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「Netflix」がライバルに認めた「TikTok」。その理由を考えてみる。

こんにちわ。

先日Twitterを眺めていたらこんな投稿が流れてきました。

最近TikTokはSNSコミュニケーションアプリとしての役割だけではなく、ショートフィルムにも進出していました。これについて、ずっとまとめようかと思っていましたが、NetflixもTikTokに目を付けたということで改めて整理してみたいと思います。

はじめに

ということで調べている矢先に、Instagramも同様のサービスを8月からローンチすることを発表しました!

世界的に危険視されて使用禁止やアクセス制限等の処置が数カ国で検討されている大人気アプリ TikTok(ティックトック)。
しかし、この TikTok の人気に目をつけた Instagram(インスタグラム) が、今年8月にアメリカにて TikTok のライバルとなり得るショートビデオプラットフォームアプリ「Reels(リール)」を立ち上げる準備をしているとのことだ。
Reels は TikTok とおなじような機能のアプリで、15秒間のショートビデオに音楽や音声を付けて投稿することができ、また再生速度調整、カウントダウンタイマー等の動画編集のためのツールも用意されているようだ。

Instgaramは、常にユーザーにとって必要だと考えるサービスしか追加しないということで有名です。Instagram自体もカメラの写真アプリだとうまく撮れないからそれを気軽に綺麗に取れるようにと言うことで始まったサービス。
STORYは、instagram内の写真スキルが高まって、気軽に写真をあげれるようになくなったので、気軽に日常を共有するものとして高まりました。そうした中、TikTokと同様のサービスを始めるかと言うと、STORYでは補いえない新しい何かの潮流を感じたからなのだと思います。

もし興味がある方は、この辺りに、Instagramの歴史と考え方がまとまっていますのでよろしければ。

また、YouTubeもTikTokの競合となる形で「Shorts」というサービスを準備していると噂されています。

こうしたニュースからもわかるように、いよいよTikTokのような「ショートムービー」が佳境になってきていると言えるのです。

1 記事の内容

まず、最初にNetflixに関するのがどのような記事だったのかを振り返っていきます。

Netflixの決算記事(Netflix Second Quarter 2020 Earnings Interview)において、下記のように述べられていたことが始まりのようです。

Competition
All of the major entertainment companies like WarnerMedia, Disney and NBCUniversal are pushing their own streaming services and two of the most valuable companies in the world, Apple and Amazon, are growing their investment in premium content. In addition, TikTok’s growth is astounding, showing the fluidity of internet entertainment. (引用元

「インターネットエンターテインメントという中で目覚ましい成長をしているので意識しなければならない」と述べているようです。

Netflixは、株主におくるレターの中に競合というカテゴリーを作っていました。そこでは、Netflixが成長していく上でのライバル企業はどんなとこかについて都度かかれていました。

2007年ごろから現在の動画ストリーミング事業を始めるのですが、2014年ごろまでは伝統的なテレビネットワーク放送局(CBSやHBO)をあげておりましたが、翌年には、HuluやAmazonが取り上げられました。

さらに、画面を競合するものとしてYouTubeやFacebook、ゲームなどをあげていました。しかしながら、その中でもInstagram, Snapchat, TwitchなどのSNSはとりあげられてこなかったそうです。だからこそ、TikTokが取り上げられたことは驚きだったのです。

競合に入れるということは、Netflixの戦略や売上に何かしら影響を及ぼしているのではないかという懸念があることだと考えます。では、まず、Netflixの現状と構造を改めて整理していきたいと思います。

2 Netflixの売上構造と最近の状況

Netflixの売上構造は「ユーザーによる定額契約の課金」のみになります。下記の記事であるように、広告などは絶対に入れないと宣言しております。

つまり、「会員をとにかく増やし続けること」「利用者に飽きずにコンテンツを観続けてもらうこと」の2つがとても大事になります。

最新の2020年の4-6月期の決算をみると、売上高は四半期ベースで初めて60億ドルを上回り、61億4828万ドル(約6600億円)、6月末時点の有料会員数は1億9295万人に達したとのことです。

単純計算すると、約3,420円/人の売上があったことになります。これは四半期(3ヶ月)の金額なので3で割ると約1,140円/月(一人当たり)です。ちなみに料金体系は、日本では3つのプランがあります。大体がスタンダードプランを選んでいると仮定すると、そのような金額かなと思います。

