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【カーボンニュートラル推進企業紹介⑬】「和彩 旬の郷」~エネルギー削減につながる地産地消にこだわる~

 カーボンニュートラル--。脱炭素への取り組みは国際レベルのものから個人での活動まで様々です。
 厚木市内で脱炭素の取り組みを進めている企業に、どのように「脱炭素への挑戦」をしているかをインタビューしました。取り組む理由や具体的な進め方、これから取り組む企業へのメッセージなど、1社ずつご紹介。取り組みを始める一歩に、また活動を促進させるヒントにしてはいかがでしょうか?
 13社目は、本厚木駅北口から徒歩3分にある「和彩 旬の郷」。豊洲などから届く鮮魚や地場中心の野菜を使い、各々厚生労働大臣表彰や県優良衛生技能者表彰を受けた調理師が生み出す創作和食の数々が評判の上、個室も備わり企業の接待から家族・友人らとの会食まで対応。多くの人から愛されている店です。自ら大臣表彰を受けた調理師でもある矢野賢造社長にカーボンニュートラルの取り組みについて聞いてみました。

個室完備で様々な用途に対応


調理ロス削減や「持ち帰り」を推奨

 ある専門機関のデータによると、 2020年度の日本のエネルギー起源におけるCO2排出量は9億6,700万トン。そのうち飲食業が含まれる部門のうちの13%(2,400万トン)を宿泊業・飲食サービス業が占め、最もCO2排出量が多い卸売業・小売業に次いで2番目に多いという状況という。
飲食業における食品ロスの発生要因の多くは「食べ残し」や「仕込みロス」が指摘されています。
 旬の郷ではその解決策として、例えば「魚の骨からも出汁をとるなどすべてを利用する」や「無駄な量は作らない」といった、調理ロス削減、食べきる分のみ調理を心掛けているそう。それでも食べきれなかった客には本人了解のもと「持ち帰り」も行っているそう。「 持ち帰りで発生し得る食中毒のリスクは自己責任の範囲とお客様に理解していただいてから残った料理を提供していますが、意外と皆さん『お願いします』と言ってくださる人が多いですね。消費者に理解してもらうことも重要となります。食べ残しは食品ロスだけでなく、企業側の損失にもつながります。

技術表彰受賞の調理師が腕を振るう

脱プラスチックでCO2削減に貢献

 「2050年カーボンニュートラル」達成のために重要なCO2排出量の削減には、プラスチック製品を使わない「脱プラスチック」への取り組みが必要と言われています。
 
 矢野社長によると旬の郷では、店で提供する食器や道具類でプラスチック製品は使用しておらず、また主に法事や会合などに仕出し弁当も提供しているが、弁当箱等それに関わるものについてもプラスチック製品は使用しないようにしているといいます。
 飲食業で需要が高い「プラスチック製品」は、その製造過程で多くのCO2を排出します。プラスチック製品のほとんどは、石油から作られており、石油を精製する過程で得られる「ナフサ(粗製ガソリン)」が主な原料となっています。そしてナフサからプラスチック製品の元となる基礎化学品を作り出します。プラスチック製品などの化学製品を製造する際に排出されるCO2排出量のうち、この基礎化学品の製造が全体の約50%の割合を占めています。「2050年カーボンニュートラル」達成にはCO2排出量の削減が重要で、プラスチック製品を使わない「脱プラスチック」への取り組みが必要となります。
 
 

地産地消に取り組む

 その地域で生産された地元食材や地域内で加工された食品を使用すること(=地産地消)は、輸送時の二酸化酸素の排出量削減につながります。さらに、食材を自家栽培してしまえば、フードマイレージ(食料の輸送距離)はゼロに近くなります。
 また、旬の食材をできるだけ新鮮なうちに提供することは、消費者にとってありがたいのはもちろん、食材の保存に使用されるエネルギーの削減にも役立ちます。食の地産地消・旬産旬消に取り組むことは、消費者、飲食店、地球にとってプラスになると言われています。
 また、オーガニック食品など環境に配慮した食材を使用することは、生態系の保全や温室効果ガスの削減につながります。化学肥料や農薬を使った農業を行うと、地中に存在するカビや細菌などの微生物、ミミズなどの生物が死んでしまいます。その結果として土壌破壊が進み、農作物も必要な養分を得られなくなり、十分育たなくなってしまう危険があります。有機肥料を使ったオーガニック食品を選ぶことは、自身の健康のためだけでなく、土壌を長期的に保全し、健全な食物連鎖を守ることにつながるといいます。

野菜は毎日「夢未市」で仕入れ

 矢野社長は、毎日自ら仕入れに出かけいるそうですが、野菜はJAあつぎ農産物直売所・夢未市で仕入れているそう。「もちろんほしいすべての食材が揃うわけではないので、足りないものは市場にも出向きますが、基本的にはできるだけ地の者を使いたいので、夢未市を利用しています。意外な食材があったりするとうれしいですね。もちろんやはり健康のことは一番に考えますから、体にいいものを選ぶようにしています」と笑顔で話す。
 

様々な工夫で省エネ実践中

 飲食店では、そのほかに省エネ効果の高いエアコンやLED照明の導入で電力使用量を抑えたり、熱伝導の良い調理器具に切り替えて厨房でのガス使用量を削減したりなど、店舗内の設備を見直すことも、カーボンニュートラルの実現につながる取り組みの一つです。旬の郷では、現在まだ100%ではないが店内のライトを順次LEDに交換しているそう。またエアコンほか冷蔵庫もリースながら商品を切り替え、さらに調理器具にも気を配り、極力まとめて調理するなど、省エネに努めているそう。
 矢野社長は、「SDGsやカーボンニュートラルを意識することは、結局お店にとってもコスト削減につながるなどメリットが多いんですよね」と話した。
 


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