女たちの色々ないろの唇から漏れる悲しみ。 映画『ガザの美容室』
あきらめの、ため息と砲弾の音がする映画。
舞台はパレスチナの美容室。
内紛による銃撃戦が始まってしまい、
女主人と女性客たちは閉じ込められてしまう。
結婚式を控え入念にヘアメイクしてもらう女。
離婚目前、終始イラだつ女は脱毛してもらっている。
臨月の女、スマホを手放せない若い女、
信仰心の厚い女、ちょっとイカレた女など。
カーラー、マニキュア、口紅、スマホ。
銃を持つ男たち、嫌がらせにライオンをけしかける男、銃声、砲弾の衝撃音。
誰が政権を握ろうとも変わらないだろう。
男たちも変わらないだろう。
自分たちの人生もきっと…
どうだろう。そんな色がにじむ。
女たちのあきらめ顔にはいらだち、涙、怒りが浮かんだり消えたりする。
神への祈りさえも、もはや可笑しなものに見えてくる。
「平和の尊さ」なんて絵空事のような、それでも美容室には行く強さ、いや強さというのか麻痺なのか日常を送りたい希望なのか…
ため息と悲しみとモヤモヤした気持ちで映画館を出た。
花嫁になる若い女の唇を彩るあざやかな赤と、結婚に疲れイカレてしまった女が舐めるロリポップキャンディに染められた青い唇が対照的で美しかった。
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