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「今月の顔」を食べちゃう

暑い1日。確か今は5月のはずなのだが。
手首のApple Watchは「気温は31度」だと知らせている。
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同級生のともちゃんとランチ。
(会社にお休みをもらって、久しぶりにともちゃんの住む町まで行った。)

オープンしたばかりの回転寿司屋さんに。
お腹はいっぱいになったけれど。
お店を出ると、やっぱり暑い。

「やっぱり暑い日はかき氷だよね!」
「つい最近見つけたかき氷屋さんがあるよ」

相談がまとまり、
てくてく歩いてかき氷屋さんへ。
日傘をさしていても、ちりちりと焼け付く。
腕カバーをしてくるんだった。
 
ーーー

狭い路地の右側にこじんまりとしたお店が。

1枚の紙にメニューが、ぴちり!と入り口に貼られている。

赤い印はまもなく終了と言う意味と後で聞いた

ともちゃん「わたし、苺ミルフィーユにする」
決断の早いともちゃん。
彼女は、中学校の頃から決めるのが早い。
何なら走るのも早い。バスケットボール部だったし。

まよう。迷うよ。こういうの。
あつこは昔から優柔不断だ。
すぐに決められたことがない。

ん?
気になる文字を見つけた。

あつこ「今月の顔ってなんだ?」

ともちゃん「暑い暑い、もう入るよ!」

ともちゃんは、日傘をてきぱきとたたみ、中にいるふっくらとしたおばさんに声をかける。

「苺ミルフィーユと今月の顔で」

あつこ「ちょっと待ってよ。まだ迷っていたのに」

だいたい顔って何よ?
平らなお皿にシロップで顔を書くんじゃないでしょうね。

ぶつぶつ言いながら店に入る。
5人も入ればいっぱいになってしまうような小さなお店だ。

かき氷の機械が回り始める。
ふわふわ、はらはら、雪が積もっていく。 
セルフのお茶は、温かいほうじ茶。
氷が冷たいから、わざとそうしてるんだね。

ーーーー

「はい、苺ミルフィーユです」
ともちゃんの氷が先にできてきた。

中にミルフィーユ(カケラ)が入ってた

あつこ「溶けちゃうから先に食べて」

ともちゃん「いいの?」

なんでこういうところばかり義理堅いのだろう。

彼女とっても優しいのだ。
中学校時代、私が休んだときには、必ずノートを持ってきてくれた。
困っている人を見過ごせない性格で、みんなに好かれていた。


14歳で出逢って
今2人とも62歳。いったい何年間友達だ?
暑くて62 − 14がすぐに出てこない。

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「おまちどうさまです。顔です」

いや、顔って。
と思ったら目があった。

いや、どうも

赤い帽子をかぶったくまちゃんだ。
正真正銘、しろくまくん。
急いでやってきたせいか、ほっぺがほんのり赤い。

「かわいいー」
ともちゃんがそっとつぶやく。

『顔』といちごミルフィーユのツーショット

が、感動してばかりもいられない。
冷房も効いていない店内。
氷は水に還元されつつある。

食べる。
冷たい!甘い!ふわふわ。
苺とクッキー。
中には、あずきあんと白玉。そしてバナナとキーウィとイチゴが入っていた。


白玉もちもち。大きめなので、多分手作り。
そして日本人はあんこだよね。
誰がなんと言おうと。

むかーし食べたことのあるアイスの白くまくんを思い出した。
最近はコンビニでも売っているらしいが、しばらく食べていない。
そっかぁ。これが顔かぁ。

氷が溶け出してしまい、最後はストローでいただいた。
ーーーー

「ごちそうさまでした」
帰り際にふっくらおばさん(店員さん)に聞いてみる。
「なんで顔なんですか」

「数年前まで月替わりで、いろいろな顔をかき氷で作っていたんです。
最近はずっと白熊で落ち着いているんですけど。昔の名残で顔って呼んでます」

「そうだったんですね。顔とだけ書いてあったのでびっくりしました」

ふっくらおばさんは笑っていた。
ちょっとだけシロクマの顔に似ていた。

ーーーー
ともちゃん「じゃあまたね」
あつこ「うん、楽しかったよ。ありがとう」

ともちゃんは、介護の日々に帰っていった。
私も明日は母の老人ホームにお見舞いに行ってくる。
お互い60年間生きてきて、いろいろなものを背負い込んでいる。

昔の友達と気兼ねなく会える時間が戻ってきた。
暑いけど、私の足取りは軽い。
また会って、
また違うかき氷を食べに行こう。

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