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#44 眞弓さんといっしょ!抗がん剤について話しました(ちょっと長編)。

こんばんは。ちょっぴり間があいてしまいました。梅雨にテンションを振り回されがちな毎日ですが、みなさんお変わりありませんか。なんて書き始めたはずが、あれ?すでに夏の気配。共同管理人のれなです。

今回は眞弓さんの抗がん剤治療の話。

眞弓さんは、大腸がんとわかって以来、抗がん剤治療を続けています。鎖骨のあたりに”ポート”と呼ばれる薬を流し込む”入口”を造ってもらって、自宅で自分で抗がん剤をいれているとのこと。自宅でできない場合は体調がしんどい中でも病院に通ったり、訪問看護を利用したり、入院したりするそう。保健師としての知識や経験があることも治療を進める上では大きな力になっているそうです。


眞弓さんがよくわかるように撮影してくれた写真


抗がん剤治療中はこんな風にバッグに薬の入ったポンプをいれて過ごすそう。

 ところで、抗がん剤治療はドラマなどで描かれることも多く、「とにかくつらく大変なこと」というイメージがありませんか。それゆえに、近しい友人が抗がん剤治療を始めたと聞けば、本当は少しでも状況を知りたいものの「治療はどんな状況ですか?」なんて自分からはとても聞けない。だって、他人が割り込む余地などないほど、ご本人とご家族が奮闘されている状況であることが想像されるからです。

 いつも頼りになるアネゴ的な存在、眞弓さんに対してであってもそれは同じでした。facebookの投稿をみたり、眞弓さんが送ってくれるメッセージをみていたりすると、「これから闘うぞ~」という闘志みたいなものを感じたり、逆にぱ~っと緊張感がとけたりするのを感じながら、(お、調子いいかな?)(ひょっとしてちょっときついのかな)などと想像はするものの、今の体調や治療について、これまで、あまりつっこんだ話を聞くことはできずにきたのです。

眞弓さんfacebookより 今回のクールは体調がよい!と聞いていました

でも。今回、眞弓さんがnoteの連載で一緒に話したいテーマの中に「大腸がんと診断されてから」というものがあり。「抗がん剤治療の話」も含まれていると思われたこと、そして今とても調子がよいと聞いていたこともあり、おそるおそる今回の話題としてどうかと尋ねてみたところ、眞弓さんは快諾。今回はじめて、じっくり話をしてくれることになりました。

初めて聞いた眞弓さんの抗がん剤治療のリアル。

れな)眞弓さん。今回、抗がん剤、何クール目なんですか?

眞弓)今の薬を使って3ヶ月目かな?だから10クールは超えてるのね。

あの、抗がん剤の種類も、大腸がんの場合とか、卵巣がんの場合とか、もう様々あって。大腸がんの一番最初の段階はもう超えて第2段階、第3段階。そしてもう使えなくなって、で緩和病棟へ。もう薬何もありませんって状態になるわけ。それの一番最後から二番目ぐらい。
この1ヶ月ぐらいだけ調子がいいわけ。その前はひどかった。

え!?

薬の種類を変えてからだけでもすでにそんなに治療を重ねていたことにもびっくりしましたが、まず眞弓さんがさらりと言い放った「緩和病棟」という言葉に心臓の鼓動が変な感じで早くなり。そして。何よりも「その前は(体調が)ひどかった」という言葉に冷や汗がでました。

というのも、その1ヶ月ほど前、しんどかったはずの眞弓さんにまったく気づくことなく、いつもと変わらない調子で弱音を聞いてもらい、それどころか逆に応援してもらってばかりいたのです。

6月、ポンコツ過ぎて落ち込んでいた私にくれたメッセージ

 これまでちゃんと眞弓さんの治療の状況を聞けなかったこととか、自分が全然抗がん剤治療のことをわかっていないことへの後悔やうしろめたさ。色々なモノが押し寄せていました。