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なお、国別での有料会員数をみると、米国・カナダ(USAN)の会員が7,290万人欧州・中東・アフリカ(EMEA)は6,148万人中南米(LATAM)は3,607万人日本を含むアジア・太平洋(APAC)の会員は2,249万人となっています。

今回はコロナでの巣篭もりの影響もあり会員数が世界的に増加しておりましたが、それまでの様子をみると米国・カナダ市場はかなり成長が鈍化してきているといえる状況でした。つまり、戦略のステージとしては、現状のコンテンツだけでは伸びないので、新しい形や形式でのコンテンツ供給による顧客開発と、競合他社に取られないようにする囲い込み施策が必要となってきていると考えます。

特に、「Disney+」「HBO MAX」などの競合動画ストリーミングサービスが登場しているので、ますます差別化が必要になってきます。

そうした状況に答えてか、Netflixは新しいCMOの参画を発表しました。それが、元Apple Music 責任者のボゾマ・セントジョン(Bozoma Saint John)氏です。

なぜ、Netflixが彼女を雇ったのか、少し調べてみました。

上記の記事の中で最後に気になる一文を見つけました。

WarnerMedia Entertainment chairman Robert Greenblatt said, “Netflix doesn’t have a brand. It’s just a place you go to get anything—it’s like Encyclopedia Britannica.”

下記にこの発言の詳細を書いた記事があったので引用します。

先週、新たに任命されたワーナーメディア・エンターテインメントの会長であるロバート・グリンブラット氏は、ストリーミング領域で最大の競合であるNetflixを攻撃した。同氏は、NBC Newsに対し、Netflixはブランド性がなく、ブリタニカ百科事典に似ている、と話した。
彼がブリタニカ百科事典の比喩をした時、グリーンブラット氏はNetflixを「何かを手に入れるためのだけの場所」としても特徴付けている。ここで示唆しているのは、Netflixの消費者からの認識は、綿密に構築されたマーケットのポジショニングの結果ではなく、膨大な量のコンテンツによるものだということだ。
グリーンブラット氏のコメントは明確な対比を生み出している。Netflixブランドは、膨大な量のカタログであり、アイデンティティを持たないアセットのコレクションだ

つまり、「Netflixは、映画やドラマをみれる場所」だけれども、良くも悪くもアップルやディズニーといった、「それ自体でイメージが浮かぶようなブランドではなかった」ということです。そのような状況の中で、新しいストリーミングサービスに対抗するためには、Netflixユーザーのロイヤリティをさらに高めるためのブランド構築が必要だったのではないかと考えます。(そもそもビデオレンタルで始まった会社<日本ではTSUTAYAやゲオのようなもの>なので、当然と言えば当然なのですが。)

ボゾマ氏は、ペプシやアップルミュージックといった「ブランド」でマーケティングを実施してきたのでそうしたブランド作りに長けている人です。

 大学卒業後に最初に就職したのは、スパイク・リーの広告代理店。ここでジャネット・ジャクソンやビヨンセのCMを担当し、ビヨンセのCMでPepsiCo(ペプシ・コーラ)に注目され、引き抜かれます。PepsiCoでは2013年のスーパーボウルのビヨンセのステージなどを担当しました

ちなみに、下記です。歴代のベストショーに選ばれるものだそうです。てか、動画普通に鳥肌ものです。

Apple Musicのあの人力キュレーション(個人的な感想ですが、Google Play Musicのアルゴリズムによるピックアップより何倍も良い)も、当初Apple Musicに懸念を表明していたテイラー・スウィフトをすてきなCM動画に引っ張りだしたのもボゾマさんの功績。

というようなことを成し遂げたのが、今回のNetflixのCMOとして活動されます。おそらく彼女は、今後Netflixは、なんなのかといったブランド造りに着手していくことに注力していくのではないかと思います。とても楽しみにです。

次にTikTokをみていきます。

3 TikTokの最近の動き

まず、利用者数に関して調べてみました。最近の記事によると、、

With the staggering growth that's occurred since then, we estimate that the current number of monthly active TikTok users in the U.S. is about 70 million. Among U.S. over 18, TikTok brought in 22.2 million mobile unique visitors in January, 23.2 million in February and 28.8 million in March.

