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ネスターゲームズ(nestorgames)について その7

この記事は ボドゲ紹介 Advent Calendar 2023 の14日目の記事です。毎年継続してくださっているぐらさん、ありがとうございます。

前日はヴァントさんの記事「小学生の頃に好きだったもの。サイコロと甘いキャンディ、それから。」でした。このゲームは初めて知りましたが、まさかのギミック!こんなダイナミックな動きされたら、そりゃプレイしてみたくなるってもんですね。
ちなみに「nestorgamesにもダイナミックなゲームないの?」と聞かれても大丈夫。そう、パーティクル・アクセラレーターならね (これの最後で紹介) 。巷の協力ゲームが裸足で逃げ出す難易度のダイナミックアクションゲームです。興味ある方はこれもぜひ。

で、本題。昨年「10個一挙紹介というスタイルは今回で最後かなー」と言ってましたが嘘でした。
nestorgamesの2023年リリースはnestorgames GP拡張コースと庭シリーズDX版のみで完全新作はなかったので、所有ゲーム自体はそれ以外増えてないんですが、紹介してないゲームもあるし今年は続けようかなと。

興味のある方は過去記事も見てもらえたらと思います。
(その1その2その3その4その5その6)


はじめに

ご存じない方に向けてさらっと説明すると、nestorgamesはスペインのボードゲームパブリッシャーで、アブストラクトゲームを中心に多数のゲームをリリースしています。

※アブストラクトゲームについては、Kanare_Abstractの加藤香流さんの記事や、アブストラクトゲーム博物館の中島雅弘さんの記事が参考になります。ざっくり将棋やオセロのような、テーマ性が希薄で運要素がないゲームをイメージしてもらえたらと思います。

nestorgamesと言えばペンケース型の統一フォーマット(通称:土嚢)が特徴ですが、実はそれ以外にも下の写真のように色々なタイプが出ています。残念ながら代名詞のペンケース型は2021年に廃止され、その後は箱型or筒型で中身がデラックス仕様というのが基本になっています。

では、今年は結構なマイナーゲームにもスポットを当てつつ、恒例の一挙10ゲームのオムニバス紹介といきます。


デュプロヘックス (DuploHex)

1つ目はクールな見た目のこちら。
対辺をつないだら勝ちのヘックス(Hex)系ゲームですが、ダブル/二重の意味を持つDuploの名の通り、2種類あるリングとディスクのどちらで対辺をつないでも勝ちとなります。

各手番では以下の2つを行います。

  • 新規ディスクを空きマスに配置 または 既存ディスクを隣のリングに移動

  • 新規リングを空きマスに配置 または 既存リングを隣のディスクに移動

合体したディスクとリングはそれ以上動かせなくなります。

昔から持っていたのに今まで紹介していなかったのは、このゲームがかなり玄人向けなんですよね。
通常のヘックスでは一度置いた駒が動くことがありませんが、こちらは駒が後で隣に移動する可能性を考慮しながら最終的に辺と辺をつなげるところまで持っていく必要があります。状況ごとに接続プラン(と分断防御策)を立て直す必要があり、狙って有効手を打てるようになるまでのハードルは高めです。ヘックスに慣れた方に挑戦してもらえたら。

ちなみに兄弟ゲームとしてデュプロライン(DuploLine)があり、リングとディスクはそのままに目的が四目並べになります。デュプロラインより相当取っつきやすいので、まずはそちらを試してみるのがおすすめです。


ベレタス (Veletas)

Veletasとはスペイン語で風見鶏のこと。見た目はペンケース時代のnestorgamesど真ん中といったところです。

手番ではシューター(中立の赤駒)1個を縦横斜めへ直線上に動かしてから(任意)、そこを起点に自分の駒1個を縦横斜めの直線上に撃ち、盤面を埋めていきます。

あるシューターが動けなくなった時点で、それに縦横で隣接するグループ(駒の連なり)が最大だったプレイヤーがそのシューターを制します。ちなみに同数の場合は相手プレイヤーが制することになってしまいます。
7個のシューターのうち4個以上を制したプレイヤーの勝ち。

当然、駒が連続している方が強い陣地になるわけですが、シューター自身をそこに誘導できなければ意味がありません。このため、時にはシューターを追い込むための壁を作るべく撃つ必要もあるわけですが、それが結果的に他の自グループ強化につながったりすると、文字通り一石二鳥でニヤリとできます。

