RevOpsは「社内稟議」にも効く!エビデンスベースの組織にアップデートしよう
先月の記事では、KPIを主なテーマにして、私の実例を交えながら解説しました。SFAツールに不必要なまでに膨大な項目のデータを入力しがちですが、実は本当に必要なものは数えるほどしかありません。逆に本当に必要なものが多すぎるのであれば、組織として目的とすべき論点が定まっていないということだと思います。
さて、今回は私が所属するウイングアーク1stで、どのようにRevOps(Revenue Operations)体制を構築してきたかを振り返ろうと思います。
どのようにRevOps体制を構築してきたか
今さらではありますが、RevOpsとは、営業やマーケティング、インサイドセールスといった部署ごとではなく、全社を横断してデータを把握し、オンタイムにマネジメントをしていく取り組みです。私がまず取り組んだのは、営業組織をデータドリブンな組織にすることでした。
前回も触れましたが、もともと私がいた組織はSFAツールの導入こそしていたものの、入力すべき項目が非常に多く、それが足かせになっていました。結果、SFAのライセンスは年々積み重なっているものの、活用はまったくされていない状況でした。これでは宝の持ち腐れです。RevOpsの一丁目一番地である、現状把握もできません。
そこで、あるタイミングで退職者が増えてメンバーが3分の2ほどになったことなどをきっかけに、大きくテコ入れをしました。具体的には、必要な項目を大幅に絞り、メンバーが習慣的に入力しやすくしたのです。そもそも、本当に必要なのは、パイプラインマネジメントに必要な項目だけ。そう考えると、70個ほどあった項目のほとんどは、実は不要です。
では、パイプラインマネジメントに必要な項目は何でしょうか。突き詰めると、目標達成のために必要な見込み商談がいくつあるか。そして、その見込み商談から受注につながる蓋然性はどのくらいか。このくらいしかありません。いくつかのルールを基に、パイプラインマネジメントを実現することを目的とし、こうした考え方で入力項目を絞ることで、メンバーが習慣的にデータ入力できるようにしました。
習慣化できれば、どんどんとデータが蓄積していきます。すると、今度はデータを眺めながら「失注や商談が中断した理由は何だろう」といった点に始まり「マーケが持ってきたリードのうち、一部のセグメントで失注率が高い」と気付き、さらには「その原因が営業サイドにあるのか、マーケサイドにあるのか」といった原因の特定に進んでいけます。
ボトルネックの特定だけでなく、「攻め」の一手を探ることも可能になります。社内データを見て、しっかりと勝てている市場とそうではない市場、さらに勝てている市場の中でも、さらなる成長余地があるものと、もう頭打ちのものを選別できます。
弊社ではこうした取り組みのサイクルを回すことで売上の成長を実現することができましたので、更なる成長を目指し新規市場の開発に投資することにしました。通常のマーケットと比較して営業1人当たり既存市場の担当営業の5分の1~10分の1ほどのミニマムな予算を設定して、開拓したことのない市場にアタック。数人の優秀な営業に「1人1000万円で良いから新たな案件創出をしてほしい」と伝えて、これまでと違う「ビジネスの種を持ってくる」というKPIで活動しました。
平行して、インサイドセールスのチーム作りも始めることに。もともとインサイドセールスの組織はあったのですが、営業にピッチした商談が受注に繋がったのか、そもそも営業はしっかりフォローしたのか因果を補足することが出来ないもったいない状態でした。そこで、マーケからのリードの流れをしっかりトラッキングして、ホットがいかに生み出せるかということを検証してみることにしました。そうしたところパイプラインが作れることが分かり、最終的に商談数を700%ほど増やせたのです。
こうして営業・インサイドセールスのパイプラインマネジメントに携わったのち、今後はマーケティング領域に成長余地があるのではないかという考えを持ち現在に至ります。気づけば10年が経過し長い時間はかかりましたが、全社で一筆書きのフローを作り、RevOpsの環境がようやく整いつつあると感じています。
社内稟議もよりスムーズに
全社的にパイプラインマネジメントを構築してさまざまなプロセス可視化が進むと、いよいよRevOpsに取り組めるようになります。すると、社内の議論も勘や経験に基づいたあいまいなものではなく、エビデンスベースになるでしょう。部署間の無駄な対立(空中戦)も減少します。透明化できているので、言い訳のしようがないですし、責任の所在も分かりやすくなるからです。状況を収益に関連する各部門が把握しているので視点も合いやすくなります。
より具体的なケースでは、人員を増やしたいと考えたときに、社内稟議がスムーズになるといったメリットも考えられます。売り上げを伸ばしたいと考えたとき、何となく「これくらいの人数が必要かな」と適当に考えることはあるでしょう。
パイプラインマネジメントやデータマネジメントがしっかりしてくると、何人増えることで活動量がどれだけ増加するか、そしてそれがどの程度の売り上げインパクトをもたらすか、さらに、コスト回収の期間なども解像度高く把握できるようになります。ここまで条件がそろっていれば、事実に基づく明確な仮説、計画、評価ができるため、社内稟議の意思決定での苦労は減少します。
――と、ここまで書いた内容は簡単そうに思えますが、実際のパイプラインマネジメント、さらにRevOpsはもっと複雑です。いかに重要そうな指標を見つけても、それを社内の組織目標に設定したり、必要な人材は配置したり、システムに落とし込んでしっかりとサイクルを回すのは、非常に複雑で終わりのない取り組みです。「だからこそ面白い」ともいえるでしょう。
「結局着地はいくらなのか」
「マーケの活動は成果に繋がっているのか」
「数字が下がっているが原因は何なのか」
「もっと早く予測できたのではないか」こんな議論がおもしろいようになくなります。
パイプラインマネジメントを基にRevOpsに取り組めるようになると、どんどんと無駄なコストと有益な投資先が明らかになり、企業が筋肉質になっていきます。そして、取り組みの成果を見ながら創意工夫し、結果がはっきり見えるので、しっかりと手応えを感じながら改善プロセスを積み上げていくことができます。ですから仕事のやりがいにもつながりますし、業績の向上が期待できるのは言うまでもありません。
思いつきの施策をやりっぱなしで(多分しっかりとやってもいない)、結局振り返りもせずに、出てきた結果に右往左往して怒号が飛び交う、そんな空虚な風景を幾度となく繰り返すのでは組織が疲弊します。ぜひ、今回の記事を読んだ方々が、RevOpsの取り組みをより一層進めることを期待しています。