現在のUS市場内でのアクティブマンスリーユーザーは、7,000万人を超えたとのことです。Netflixのユーザー数が、米国・カナダで7200万人なので、おそらく米国国内だけであれば、抜いたのではないかと思われます。

さらに最近で印象的だったニュースは下記でしょうか。

元ディズニーの幹部であるケビンメイヤー(Kevin A. Mayer)がTikTokのCEOに就任しました。彼のDisneyでの実績は大きく2つが紹介されています。

メイヤー氏は戦略部門のトップのひとりとして(2015年、最高戦略責任者に就任)、ピクサー(Pixar)、マーベル・エンターテインメント(Marvel Entertainment)、ルーカスフィルム(Lucasfilm)、20世紀フォックス(20th Century Fox)の買収を牽引した。
2018年には、ディズニーのDTC&インターナショナル部門の責任者に指名され、Disney+の開発を率いた。同ストリーミングサービスについて、アイガー氏は「私の在任期間中にローンチされたプロダクトのなかで、もっとも重要」と述べている。2019年11月のデビュー以来、Disney+はこれまでに5400万人以上のサブスクライバーを獲得している。「メイヤー氏のおかげで、ディズニーはテック企業が市場に参入するスピードで動くことができたといっても過言ではない。ディズニーのような歴史と遺産を持つほかの企業を見れば、このようなスピードでは動いていないことがわかる。動けないからだ」と、シン氏は語る。

てか、めちゃめちゃすごい人なんですけど・・。

そして、ByteDance(バイトダンス/TikTokの親会社)のCEOである張一鳴(チャン・イーミン)は下記のようにコメントしました。

「成功するグローバルビジネスの育成において豊富な経験を持つケビンは、世界中のユーザーのクリエイティビティを刺激するという我々の使命にうってつけの逸材です」とイーミン氏はコメントした。「エンターテイメント業界における世界屈指の幹部であるケビンは、ByteDanceの製品ラインナップをさらなるレベルへと押し上げるのに最適な人材です。グローバル展開に向かってケビンと密接に働き、ByteDanceの物語の新たなチャプターを作っていくのを楽しみにしています」。

つまり、TikTokが新しい展開を進めていく上で、そうした知識や経験が必要になると考えているのだと思います。

また、現在アメリカ国内では、下記のように厳しい規制の壁ができてきました。そうした壁を元ディズニー幹部がCEOということで少しずつクリアしていくことも期待されているのではないかと思います。

ということで、早速下記のような施策をはじめております。

これは、アメリカ国内でアプリを浸透していくための宥和政策(ロビー活動)の一貫ではないかと言われております。

また、TikTokは2つの新しいコンテンツ供給に力を入れ始めています。

「Live配信」「ショートフィルム」です。

Live配信では、TikTokLiveというサービスがまもなくローンチするようです。サービスとしてはまだ不明ですが、「LINE LIVE」に近いのでしょうか。

ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、今後のTikTok LIVEの注目番組を紹介するナビ番組”TikTok LIVE Trend”を7月30日(木)19:00より開催します。
8月8日(土)に開催予定の「TikTok HANABI LIVE」。一般社団法人日本花火推進協力会とTikTokが協力し、日本のどこかで行われるシークレット花火大会が「TikTok LIVE」限定で生配信されます。

ショートフィルムはこちらのニュースなどが話題でしょうか。

このように、個人が投稿するSNSから、コンテンツを供給するという形に映りつつあります。

ますますTikTokの多角的な展開が進んでいます。なお、そうした状況をそのまま眺めないInstagramは、新サービスローンチにあたり、人気のTikTokerを大金で引き抜きをおこない始めているというニュースもでてきました。

ということで、TikTokがユーザー投稿型のショートムービーアプリから、進化し、コンテンツプラットフォームへのポジションに迫っているのではないかと思います。

4 NetflixへのSNSの影響

しかしながら、現状の状況をみるとまだNetflixにとって、TikTokがガチに競合している状況は言いづらいと思います。そこで、TikTokとNetflixの相互関係性と、利用時間についても考えてみたいと思います。

最近、まさにそうした懸念を象徴するような事例がアメリカでおきました。

それは、TikTokの影響によってNetflixのランキングが変動したのです。2017年に配信されていたギャスパー・ノエ監督の『Love(邦題「LOVE 3D」』という映画が、急にNetflixのTop10に入ってきたのです。

それは、少し前に配信された『愛は、365の日々で (英題「365 days」)』を観たTikTokユーザーの1人が、もしこれをみたなら『LOVE』のオープニングを観た方が良いと勧めたのです。