上手い立ち回りができるようになるには何回かプレイが必要かもしれませんが、勝利への行動指針は比較的分かりやすいですし、アブストラクトに興味がある人ならプレイして損はないのでは。


アンダンティーノ (Andantino)

nestorgamesにはこういったボードのないゲームも結構あったりします。このゲームは2色の小さな六角タイルだけのミニマルコンポーネント。

一言で言えばヘクス状の五目並べです。分かりやすい。
一応6枚以上の自分の駒で相手の駒を取り囲んでも勝つことができますが、その勝利条件で勝つのはかなり難しいかもしれません。

配置ルールも「2枚以上の既存タイルに接すること」というのが唯一の縛りで非常にシンプル。こういったミニマルなルールで成立するゲームデザインには憧れますね。

始めの数回は結構見落としがあるのと先手が結構有利なので、先手後手を変えながら何度もプレイすると楽しみ方が分かってくるかなと思います。


ナイス (NYSE)

続いてもう一つボードのないゲームを。

さっきのアンダンティーノはなんとなく盤面からルールを察することができる人も多いと思いますが、この盤面だけ見てルールを想像できる方は少ないかも?ヒントはタイトルのNYSE。

NYSEとはニューヨーク証券取引所のことで、盤面に置かれた灰色のチップの数字は株価、それ以外のチップは色が銘柄を表しています(上の写真だと青緑赤は株価3、黒は株価5)。こんなに素っ気ない盤面なのに株価操作がテーマのゲームなんです。そう言われるとちょっと興味が出てくる人もいるんじゃないですかね。

盤面の数字は株価チャートを表していて、手番では、基本的にチップを1枚取ってその株価を上げるか(最初以外は2回で1上がる)、チップを1枚破棄して株価を上げにくくするというシンプルなもの。チップが尽きてゲームが終了した時の手持ちチップ×株価が点数です。

ただ、よく見ると株価は5の次が2になっていて、このゲームではチャートの後戻りはできません。要は何も考えずに株価を上げていくと必ず暴落する仕組みになっています。なので、他プレイヤーと同じ株を持ち合って牽制しつつ、自分の推し銘柄を高止まりさせようとみんなが考えるわけです。

そして株式市場には想定外がつきもの。実はいくつかのチップには株価を操作したりチップを交換したりできるものが混ざっていて、持ち主だけがそれを知っています。なので、順調に推し銘柄の株価が上がっていると思ったら、いきなり暴落!みたいなことが起こり、株式市場の怖さを教えてくれます。

シンプルなルールかつ1回20~30分と短い中で、お互いの腹を探り合いながらの株価チキンレースが楽しめる良いパーティーゲームだと思います。


グレーシャー (Glaisher)

次は、日本でも数少ないアブストラクト中心のオープン会「土嚢の会」を主催されているけがわさんが作られたゲームです。nestorgamesの中でも中々上級者向けかなと。

オセロのように裏表がプレイヤーカラーになっている特殊なディスクを使用します。6枚のディスクを重ねたスタックが各辺に1柱ずつある状態でスタートし、ディスクを分解したり再度重ねたりしながら動かして対辺をつないだプレイヤーが勝ちというコネクションゲームです。

このゲームは移動方法がかなり独特です。スタックを分解して直線上に蒔いていくのですが、1ヘクス先には1枚、2ヘクス先には2枚、といった形で分解します。必ずしも連続である必要はなく、例えば5枚のスタックなら1枚を1ヘクス先に置き、4枚を4ヘクス先に置く形で分解することもできますし、2枚を2ヘクス先、3枚を3ヘクス先に置く形で分解することもできます。ただしボード外にはみ出たり完全に分解できないような手は打てません。その後、新たなディスク1枚を任意の空きマスに置いて手番終了です。

また、分解先のヘクスに自分が置こうとしているスタックより高い相手のスタックがあったらブロックされるため、そういった手も打てません。逆に同数以下だったり自分のスタックなら吸収できます。

この分解ルールに結構慣れが必要で、ボードの両端にはそのサマリーが記載されているほどです。そこからも分かるとおり、3枚以上のスタックでなければそもそも分解(=移動)できなくなってしまう上に相手に吸収されやすくなるので、なるべくそうならないようにしたい、でも対辺をつなぐためには効率的に線を延ばしたい、といったジレンマも加わり、1~2回やっただけでは思い通りに立ち回るのは中々難しいかもしれません。

