするという、今までに見たことないトピック&演奏だったのでとても興味深かった。ちなみにクラシック音楽というのは一般的に即興はタブーで、楽譜通りに弾くのが鉄則であるため、あえてクラシック音楽奏者に即興させるのはなかなか面白い試みである。

十月二十七日

今日から本格的に学会が始まる。朝十時からなのでそんなに早くないのだが、何故だか毎日違う会場で行われて地図を読まないといけないので、早めに出て若干遅れる。若干遅れたがここはバルカン地域、予定時刻にちょうど始まることもなく、発表には間に合う。朝は最近出版された&出版予定の本の紹介。

今日から来る人も多かったようで、午前のセッションが終わって次の講演会まで時間があったので、カレメグタン公園に行って手持ちのサンドイッチ(といってもウィーンから持ってきた食べかけのチーズとパン)を食べる。天気が良いので半袖でも気持ちがよいぐらいである。

夕方からは三つある大きな講演会のうちの一つ目。講演者の先生は実は私が海外学振の申請書を一緒に書いた先生で、この学会の目的の一つはこの先生に会うことだった。しかし前に学振の結果報告をした時に「実は次の学会はリモート参加だから対面では会えないんだ」と言われてプチショック。この先生はうちのラボミーティングでも発表してくれたし、私の申請書のアイデアを考えるときにもお話しして、何度か顔を合わせているが一度もまだ会ったことがない。卒業後研究の道に進むかわからないので、もしポスドクにならなかったら一生会うこともないんだろうなと思ったりする。

夜は私のお気に入りのチェバプチチを食べに行く。オーストリアにもバルカン料理屋さんは大きいのでチェバプチチを見かけるのだが、やはり本場で食べるのとは雲泥の差である。しかもめちゃくちゃ安い。個人的にはカイマクというクロテッドクリームみたいな濃い牛乳クリームみたいなのをつけて食べるのが好きである。廃墟とは言わないまでも、古いまま修復されていない昔ながらの建物と、英語をあまりしゃべらなくてもニコニコしてくれる人々はなんとなく昔住んでいたブダペストを思い出させ、少し悲しくなる。ウィーンは英語も通じるし何でも揃っているけど、どこか虚しい。

バンニャルカ風チェバプチチ。
バンニャルカはボスニアにある地域の名前(ちょっとピリ辛だった気がする)。