それに反応したユーザーたちが、実際にこの映画のオープニング映像を観て衝撃だったらしく(※日本のNetflixでは観れません)、そのオープニングを観た様子をあげようという流れがTikTokユーザーの中でおきました。例えば下記です。

@olsennchris

OUR EXTENDED “LOVE” REACTION!!! we are quiet because his dad was lit’rally in the next room 😌 #love #lovereaction #365days #couple #reactionvideo #oh

♬ original sound - bella_ashey

そして、多くのTikTokユーザーがその様子をあげた結果、急遽『LOVE』がTop10入りしたのです。

それだけであればまだ良かったものの、ほとんどのユーザーが映画を全て見るわけでなく、最初だけ見ていたという事実がわかり、Netflixは、ランキングに入る作品は2分以上観たものという条件を付け加えることになりました。またこの作品がR18作品であり、他のメジャー作品に並んでランキングに入っていることから、ブランドとしての心象がよくなかったこともあるようです。

(どんなオープニングなのか。。とても気になりますが。。。)

このように、すでにNetflixにとっては、TikTokを意識しなければ共存できないという状況に入っています。加えて、悲しいことはNetflixはあくまでも動画サービスの一つであると考えられてしまったことです(=ブランドがない)。もし「LOVE」がDisney+やhuluで配信されていたらそちらを利用するわけですから。

次は利用時間です。下記はアメリカ、イギリス、スペインの子供たちのアプリの利用状況や利用時間を比較したものになります。

子どもたちはグーグルのオンラインビデオプラットフォーム(YouTube)と、TikTokなど他のアプリNetflix、ならびにRoblox(ロブロックス)といったモバイルゲームで時間を使い分けるようになっている。
現在4歳~15歳の子どもは毎日平均85分間YouTubeビデオを鑑賞しておりTikTokで過ごす時間は毎日平均80分に達している

衝撃的な事実としては、すでに子供たちの中では、TikTokは、YouTubeとほぼ同列で扱われているということです。であれば、Netflixが競合に入れる理由もわかります。

この記事において2点興味深いグラフを紹介します。

最初のグラフは、子供たちの利用している動画アプリに関する紹介です。TikTokは含まれておりませんが、YouTubeがダントツであり、2番目はNetflixとなっております。3位との差が開いているので良いポジションであると言えます。

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次のグラフは、コロナ下におけるYouTubeとTikTokのアプリ利用時間を比較したものです。ほぼYouTubeと同時間TikTokが見られているという状況です。なお、InstagramやSnapchatの利用時間はすでに上回っております。

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「今日、米国の子どもは平均して毎日100分近く、YouTubeを鑑賞している。英国の子どもは毎日70分近くもTikTokで過ごし、スペインの子どもはロブロックスで毎日90分以上を費やしている。アプリの使用時間がとっくに増加し始めた世界は、もはや以前の状態に戻ることはないだろう。新型コロナウイルスはそれを加速させただけだ」。

つまり、このグラフから考えられることは、Netflixは、すでにYouTubeだけでなく、Tiktok、ロブロックス(ゲーム)のようなサービスも競合になっており、それらのアプリ利用時間を足し上げると、1日の260分=4時間強の時間を取られていることになります。もしさらに成長するとますますNetflixを見られる時間がなくなるので、大変な脅威となります。

おわりに

以上のことから、なぜNetflixがTikTokを競合として認めたかについてまとめると下記のような事柄があげられます。

・TikTokは、利用時間において欧米ではもはやYouTubeと同列で扱うべきアプリとなり、Netflixの視聴時間や新規加入への影響が大きくなってきた
・TikTokによってNetflixのランキングやコンテンツ編成に影響をうける事態がおこってきている
・新しいCEOの元、TikTok発の新しいエンターテイメントコンテンツが登場してくる可能性がある

Netflixは、広告モデルを導入せず、あくまでもユーザー課金を主体としたビジネスで、そのコンテンツとユーザビリティで勝負している会社です。そして、面白いコンテンツも多いと思います。あとは、そこに付加価値をつけ、ブランド力を高めることができれば、このような競合サービスとも差別化したとても強いサービスにますます進化していくとおもわれます。新しいCMOを迎え、今後Netflixがどのような戦略をもっていくのか注目していきたいと思います。

そういえば、コロナ下の時に、サードパーティが開発したものですが、こうした同時視聴機能がありました。もしかしたら正式実装されるかもしれません。

以上、長い文章にお付き合いいただき誠にありがとうございました。

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では、さようなら



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