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”ジェンダー・ブラインド”

”カラー・ブラインド”という言葉があります。
肌の色、つまり人種の違いによる差別や格差が社会に確かに現存しているのに、それがあたかも存在しないような、もしくは既に解決されたかのような考え方や表現のことを指します。
私は、「ジェンダー・ブラインドみたいだな」と感じる光景に、よく遭遇します。
”ジェンダー・ブラインド”という言葉があるのかわからなかったけれど、インターネットで検索してみると、まだまだ広がってはいませんが、やっぱり存在しているようでした。
例えば、こんな言葉。


・女性「私は女性に生まれてきて、人生の中で差別されたことは一度もないよ」
・経営者「うちの会社は、男女関係なく、個人の実力で評価しているよ。だから女性を特別扱いはしない」
・「”女性支援”なんてことをするから、女性がいつまでも弱いままなんじゃない?」
・「LGBTとか、別にいいんじゃない。多様性の時代だからね。」
・「昔に比べたら、だいぶ男女平等になってきたよね。」
・教師「私のクラスでは、性別ではなく、個性を見てるんだ」
・政党の幹事長「女性が何人とか、そういう時代じゃない。ジェンダーの数うんぬんしているのは、日本だけ」

ジェンダー・ブラインドが非常に難しいのは、悪気があって差別しようと思っての考え、発言ではないこと。
むしろ、ポジティブに世界を捉えようとしていたり、「自分は決して差別をしない」という意志の現れだったりするのです。
では、何が問題なのか。
①声を出したい人の口を塞ぐことになるから
②現状肯定で終わって、問題解決しようとしなくなるから
といったところでしょうか。

①声を出したい人の口を塞ぐことになる
おそらく、「ジェンダー・ブラインド」の発言を目にした人は、本当は現状に満足していなく声を上げたいと思っても、きっと言えなくなってしまうでしょう。

・女性「私は女性に生まれてきて、人生の中で差別されたことは一度もないよ」
⇨他の女性たち「能力があったり努力している女性は、差別や不当な扱いを受けていないということなのかな?私が女性であるために差別されたり力を奪われたと思っているけれど、私の責任なのかな?」
・経営者「うちの会社は、男女関係なく、個人の実力で評価しているよ。だから女性を特別扱いはしない」
⇨社内の女性たち「その結果、女性の管理職やリーダーがいないのは、女性たちの実力がない、っていうことを言いたいのかな。」
・「”女性支援”なんてことをするから、女性がいつまでも弱いままなんじゃない?」
⇨女性たち「やっぱり支援を受ける自分はダメなんだ。助けを求めるから弱いまんまなんだ」
・「昔に比べたら、だいぶ男女平等になってきたよね。」
→女性たち「もう男女平等の時代なのに、稼げない自分はダメなのかな」

②現状肯定で終わって、問題解決しようとしなくなるから
ジェンダー・ブラインドって、「自分はジェンダー平等に賛成していますよ」という表明にはなっているけれど、「今ある差別や不利益にはコミットメントしますよ」とは言っていないのだと思います。だから、現状もしくは平等な未来は肯定するけれど、自分は責任を果たしません、と言っていると受け取られるのでしょう。
・「LGBTとか、別にいいんじゃない。多様性の時代だからね。」
→「別にいいとか認められようと認められまいと、私たちは存在するのに。多様性の時代だから存在していい、ではなく未だにある差別や不利益についてはどう考えているの?」
・教師「私のクラスでは、性別ではなく、個性を見てるんだ」
→「性別の不利益をそのままにしておいて、個性を見てるなんて無責任じゃないかな。なんか、モヤモヤする」
・政党の幹事長「女性が何人とか、そういう時代じゃない。ジェンダーの数うんぬんしているのは、日本だけ」
→「何周もジェンダー平等の取り組みが遅れている日本がそれ言っちゃう?ジェンダー平等が進んでいる国ほど、ジェンダー平等をより加速化しようとしている。だから、日本はさらに遅れてしまっている」

一見耳障りの良い言葉だからこそ、思考停止にならないように。
誰かの口を塞がないように。
私も気をつけていきたいと思います。

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