『ペンギンの憂鬱』
憂鬱症のペンギン・ミーシャと暮らす売れない小説家ヴィクトル。
新聞の死亡記事を書く仕事をきっかけに次々起こる不可解な変死。
不条理な世界を描く新ロシア文学。
寒い季節の長いウクライナが舞台なので鬱々とした小説かと思いきや、暗くはあるものの、憂鬱症のペンギンが出てきたり読みやすいリズムで物語が進んでいきました。翻訳もの独特のまわりくどさや堅苦しさが無い。
変にドラマチックな話にするでもなく、淡々と人が現れ、主人公に関わり、消えていく…
自分の仕事と変死との関係をわかりつつ、恐怖を覚えつつもゆっくりと流されていく…
その流れにほんの少し抵抗しながら。
主人公が大活躍するスーパーヒーローではないから、ひょっとしたらマンションの隣の部屋でこんなことが起きているのかもしれないとパラレルワールドを見ているような不思議な気分を味わえます。
児童文学も手がけていた著者が、ロシア語文学を身近なものにしてくれました。
『ペンギンの憂鬱』
アンドレイ・クルコフ /沼野恭子 訳
新潮社
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