ただ、この伸び縮みするディスクの連なりをコントロールする独特なプレイ感は他では中々味わえないので、コアなアブストラクトゲームファンにはプレイしてもらいたいですね。


ファノ330-R-モリス (Fano330-R-Morris)

日本人つながりということで、アブストラクトゲーム博物館の中島雅弘さんが作られたこれを。丸と三角の駒が白と黒で2個ずつ、たった8個の駒とボードで遊びます。

ゲームは8個の駒を置く配置フェイズを行った後、置いた駒を移動する移動フェイズを行います。決着方法は、手番終了時に同じ色または同じ形の駒が直線上(あるいは中央の円)に3個並んだら「負け」です。手番開始時に手詰まりでも「負け」です。そう、このゲームに勝利条件はありません。あるのは敗北条件だけ。

配置ルールは「2段積みまでOK、同色同形は積めない」のみ、移動ルールは「配置ルールを破らず隣の交点に移動、2段積みなら上段のみ移動可」のみ、と至ってシンプルですが、自分の勝ちではなくひたすら相手の詰みを考えるので普段とはまた違う頭を使いますね。

そう聞くとだいぶ敷居が高そうなんですが、実はやってみると意外なほどあっさり詰んでしまいます。1プレイ10~20分くらい。
考えなしに移動すると速攻で詰む狭い盤面で、いかに自分の逃げ道は残しつつ相手を追い込んでいくか。何度かプレイして、偶然ではなく狙って相手を詰みにできると達成感があるゲームです。


ミュルミドーン (Myrmidons)

次はちょっと毛色の違うゲームを。古代ギリシャの軍隊同士の戦いがテーマなんですが、相手からは全て同じ駒に見えるけど実は役割が違う、という駒が特徴です。ピンと来た人がいるかもしれませんが、これはガイスター(Geister)の流れを汲むゲームですね。

ガイスターの駒は良いオバケと悪いオバケの2種類のみでしたが、このゲームは各自6個の駒にそれぞれ攻撃力・防御力・移動力が割り振られています。1個は全パラメータが1で最弱な代わりに特殊能力を持つ指揮官、他の5個は各パラメータがそれぞれ異なる通常駒です(いずれも合計値は9)。

基本的には各手番で駒を1個移動し(移動力=移動可能な最大マス数)、移動先に相手の駒がある場合は両者をオープン。結果、自分の攻撃力≧相手の防御力なら相手の駒を除去、そうでなければ攻撃失敗で自分の駒を1マス後退させます。

これを繰り返していき、敵の指揮官駒を取り除くか、敵の駒を計4個取り除くか、手番開始時に自分の駒が1つでも最奥の列にあれば勝ちです。

駒の動きや攻防によって敵の布陣を推測しつつ、勝てる(と思う)攻撃を仕掛けていくわけですが、ここまで説明していなかった指揮官の特殊能力がゲームを盛り上げます。
それは、駒1個を移動する代わりに、指揮官に隣接している駒を(指揮官含め)一斉に同一方向へ何マスでも移動(+可能なら攻撃)させるというもの。強力である一方、下手に実行するとアキレス腱でもある指揮官の場所が即バレするので、使いどころと立ち回りが重要になります。逆に言えば、通常駒を指揮官と誤認させるような動きでブラフを仕掛けるのもいいかもしれません。

非公開情報が肝のゲームということでnestorgamesとしては異端ですが、カジュアルに遊べますし、もしプレイできる機会があればお試しあれ。


ファノロナ/ファヌルナ (Fanorona)

今度はマダガスカルの古典ゲームです。自分は知らなかったんですが、アサシンクリードのゲーム内ゲームとして遊べるみたいなので、それでプレイしたことがある人もいるみたいですね。

ゲームの目的は相手の駒を全て捕獲する(取り除く)ことで、この捕獲方法が特徴的です。手番では線に沿って自分の駒1個を隣の空き交点に移動し、移動後に以下のいずれかの捕獲を行います(捕獲可能なら捕獲は必須)。