れな)そうだったの・・・眞弓さん、全然そういうそぶりを見せないからひどいって気づけなかった><。

眞弓)看護師さんにも言われたの笑。注射とかでも痛みに強いみたいな、もともと。ランマークっていう薬があって骨髄の。骨のね、壊れるのを予防するお薬になるんだけれども、1ヶ月に1回注射をするの。インフルエンザのワクチンの約10倍ぐらいの量をいっぺんに使う。みんなすごく痛くて嫌がるんだって、看護師さんも緊張するの。それで、「ごめんね、ごめんね」って言うんだけど・・・私痛くないんだよね笑。もともとね。そういうの耐性高いんだと思う。看護学生の時にね。注射はできないけど、採血は出来るんだよね。体の中に入れるのは駄目だけど、抜くっていうので学生同士で練習したりすることがあるの。そのときに。結構、血管が出る方なので、私練習台に笑。痛がらないからね、気にしないから全然いいよいいよって。そういう耐性はね。もともと強いのかもしれない笑!

さりげなく私の鈍感さをフォローしてくれる眞弓さんの器の大きさに救われつつ、改めて申し訳なさが。同時に疑問に感じたのが、ただとにかく「つらそうだ」と思っていた抗がん剤の副作用がそんなに毎回違うものなのか、ということでした。

体中の皮膚が過敏に・・・

れな)今回はあの調子が良いっていう話なんだけど、そんなに違うんですか、今?

眞弓)同じ薬でも全然違うよ。だから治療できるのはうれしいけど毎回不安も大きい。あのまず皮膚の状態からいくとね。私の場合はひどいときは背中とか。あと胸の前のところとかね。それとかええと、指。それと上腕部っていうか、この手のところとか、ここをね、本当に包帯を巻いて背中にガーゼをこう4枚5枚貼っておかないと。知らないうちにかさぶたになってむけて出血するっていう。

れな)肌が弱っちゃうってことですか?

眞弓)ううん。抗がん剤の副作用でそういうふうになるの。弱るんじゃなくて出血しやすいっていうのが一つと、発疹ができやすい状況になってるっていうことと、それと抵抗に弱くなってるっていうか、過敏になる。手足症候群という名前がついてんの。そもそもそういうのがあるんだ、うんうんうん。痛い、痒いのもあるし。

ストーマの周囲もね。ずっとパウチを貼っているから本当に荒れちゃってね。ストーマにパウチを貼る時にも、傷の部分にガーゼをテープであてる方法もあるんだけど、私の場合は絆創膏をこう・・・あの、絆創膏あるでしょう?傷に粘着部分があたるとひどい目にあうので、肌にこうくっつくところを一部だけ残して切ってね。傷のところにあててからパウチを貼る、みたいにしないとだめ。パウチの交換の時期も2日に1回どころか、1日に何回とか。だって長くつけてると、出血とか浸出液が出て剥がれちゃう。お風呂入ってもしみるの。柔らかい洗浄剤っていうかね。肌に優しい石鹸とかも受け付けないから痛くて。あの500枚の絆創膏なんてあっという間、一ヶ月に。ガーゼも一箱。

市販の絆創膏を自分で工夫して患部につかないよう利用しているそう。
(上下写真いずれも眞弓さん提供)
何事も工夫の積み重ね!普段からあるものを活用して様々な症状に対処してきてるんですね。

 オストメイトの方は、おなかから腸を出して排泄口をつくり、その周辺の皮膚に直接パウチを貼り付ける形になっています。皮膚が過敏になっているときのケアがとても大変であろうことが痛いくらいに想像できました。

おなかに腸で造ったストーマ(人工肛門)のまわりにパウチを貼り付けます

 思えば眞弓さんは、「体調が絶好調!」という話はしてくれるけど、「今、○○が調子悪い」と自分から言ってくれることは普段ほとんどありません。ひと月に使うばんそうこうやガーゼの量などを具体的に聞き、そのほがらかな笑顔やブレない頼もしさの裏で重ねていた苦労が(それもきっと全体のほんの一部なんでしょうけれども)一気に自分の脳内で映像化されるような感覚がありました。

冷蔵庫の中のモノが触れない!

