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美と愛の女神 オシュン Oxum

いよいよこの神様のことを書く時がきてしまいました.... 満月の夜になると、白砂の湖「ラゴア ド アバエテー」に現れる美しい神様。オシュン・美神です。

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黄金と愛の女神。イエマンジャーが海水の女神である一方、オシュンは湖などの淡水を司ります。オシュンを守護神に持つ人は、魅力的で、魅惑するのが巧み、取り入るのがうまいと言われます。
オシュンは孤独と貧しさが嫌いです。図々しく見栄っ張りで、美しいことを誇りに思っており、イラストにあるように扇の形をした鏡「アベベー」にいつも自分の姿を写しています。
挨拶は「オラー イエイエー」。雌ヤギ、ササゲ豆、乾燥エビ、ゆでたまご、はちみつがお供えものです。この「蜜」を使っていろんな企みをするのがオシュンです。シンボルカラーは黄色と金色で、土曜日と数字の5の担当です。

※アバエテ湖でのMariene de Castro の「Amuleto de sorte」

この湖「ラゴア・ド・アバエテー」を訪れたときに、「この湖はオシュンの家。美青年が夜ここを訪れると、オシュンの髪の毛が伸びてその子を絡めとって溺れさせて、オシュンのものにさせられてしまう」と聞きました。そうです、どの神様もものにしたいのがオシュンです。そしてオシュンはイラストの中でなぜ耳を触っているのでしょうか?

今日ご紹介するお話では、オシュンは登場する神様のうちの1人です。宝塚歌劇「ダンスオリンピア」の森陽子先生が振付をされた柚香光さんの「シャンゴー」はみなさんご覧になられましたでしょうか。華優希さんが演じているのがオシュンです。そのほかにシャンゴーの最初の妻オバー、戦いの女神ヤンサンが登場して繰り広げる有名なお話を、ヘジナウド・プランヂさんの「イファー・預言者」から拙訳しましたので読んでみましょう。

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何故王様は三人の妻を罰したのか

たくさん語られるイファーのおはなしの中で、とでも面白い4人のキャラクターがいます。
王様のシャンゴー、そして3人の妻、オバー、ヤンサンとオシュンです。
そうです、当時ヨルバの黒人の間では、男性が1人以上の女性と結婚するのはふつうでした。
彼女たちはお互いに協力して、嫉妬もケンカもなく夫を助けていました。
…それが本当に可能なことならですが。
3人の妻たちは、妬むことも、争うことも、ぶつかることもありませんでした。

 実のところはオバーとオシュンとの間には、シャンゴーの愛を賭けた争いがありました。
オバー・お世話好きは、王様の最初の妻で、一番の役割はシャンゴー・雷神の食べ物、着るもの、武器などのお世話をすることです。
オシュン・美は、若い妻で、シャンゴーの特にお気に入りです。
オシュン・美と結婚してから、シャンゴーは、オバー・お世話好きを忘れてしまいました。
シャンゴーはオシュンに魅せられてしまって、オバーは自分が拒否されたようで、妬ましく思いました。


 ある日、オバーが調理場でシャンゴーのお気に入りの食事、輪切りのオクラ、乾燥エビとデンデーで煮込んだものと、イニャーミ芋のピューレを添えて、白ワインと一緒に用意していた時のことです。
オシュン・美は、お料理についてこう言いました。
「とってもいいにおいだわ、お姉様。王様はきっとお気に召すと思う」
オバー・お世話好きは不満を隠さずこう言いました。
「王様の好きなものを作るけど、王様は私のことはもう、気にかけてくれない」
オシュンは、ほかの妻たちと夫を分けるのが嫌でしたから、夫をライバルから遠ざけるこのチャンスを逃さずこういいます。
「ちょっとちょっとお姉様、あなたは王様の料理人よね?何か特別なものをお料理にいれるべきよ!」
オバー・お世話好きは、興味しんしんで尋ねました。
「たとえば、なに?」
オシュン・美はもったいぶりもせず、
「お食事に耳を入れるのはどうかしら?」
そして、あやしげにこういいました。
「このうえないおまじないよ」
オシュンはアドバイスして、台所を去りました。
オバーは疑いもせず、自分の耳を切り落として、オクラと一緒に揚げました。
オシュン・美は、うまくいったと、想像しました。
シャンゴー・雷の自分への包み隠さぬ愛、秘密の欲を知ることになるでしょうから。

シャンゴーは家に帰ってきて、すぐにオバーを探しました。
「今日のごはんはなんだい、第一の妻よ」
シャンゴー・炎を口にのせた王様は尋ねました。
「あの、一番お好きなやつですよ。そしてもっとお気に召すでしょうね、あなた」
オバー・お世話好きはそう答えました。
王様は大食いで有名で、ケムリのでているオクラ料理の乗った器の置かれたテーブルに突進しました。シャンゴーは器に手を突っ込んで、喜びながら食べ始めました。
 ですが、汁気の下に耳がもぐりこんでいたのを見つけ、吐き気がして、食べたものをみんな戻してしまいました。
オバー・お世話焼きは泣いて慈悲を乞いながら、怒っている王様に全てを話しました。なんておバカにもオシュン・美に騙されてしまった!
王様は謝罪は聞きたくありません。
オシュンとオバーの両方を殴りました。ひとりには性格の悪さを、もう一人はそのおバカさに。その罰はもう一人の妻のヤンサンにも及んで、この話には何の関係もないのに、「教訓にしろ!」とシャンゴー・正義の神は、自分を正当化して、いいました。

オムル蟻塚に続いて、ここでもDVが… 神話の世界でも男性神が理不尽に抑圧支配するのを見るのは辛いものがあります。

 オシュンのエピソードに、なかなかなびかない森の神様を誘惑しようとして、体じゅうにはちみつを塗って、森を転げ回って葉っぱをくっつけ、森の神に仮装して迫るというものがあります。オシュンは湖の神様ですから、水浴びした途端にはちみつは流れて葉っぱも落ちてしまい、仮装はばれてしまうのですが… 私はこの決して諦めることのないオシュンの愛への野望が(自分にない分)とても面白いと感じてしまいます。自分の美しさを知っている人はたくましいですね。

オシュンも入った神さまのTシャツを限定でプリントしました。

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もうあと3枚だけです汗 ご希望の方はこちらから


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