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血なまぐさい不動産相続実話を読んだ①

『地主のための資産防衛術』という本を読んだ。

事業を成功させた先代の後継ぎが、親族とバチバチやりながらも事業を承継していく生の経験が綴られている。

メインは土地の相続と、分散した自社株式の回収の話なので、そのへんに向き合っている人は自分と重ね合わせて読める本だと思う。

こういった相続や事業承継は、正論はどこにでも書かれているし、正論は分かりやすいのだが、実態がそれとかけ離れているから僕含め後継ぎは苦労している。

そういった意味では、赤裸々に一族の事業承継、相続争いについて、内容を明かしてくれている著者に感謝したい。

自分にはできないと思った。
人の尊厳にかかわる話でもあるし、知ってる人が読めば誰を指しているかはわかってしまうだろうから。

だから、僕はこのnoteでも、自分の個人情報が確定されるような情報は避けているつもりだ。

そういった意味ではとても貴重な本だと思う。

この本の中で、気づきとして得たことを備忘録として残しておきたい。

正直、同じ後継ぎとして、著者のアクションを教師とするところもあれば、反面教師とするところもあった。

一つずつ記載していく。

・後継ぎの自分を悲劇のヒーローと捉えるな

著者はこの本を通じて、対立した叔父や叔母のことを、とても自己中で自分勝手な人として描写している。
それを”悪”として、自分はそれに立ち向かうヒーローであるかのような、勧善懲悪的な価値観がにじみ出ている印象を受けた。

でも、立場が違えば見え方は違うのだ。
叔父や叔母から見れば、後継ぎが悪で、自分がヒーローかもしれない。
そんな中で、自分が救世主かのような立ち振る舞いをしたら、それはこれまでやってきた人たちからしたら受け入れられないだろうなと思う。

著者は徹底的に対立し、法廷でも戦い最終的には結果を手にしているので、やりきっている点はリスペクトだが、"対立しない努力"も後継ぎには必要だと思う。

言うのは簡単で、実行するのは難しいけどね。
自分に言い聞かせるように今書いている。

・取締役も経営陣である

あとは、本を通じて終始、社長であった叔父がめちゃくちゃやって、それの尻拭いを他の人がしているといったような書き方がされているのだが、本書の最初に、取締役として、著者の父母や祖父母も入っていたと記載がある。

ということは、会社として大事な意思決定は、株主総会や取締役会で、共有されていたはずだ。(少なくとも取締役である親族たちのサインがないと進められないことは多かったはず)

それなのに、会社に関することは、全て叔父が決定してきたかのように書かれている。

取締役たちは、会社から役員報酬をもらっているので、社長と近しいレベルで会社にコミットする義務がある。
その義務を無視して、社長である叔父だけを責めるのはいかがかなと思った。

僕も同じ立場として気持ちは分かる。
先代がワンマンで、他の親族は取締役で役員報酬ももらっているのに、会社に適切にコミットしていなかった、というのは僕が継いだ時も同じ状況だった。

でも、そのことで、(僕の場合は)祖父のワンマン経営であったことが、祖父のせいだとは思わない。
他の人たちがもっとコミットするべきだったというのが僕の意見だ。

給料だけもらって責任は何もないという方が不自然だ。

給料をもらう=果たさなければならない役割がある、という当然の認識が通用しないのが家業だ。
なぜかいるだけで給料がもらえて当然だというテイカーの価値観を持ち込んでいる人がいる。

そのことが一番の問題だと僕は捉えている。
だから、その意識は改革してもらうよう、僕も親族に話をしたし、その後はいい感じに結果につなげることはできている。

・自分が把握していないことを「人に任せる」ことはできない

衝撃を受けた箇所がある。

グループの税務・経営支援は全て顧問税理士法人に任せていたため、どの不動産からいくらの収入があるかを把握しているのは、税理士法人部長と叔父だけだったのです。

とても単純な話なのだが、自分が把握していないことをどうやって人に任せることができるのだろうか?

任せている内容を自分で把握できていないのであれば、それはただの丸投げではないだろうか。

僕自身も家業に戻ってから、持っている不動産と、それにかかる租税公課、またそこから得ている賃料収入をまずは把握した。

分かっている人間が社内にはいなかったので、コンサルの方にも手伝ってもらいながら、自分で情報を整理、把握するしかなかった。
でも、それをやらないと話が始まらないことを分かっていた。

家業に戻った後継ぎは、事業の中で重要な指標となる数字は、必ず自分で確認するべきだと思う。それを何よりも先にやるべきだと思う。

いくら既存メンバーのお気持ちを聴いても、会社を取り巻く外部の人たちの意見(感想)を聴いても、それらは必ず実態とは乖離がある。

だからこそ、数字ベースで実態を見つめたほうがよっぽど全体像を把握できる。

事業の全体像を数字で理解できていないのに、外注なんてできない。

人に任せるときは、①何が目的で②そのために何が今課題で③何をしてほしいのかを明確に伝えていないのであれば、それは”任せる側”の責任だと思う。

それらを明確に伝えて、それでも受注側がその通り動かなかった時に、初めて指摘することができるのだと思う。

「○○さんに任せているから大丈夫って思ってた」って僕も家業に戻ったときに言われたけど、まじで意味が分からなかった。

それで大丈夫だったらこんな状況になってないだろって思ったよね(笑)

わが親族もこのマインドで動いていたので、そこは僕は指摘したし、自分が進んで外部業者とのコミュニケーションを引き受けた。

「丸投げ」ではうまくいかず、「任せれ」ばうまくいくことを結果で示したつもりだ。

当人たちに伝わっているかは分からんし、まあそんなこと考えてもいないかもしれないけどね。

僕が見ている景色と、家族が見ている景色は全然違うから。

まだまだ書きたいので次の記事に続きます!

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