SAKE DIPLOMA 試験対策を「超える」対策 その10-1【酒母】

こんにちは。

「あと」です。


度を越えてはいり込むこと。深く関わること。


これは、インターネットで「深入り」という単語を調べると出てくる解説です。

皆さんは、何か調べ事をしていると、ついつい深入りしすぎてしまうことってありませんか?時には、「あれ?そもそも、何について調べていたんだっけ?」なんていう事になったり・・・

日本酒、特に、今回扱う酒母や、次回扱う予定の醪に関しては、特に深入りしてしまう危険性がある項目です。

私自身、SAKE DIPLOMA認定試験の勉強をしている時や、今回のこの記事を書くにあたっても、「深入りの沼」にハマりかけました。いや、ハマってしまっていた、と言ったほうが正しいかもしれない・・・


更新が遅くなった言い訳にさせてください・・・m(_ _)m


・・・とにかく、教本を読んでもわかるように、酒母に関しては覚えなくてはならない事項が多い!!!

そのことが、酒母というものを分かりにくくしているとも言えます。

そこでまず、「そもそも酒母って何のためにあるの?」というところを整理していきたいと思います。

1.酒母 = 「酒守」!?

酒母は、簡単に言ってしまうと、「酒の腐造を防ぐ」ための工程です。

日本酒を作る際、材料となる水と米と麹米と酵母をただ混ぜれば完成するのであれば、話は単純極まりないものですね。ただ、そうはいかない。そのまま放ったらかしにしていては、貴重な材料は雑菌の餌食になってしまいます。すなわち、腐造まっしぐら・・・。

雑菌が繁殖しづらい環境を作ってあげることで、麹や酵母のはたらきを引き出すことが出来る。その「環境づくり」こそが、「酒母」という工程の正体です。

つまり、

酒母とは、「酒守」である!

と言うこともできるでしょう。まるで「母親」のように酒を守る。それこそが「酒母」の役割なのです。

では、どうやって適切な環境をつくるのでしょうか。これを理解する際に有効なのが、酒母の歴史を辿ること。古来、酒造りに携わった人々は、どのようにして酒を守ってきたのでしょう。

以前、note記事で、日本酒の歴史を取り上げたことがありました。その復習も兼ねつつ、特に酒母をクローズアップして、再び歴史の旅に出かけることとしましょう。

なお、過去記事も併せて是非ご覧下さい。


2.酒母の原型・菩提酛

酒造りの歴史は古く、縄文時代のものと思われる遺跡にもその痕跡が見られるほどです。その後、酒造りのあり方が次々と変わっていったのは、過去記事で見てきた通りです。

しかしながら、現代のように科学的にも衛生的にも最適な条件下で行われるものと違い、不安定な環境で酒造りが行われてきたであろうことは想像に難くありません。厳しい条件の中で、少しでも質の良い酒を作ろうと、様々な工夫が先人たちによって行われてきたことでしょう。

その工夫のひとつに、海外からの技術の受容があります。この時代の酒造りが自社勢力によって行われていたことは、過去記事でも述べた通りです。その寺社勢力は、海外との交流が当時から盛んでした。舶来の知識の中に、酒造りに関する技術が含まれていても不思議はありません。

そうした背景の中、中国における紹興酒づくりを参考にして生まれたとされるのが、菩提酛です。菩提酛に関しては、SAKE DIPLOMA認定試験の教本にも記載があります(P.81)。しかし、一読しただけでは、その意義が少し掴みづらい。この菩提酛という技術は、酒造りに革命を起こしたと言っても過言ではないほど、当時としては斬新なものだったと思われます。

と言うのも、それまで主流だった酒造りとは異なる技術が取り入れられているのです。

教本の菩提酛の項を見てみると、「当時の日本酒は一段仕込み」だったとあります。つまり、材料をいきなり全て混ぜて一気に造ってしまう。細かい手順等は多少あったでしょうが、基本的には「いきなり全投入!!あとはそれをかき混ぜていくのみ!!」という、今から見るとかなり大胆な手法で造られていました。しかし、このやり方では雑菌が混入しづらい環境づくりは叶いません。腐造と隣り合わせの不安定な酒造りだったことでしょう。

そこに、「中国では、何やら我々が見たことない方法で行われる酒造りがあるらしい」という情報が、まことしやかに囁かれていった・・・

そしてある時、大寺院の正暦寺に、噂されていた未知の酒造りを学んできたという人物が帰国してきた・・・

その人物によると、「酒の材料となる米の中に炊いた米を少しだけ混ぜて、その状態でさらに数日置いておく。すると、神の御加護か、はたまた悪魔の所業か、不思議なことにブクブクと泡が出てくるのだ!!さらに、それをザルで濾すと、”魔法の液体”が完成する。その”魔法の液体”とその他の材料を混ぜて酒を造ると、なんとも素晴らしい酒が出来るのである!!」とな・・・

この”魔法の液体”というのが、教本にも記載のある、乳酸発酵水(またの名を「そやし水」)です。乳酸菌が繁殖したことで得られる液体で、彼らが起こす乳酸発酵により、酸度が高くなっています。つまり、雑菌が繁殖しづらい環境を作り出しているのです!

これが微生物による「発酵」というメカニズムを利用したものであることは、恐らく当時の人々は知る由もなかったでしょう。ボコボコと泡立つ液体を目の当たりにし、当時の人々はどう感じたでしょうか。中国から伝わった秘術、はたまた魔術、あるいは神の御加護の新たな形として、神秘的な技術として伝わっていったのでしょう。

この菩提酛こそが、酒母の誕生であると言っていいのではないのでしょうか。

以降、酒を腐造から守る技術の発展の歴史が幕を開けるのです。


3.次回予告

一度に酒母について全て書こうとすると、いつまで経っても更新が出来ない気がしてきました・・・。ひとまず、今回はここで筆を置きます。

菩提酛から発展する形で、いよいよ生酛や山廃、速醸といった技術が生まれてきます。次回は、これらの技術がどのような時代背景の中で生まれた技術なのか、そこに着目していきたいと思っています。


私事ながら、このコロナ禍で生活リズムが変わったこともあり、記事更新のペースが遅くなってしまっています。

ただ、今後はSAKE DIPLOMA認定試験の日程に合わせて、試験対策に的を絞った記事もアップしたいと考えています。

どれだけ私の記事に需要があるのかも見えない中ではありますが、自分自身のためにも少しずつ執筆は続けようと思っています。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。


注)私は、まだまだ日本酒を勉強したての身であります。記載事項に関しては、自らのSAKE DIPLOMA認定試験合格の武器になったことは事実ですが、専門的見地からすると誤りであることも多々あるかと思います。その際は、ご指摘を頂けると非常に助かります。








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