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2021年に読んだ83冊の本の中で読んで良かった10冊

2022年になりましたね。あけましておめでとうございます。

2021年は100冊の本を読むことを目標に掲げ、最終的には83冊の本を読むことができました。100冊読むというのは28年生きてきて1度も達成できたことがないので、まあ80%も読めればよく出来た方なんじゃないかなと思っています。

せっかくたくさんの本を読んだので、その中から特に良かったものを10冊紹介します。なお、2021年に読んだ本を紹介するという趣旨なので、対象書籍の刊行年が2021年とは限りません。何なら、2021年に出た本は3冊だけです。

三原芳秋・渡邊英理・鵜戸聡編『クリティカル・ワード 文学理論』(フィルム・アート社 2020年)

大学の文学科を卒業して5年ほど。在学中に何を勉強したのか段々と忘れてきており、文学に対峙するための手段が失われていているなという実感がありました。そこで手にしたのが本書。日本文学はあまり文学理論というものに縁がなく、大学時代でもあまり触れてこなかった領域でしたので、様々な文学理論を概観することができて非常に勉強になりました。勉強にはなったのですが、専門用語が多いのでなかなか理解することが難しく、読み通したとは言ってもこの本が血肉になっているのかというと、まだまだそんなことはないのかなと感じています。ただ、一旦すべてに目を通したので、今後何かしらの文学理論が必要になった場合に、この本へ戻ってくればどこかへ連れて行ってくれるだろうという安心感がありますね。そういう感じを得るために読んで非常に良かったです。

東浩紀『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』(中央公論社 2020年)

僕にとってゲンロンは、スター評論家・東浩紀を擁してイベント事業や出版事業でガンガン稼いでいる、という印象だったのですが、その見方がガラッと変わりました。ゲンロンが人文領域で成功しているという認識は変わりないのですが、その裏側には非常に泥臭い努力があり、危機があり、試行錯誤があるんだと分かったのが大変良かったです。ちゃんと人生を頑張っていこうねと元気が出ました。

西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学』(中央公論社 2013年)

なんとなく生成文法が気になっているとき、大学院で言語学を勉強していた元同僚におすすめの書籍を聞いてみたところ、「生成文法と認知言語学は仲が悪いので、生成文法を相対的に理解するために認知言語学の本を読むと良いですよ」と言っておすすめしてもらった本。認知言語学が専門の東大教授・西村義樹氏に対して、東大で哲学を研究している野矢茂樹氏がつっこみを入れながら議論を進めていくという内容。二人の東大教授がきゃっきゃと知的な議論しているところを、ぎゅっと1冊の本にまとめているんですよ。面白くないわけないじゃないですか。認知言語学の要点がつかめたのかというと、正直まだ分からないところがあるのですが、レトリック的に言語現象を見ていくのは大変面白かったです。文章を書くのが好きな人は楽しめるんじゃないかなと思います。

加藤重弘『日本人も悩む日本語 ことばの誤用はなぜ生まれるのか?』(朝日新聞出版 2014年)

振り返ってみると、今年は特に日本語学や言語学に興味があったのかなと思います。この本は、日本語における「誤用」にスポットを当てて、それがなぜ生まれるのかを一つひとつ検証してくれます。歴史的な経緯とかを見ていて面白く、「誤用」と知らない表現もたくさん出てきたので、文字を書く者として勉強になりました。

品田遊『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』(イースト・プレス 2021年)

反出生主義のことよく分からないな、分かりたいな、と思っていたところでお誂え向きに出版された本。ダ・ヴィンチ・恐山の名でも知られる品田遊氏は、これまでに刊行されている『走り出した止まらない』『名称未設定ファイル』も大変素晴らしく、本書も期待を裏切らない出来でした。おそらく、反出生主義の入門としてはハードルも低く最適なのではないかと思います。まあ、僕は入門しただけで、まだその奥へと進むことができていないのですが……。

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社 2017年)

以前から書名のことは知っていて、でもふざけた内容なんだろうな〜となんとなく敬遠していた本。たしかにふざけているところは多分にあるのですが、めちゃくちゃ好きなふざけ方でした。研究者としてバッタに対する熱意がすごい。バッタの生体も知ることができて面白いのですが、アカデミックなキャリアを積むためにモーリタニアでサバイブするという道を選ぶのがなんとも勇ましく、ドキドキするではありませんか。僕もちゃんと好きなことを勉強していきたいなと勇気をもらうことができました。

綿矢りさ『ひらいて』(新潮文庫 2015年)

綿矢りさ作品のことは凄く好きで、『蹴りたい背中』はもう5回くらいは読んでいるのですが、時代が下るにつれてなんとなく読んでいない作品が多かったんですよね。『ひらいて』はちょうど映画化するということもあって読んだのですが、これはやばい。『蹴りたい背中』や『インストール』にあった青春時代の自意識という問題系は引き継ぎつつも、全く違う世界が広がっている。それでいて比喩の精度や世界観はやっぱり綿矢りさのもので、ああやっぱりこの世界観が好きなんだよなあと実感しました。

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房 2021年)

アガサ・クリスティー賞受賞作として史上初となる審査員全員が5点満点を付けた作品! という前評判を聞いており、めちゃめちゃ期待度が高まっていたのですが、それを裏切られることのない良作でした。分厚いので読むのに時間はかかるのですが、ノンストップで最後まで読み切れます。殺伐百合の系譜として読んでも面白いです。また、僕はこの小説によって独ソ戦への興味を深めました。世界史の教科書を読んで理解しようとしています。次の読書に繋がる本は良い本ですね。

斜線堂有紀『愛じゃないならこれは何』(集英社 2021年)

斜線堂有紀はこれまでも大好きで、最近は新刊が出るたびに追いかけていたんですけど、この短編集は本当に良かった。ミステリー作家という印象を持っている方も多いと思うのですが、本作に収録されているのはすべて恋愛小説。こんなに好きな恋愛小説には出会ったことがない、と言えるくらいに好きでしたね……本当に最高です。しかし、この作品のどこが良かったのか、僕の中でまだちゃんと言語化できていないところが本当に悔しい。ちょっともう一度読み直して、改めて好きなところを言葉にしたいなと思っています!

西澤保彦『新装版 七回死んだ男』(講談社文庫 2017年)

12月30日から31日にかけて読んだ本です。2020年に斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』を読んで特殊設定ミステリというジャンルのことが気になり、ミステリ作家さんの集まるClubhouseで「特殊設定ミステリのおすすめはなんですか?」と聞いとき最初におすすめしていただいた作品でした。特殊設定がちゃんとミステリーのロジックの中に組み込まれており、これまで読んできたミステリーとは違った感覚で楽しむことができて良かったですね。2022年になってから読み終われば良いかな〜などと思っていたのですが、面白すぎて2021年のうちに最後まで読んでしまいました。

2022年も本を読みます

というわけで、2021年に読んだ本を10冊紹介しました。2022年はさらにたくさんの本を読めたら良いなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

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