 さらに、抗がん剤の副作用によって起きる手足症候群のしんどさは皮膚のトラブルだけではありませんでした。私が本業のテレビの取材のため2年前、北海道まで取材に伺ったときの話に。

NHKシブ5時(現ゆう5時)Twitterアカウントより

眞弓)あのときは、頭の中もじゅくじゅくしたり、鼻からの出血だったりちょっとストーマからの出血もあったけど。それと疲労とかね。あとしびれが出てくるから、冷蔵庫の中の物をさわれないの。痛くて。本当に。氷とかもダメだから、ビニール手袋を薄手のもの、食器洗うもの、冷蔵庫からとるものっていうふうに何種類もこう使いわけて。

眞弓さんが抗がん剤治療中に使うグッズ。
手袋は調理用、食器洗い用、細かな調理用と使い分けるそう。(眞弓さん提供)

当時眞弓さんは、指という指の先に絆創膏を巻き付けていて、「大好きなネイルも今は出来ないんだよねぇ」と話してくれていました。さらに足のつま先のしびれのために階段の上り下りがおぼつかないということで、ご家族に支えられながら階段を降り、玄関まで見送ってくれたのです。

眞弓)でもね、今回はそれもない。冷蔵庫のものも全然平気だし、冷たい水も大丈夫だし、氷もさわれるの。ただ、口内炎と体中に発疹が出るんだ。正常な細胞が壊されちゃうから。抗がん剤は癌だけに効くわけじゃないからね。正常細胞もやられちゃうんで。あれ、痛くて何も飲みたくなくなるでしょう。ペットボトルをねこう飲むのもつらいからストローじゃないと飲めないとかね。

ちなみに冷蔵庫の中のモノを取り出していたのがこちらの革の手袋だそう。

つまりテレビや漫画でみるような抗がん剤治療の副作用はその一部で、1クールずつ、毎回症状が異なり、そのたびに必要な対応をしているのだということが眞弓さんと話したことで私もはじめて理解できました。

では抗がん剤治療をしていて、眞弓さんはどんなことが一番しんどいんだろう。私は、眞弓さんの寛大さに甘えて、最後にまた普段なら聞きづらい質問を投げかけました。

れな)何て言うのかな、どんな時が大変というか、一番気が重いですか?
眞弓)気が重いのは抗がん剤ができるかどうかっていう受診の日が一番。できなくなったらね、今度はもう治療が叶わないってことになるから。副作用があっても治療を続けられないと。っていうふうな気持ちになるからね
れな)うん、うんうん。
眞弓)だから受診する日が一番。気が重いっていうかどうだろうってドキドキするかな。
れな)そういう時ってどういうふうに奮い立たせるというか、自分の気持ちをコントロールしてるんですか?
眞弓)いやコントロールするっていうよりも、もう。それがリズムになってしまっている。はじめの頃はあの、新しい治療を始めるときは、必ず入院になるから。うんと辛いっていうよりもドキドキかな?ドキドキしながら病院に行って検査を受けて。で、その、何だろう?あっという間に終わるのね。あっちいってこっちいって。あっちこっち検査室回るから。だからそういう辛いとかなんとかって思う間もなく、時は過ぎるみたいな。大丈夫かな、大丈夫かなと思いながらね、うん。だから気が紛れるといえば、やっぱりラインで家族に状況報告するとき。
れな)うん、うんうんうん
眞弓)で誰かが見てて返事を返してくれる。あ、家族ラインでね。
気がまぎれるっていったらそれかな。

そう、ここでも眞弓さんをぎゅっと支えているのはご家族の存在。今回話してくれたように決して楽ではない抗がん剤治療をしながら、病気に日常のすべてを奪われることなく、ご家族や友人たちと颯爽と、わははと笑いながら過ごしている眞弓さんという人。この件、もっともっと話したいことがあるのですが、きょうはずいぶん長くなってしまったので、また次回お話させてください!

※眞弓さんによると、抗がん剤治療は、山のようにあるので、当事者でもわからない事が多いんだそう。 「特に、新薬や医学の進歩で、副反応の対応策も進化してるし、何より医師により、どの薬をどのタイミングで…の判断も異なるし。 副反応も、薬の聞き方も個人差ありすぎで、ある意味予測がつかない事が多すぎる〜。」ということで、今回話していただいたのはあくまでも眞弓さんの場合です。みなさんがご存じの症状や対策などもコメント欄などでシェアいただけたら嬉しいです。なお、眞弓さんによると、副作用へのおそれから標準治療を拒否してしまう人もいるようなのですが、副作用はよくなってきており、抗がん剤を使った標準治療の大事さを訴えていました。

※記事の内容は執筆者個人のものであり、所属する組織とは関係がありません。


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