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その後の美青年。『レス』

作家レスに、元恋人の結婚式への招待状が届く。式から逃れるためにレスは世界中の文学イベントを回る旅に出る。

レスは年を取ることに恐怖を感じている。ゲイであるレスの周りの上の世代はエイズによって早死にし、レスは「歳を取った最初の同性愛者」だと考えている。彼が五十歳を迎えることに対して肩が上がったように大きく構えているのはそのせいだ。自分が未達のファーストジェネレーションになるのだ。

『君の名前で僕を呼んで』が美しく若い青年の恋を描いたものであれば、『レス』はその後の同性愛者たち、なのかもしれない。

我らこそが世界の中心というような顔をしている(とわたしは思っている)アメリカ人が、世界のあちこちでめちゃくちゃな言葉を喋り、元恋人の結婚式といういたたまれないイベントから逃げ惑う情けなさにクスクスできる。

あまりゲイカルチャーには詳しくないが、スーツへのこだわりや衣服の素材を細かく描写するところに、“ぽさ”を感じる。

世界のあちこちへ逃げ惑ってもつきまとう、恋の不思議。
五十歳のレスはまるで十四歳のようで、ピーターパンの恋物語を読むような楽しさがあった。

これは映画化してほしいな…

日本語版の表紙が作品のイメージとあっていた。

米国版はこちら。

『レス』アンドリュー・ショーン・グリア/早川書房

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