  • 接近: 移動先の奥へ向かって直線上に連続する相手駒を全て捕獲する。

  • 離脱: 移動元の手前へ向かって直線上に連続する相手駒を全て捕獲する。

接近は玉突きの衝撃波で相手を吹っ飛ばす感じ、離脱は大きなカブを引っこ抜く感じといったら伝わるでしょうか。

図がないと説明しづらいところですが、実際プレイして見ると捕獲の動きが結構面白いのと、捕獲は可能な限り連続して行うことができるので(ただし同じ方向へ連続したり同じ交点に戻ってくるのは禁止)、うまく連続移動がハマると1手番で一気に駒が捕獲できて気持ち良いですね。これも入手からしばらく積んでしまってましたが、やってみると意外にアリでした。


コンスピレーター (Conspirateurs)

古典ゲーム繋がりで、お次はフランス産の伝統ゲームを。テーマとしては、フランス革命以降の派閥闘争で秘密の集会所が見つかってしまい、そこから共謀者を聖域(避難場所)へ散り散りに逃がします。

ボード中央の濃いエリア(集会所)にいる自分の駒をボード外縁の濃いマス(聖域)に全て逃がしたプレイヤーの勝ち。

手番では移動する自駒を1個選び、それを縦横斜めのいずれかに1マスだけ移動させるか、他の駒(敵味方問わず)1個を飛び越えてその直後のマスに着地します(ジャンプ)。
ジャンプの場合、着地後にまた他の駒を飛び越えられる限り何回でも連続ジャンプさせることができるので、踏み台となる駒が良い感じに並んでいれば1手番で中央から一気に外周付近まで移動することも可能です。

ポイントは39マスの逃げ場が全て先着1駒というところ。駒の総数に対して逃げ場の数に余裕はないので、特定の方面に駒を偏らせてしまうと逃げ込めるマスがなくなり、結果的に大幅な手番ロスになってしまいます。

つまり、周囲の駒がどのマスに逃げ込もうとしているかをある程度予測しながら行動するのが重要です。ジャンプ回数が多い手であっても、それが強力な手だとは限りません。その先に有効な逃げ場がないと思ったら早めに見切りを付け、1マス移動をしてでも方向転換した方がいい場合もあります。

とはいえ、連続ジャンプに対して単なる1マス移動は非常に損をした気分になるのが人の性。そうやって、無駄に距離だけ長い連続ジャンプが今日も繰り返されます…


ニブル (Nibble)

最後は見慣れないゲームを。ペンケース型廃止の直前にリリースされたため実物はほとんど出回ってなさそうですが紹介しておきます。

手番では、9マス×9マス×9色のディスクを外側(縦横に隣接する4マスのうち2マス以上が空いている場所)から取り、色ごとに分けてに並べていきます。ルールに沿って取れる同色ディスクが他にもあるなら、1手番で何個でも取ることができます。
この獲得ルールはGerhardsのパレット(Paletto)にそっくりです。

そして、以下のいずれかを達成したら勝ち。この勝利条件はなんとなくバトルラインを彷彿とさせます。

  • 1色のディスクを9枚全て集める

  • 隣接する3色のディスクを7枚以上集める

  • 任意の5色のディスクを5枚以上集める

そんなこんなで2つのゲームのマッシュアップって感じですが、実際にプレイして見るとプレイ感はかなりパレット寄りで軽めです。完全公開ゲームではあるのでガチめでやれば時間はかかるかもしれませんが、どちらかというと気軽に楽しむ系かなーと個人的には思ったり。


おわりに

なんやかんやで今回も恒例のパターンで書き切りましたが、やっぱり大変でした。

2人用が多く運要素がないという性質上、ボードゲームのオープン会でも中々立ちづらいアブストラクトゲームではありますが、一方で短時間で楽しめるゲームも多いですし、まずは隙間時間で触れてみて、その面白さに少しでも共感してもらえたら嬉しいです。

と言いつつ現在はほぼ公式サイトのみでしか販売されていないのと、ラインナップが限定的かつデラックス版なのでちょっとハードルは高いかも(もちろんnestorgamesを気に入って購入に踏み切るような仲間が増えたら万歳ですが)。

じゃあどこで遊べるの?という話ですが、持ってる人が近くにいる方は幸運です。お願いして遊ばせてもらいましょう。あとは一部のボードゲームカフェにあったりもしますね。

ルールもプレイ時間もスッキリ短めのものが多いので、もし見つけたらぜひその場でサクッとルールを読んでプレイしてみてください。新たな世界が開けるかもしれませんよ。

さて、明日のアドベントカレンダー担当ははろんさん。どうやらゾンビもののようですね。自分には全くない引き出しなのでどんな内容になるんでしょうか?楽しみにしておきます。

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