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【蒔絵講習の記録】蒔絵をはじめるまで〜準備もろもろ。

金継ぎを仕事にして1年ほど。
数えてはいないけど、直した器の数は500は超えたと思う。

その間、うまくいく時はいいのだけど、
うまくいかない時、
例えば、
蒔いた金がモヤモヤする(漆の表面が波打つ)、とか
ホコリが取れない!とか、ミスった時にうまく修正できない、とか、
金が思うように光らない!とか。
問題や悩みや、もっと上手い手があるのでは?ということがあると
全部まるっと、相談して、答えてもらっていた先生がいらっしゃいます。

当時、隣町に住んでいた蒔絵師の朋子せんせ。
先生に、金継ぎのあれこれを習うにつれて、思い至るのが、我が身の、漆についての知識・経験・技術の乏しさでした。

さらに、関心が進んで漆の本などを読んでみても、金継ぎの話題はない。(金継ぎは、蒔絵師が暇な時に受けていたという説もある)
漆の魅力にはまっていくにつれ、漆ともっと仲良くなるためにも、金継ぎの技術を高めるにも、こりゃ蒔絵をやるしかないー!という結論に至ったのでした。

早速、先生に蒔絵を習いたいことを伝え、葉山のアトリエへ赴き、
これからどんなことをやるか、どうやって進めるかを話し合い、道具についての説明を受け…というだけで、2時間が経過。
基本の模様と、図案の下書きをするという宿題が出されてプレの蒔絵講習が終了したのでした。

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帰宅後、
初回講座に向けて、道具を揃えていきます。

購入先は、漆道具を扱う専門店。
カテゴリーから、見慣れない、聞き慣れない専門用語が並びます。
うろたえながらも、思い出すのは日本画を専攻していた学生時代。

日本画専門の紙屋さん、絵の具屋さん、筆・刷毛屋さん…いくつもありました。上野の芸大近くや京都の老舗…。
同様に、いやもっとか、漆の世界も狭く、細い印象です。

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そうこうして、ようやく基本の道具が揃ってきました。
各お店も通販に対応してくださってるものの、ここまで揃えるのも一苦労。

筆は、
村田九郎兵衛(むらた・くろべえ)さん作。1915~にお産まれの方…!?
ショップでも「注文はお受けできますが、お時間がかります。」って。え、まさか現役?!詳しくは不明ですが、届いただけで涙です。

刷毛は、
田中信行さん作。こちらは、近年お亡くなりになったそうで…現在流通しているものがもう最後とのこと!

ちなみに、刷毛は女性の髪の毛で作られています。
〈藁灰汁で洗浄し、選り分けした後、良質の毛を漆にて固めて乾燥し、檜の薄板で包み込んで作ります。〉とのこと。

筆は、動物の毛で作られますが、琵琶湖周辺のクマネズミが良いのだとか。詳しくはここに。気が遠くなる作業です…↓
http://cul-takahashi-memorial.or.jp/urushi01.html
漆聖・松田権六の著書には、木製の船底に住み着いたネズミが最高と書かれていました。
みんな貴重すぎて、見てるだけでも手を合わせたくなります。

道具を眺めているだけでうっとりして、宿題を終えたのは次回講座の前日ですが、次回は講座第一回、「置目」についてです。

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