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打算的にComputer Scienceを専攻した私が「歴史副専攻」を決めて自分を救った話

ゆりえです。

「私はComputer Science専攻なんだ」というと、アメリカでも日本でも、賞賛の言葉をもらいます。大変なことで有名な専攻だからです。私は1年生の時も2年生の時も、自分の専攻を誇らしく思い、自慢でした。でもそれはCSが好きだったからではなく、自分がCSをやっているという事実が好きだったからです。

私は高校生の時にCSの勉強を始めました。IB(国際バカロレア)でHigher Level Computer Scienceを取りました。その時点での私の感触は、「特別得意なわけでもないし、感覚的に理解できるわけではないけど、それなりにはできてるな」でした。CSの世界に憧れを抱く高校生としてはそれで十分で、Pomonaに入った私は、ほぼ迷うことなくCSを専攻することを決めました。また、私のようなInternational StudentsはSTEM系の専攻をすることで卒業後にアメリカで働ける期間が延びることも理解していたので、卒業後にどこで就職するかを決めていなかった自分にできるだけオプションを残しておきたいという思いもありました。

最初の頃は、CSをやっている自分が好きだという気持ちもあり、自分の専攻を好ましく思っていました。ただセメスターをこなせばこなすほど、CSそのものを楽しく思っていない自分に気がつきました。同時にSoftware EngineeringのようなCS系の仕事を全く目指したくない自分がいました。それでも、CS専攻をやめることはありませんでした。

コロナになり大学が閉鎖し(詳しくは当時のこの記事を読んでみてください!)、私は実家があるシンガポールに帰り、就活の準備をしてみたり、インターンを掛け持ちしてみたりと充実した生活を送りました。その後日本でとある寮生活を半年ほどして、ここでも充実した日々を過ごしました。1年半いろいろな人に会い、自分の大学の話をする際に気がついたのが、

「ああ私、自分の専攻がほんとに全然好きじゃないんだな」

でした。この気づきは私をかなり苦しめました。学ぶことが本当に好きだから、Pomonaに来て、めちゃくちゃハードな授業をこなしているのに、卒業した時に私に残るのはComputer Scienceという自分が好きじゃなかった専攻なんだな、と。
そして1年半ぶりに全学年で再スタートした2021年秋学期。久しぶりすぎる対面の授業にわくわくドキドキで臨み、数日たったある日、ふと自分にとっては当たり前すぎる気づきをしました。

「ああ私、歴史がほんとに好きなんだな。心の底から歴史が大好きなんだな」

歴史マニアな父の影響で、小さい頃から歴史が大好きで、IBでもHistoryが1番楽しくて、小4からシンガポールでもアメリカでも毎週大河ドラマだけは欠かさず観ている私には、いくつになっても骨の髄まで歴史だけだ、と。

副専攻ーMinorーというのは専攻ーMajorーに比べるとほとんど意味を持たず、必要性がないと言われています。副専攻をとると、メジャーほどではないにしろ、その分野の授業を一定以上取る必要があるため、授業に制限されず好きな授業を取りたかった私は、歴史を副専攻することは全く視野に入れてきませんでした。なのに私はほぼ無意識に多くの学期で歴史の授業を取ってきていて、それは今学期も同じでした(アメリカサイドの日本の幕末の考察から、第二次世界大戦中にナチスに奪われた美術の歴史をたどる授業などなど・・ここでしか学べないと思える授業だらけです)。

けれど歴史を4年生になった今から副専攻するとしたら、さらにいくつかの授業を取る必要があり、このように単位数に縛られたくなかったので、私は副専攻は考えないで今まで来ました。

それでも、このまま卒業したら後悔すると思いました。

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(綺麗な西日が入るHistory Departmentの図書館)

そして1年半ぶりのキャンパスでの授業がスタートした週、私は歴史を副専攻することを決め、周りにそう宣言しました。するとみんながとても喜んでくれて。4年生になって副専攻を決めるなんて「今さら感」満載なはずなのに、アカデミックな好奇心を何よりもバリューするPomona生らしい周りの反応に、本当に幸せな気持ちになりました。

Pomonaでは皆が自分の専攻に対して誇りのような気持ちを持っていて、多くの人は自分の専攻や副専攻の話をする時にそれはそれは生き生きとするものです。私がCSについてあまり話さないことに気づいていた友人たちが、私の異常なほどのワクワク度(キャンパスで会うと開口一番でこの話をする勢い)によかったよかったと思ってくれたのだと思います。

「リベラルアーツカレッジあるある」「Pomonaあるある」で「入学した時に想定していた専攻とは全く違うものを専攻することになった!」という現象があります。多くの人がこれを経験するのですが、当然そうでもない人もたくさんいて、この現象に憧れる人も少なくありません。私はメジャーこそ変更しないことにしたわけですが、歴史というCSとは全く異なる学問を「副専攻で」選んだのはなかなか斬新だと思われたのもあるかもしれません。

人間とは、いや私は、とにかく単純なもので、翌日から心がふっと軽くなりました。Computer Science専攻が憂鬱だったのに、急に気にならなくなって、履修している授業全部に対するモチベーションが上がったのです。

振り返ってみても、Computer Science専攻という選択は間違っていなかったと思います。STEM専攻であることは色んな意味でアドバンテージだし、「トライすればよかった」と将来後悔していたと思います。

だからこそ、歴史を副専攻することは自分にとって、とてもとても大事でした。たとえそれが何かにつながらなかったとしても、胸を張って、「私はこれを大学で勉強したんだ!」と言える学問の分野が、副専攻という形として残るのが大事なことだと思いました(これは余談ですが、アメリカでは法律や政治の世界に進む人が歴史をメジャーすることが多いです)。

数週間前の12月、食堂で「あーでもないこーでもない」と恒例の履修の戦略を食堂で立てていると、その12月に卒業だった先輩が、「ああ自分はもう履修できない・・・」と激しく落ち込んでいました。

2018年8月に一緒に入学し予定通りに今年の5月に卒業する同期の友人たちにとっては「最後の履修」でした。私はコロナが起きてから半年間休学したので、今回が最後の履修ではなく、あと1回(夏休み前に)ありますが、12月に卒業した先輩たちの気持ちを今から想像して、早くも寂しい思いです。少しでも悔いが残らないように、全力でPomonaでのアカデミック・ライフを楽しみます!!

ゆりえ

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