学校嫌いな理由がわかったひとこと

学生時代の話をあまりしない、と言われたので、振り返ってみている。ひとことで言うと学校が好きじゃなかった、に尽きる。周りにあわせる自分や友達がたくさんできないとダメなこと、外で遊ばなきゃダメなこと、時間内に給食を食べ終えなくてはいけなかったこと、好きじゃないことだらけだ。もう使わなくなった校舎を利用した施設や給食を再現した飲食店というものを最近見て、世の中にはそんなに学校に戻りたい人がいるのかと怖かった。

昼休み時間内に給食を食べきれないから、友達と遊べる一番長い休み時間を失う。飲み込むことがもともと苦手だったが献立もまったく好みではなかった。栄養士さんには悪いが、牛乳と白米の組み合わせは最悪で、そこにきゅうりとワカメの酢の物がついた日にはどういう順番で飲み込んでいけばいいのか悩んだ。ときどき「好きな給食メニュー」という話題を目にするが、まったく思い浮かばない。

友達ができないことを給食のせいにした。少し間違っている。学校には友達よりも魅力的な、読んだことの無い本がたくさんあったのだ。もともとわたしが属さない地域の幼稚園出身者でグループが早々にできていたこともあったのかもしれない。あまり友達ができないまま友達作りよりも先に、人食い熊と猟師の戦いやネズミに食い殺された島の話、夜の森を探検する子ども達の話などにはまっていった。

いや、友達は少しいた。友達の少なさが学校嫌いの理由ではないのかもしれない。

それに気が付いたのは、高校一年生の春だった。
希望していた、公立高校の演劇科に入ることができた。音楽科・体育科のような専門コースで、演劇の勉強を中心に学ぶことができる。そのコースにあった「劇表現」という授業の初回で、体育の授業のように正しく整列したわたしたちぴかぴかの高校一年生は講師に早速どなられた。
「列になんか並ぶな!ひとりひとりの顔が見えるようにバラけろ!」

今まで学校が嫌いだった理由がわかった瞬間だ。その聞いたことの無い言葉がすこし怖く、そして嬉しかった。わたしを肯定してくれた言葉だった。

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