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ナルシストを嘘発見器につなぐと

噓発見器(ポリグラフ)は,刑事ものの映画やドラマによく登場する装置のひとつです。だいたい,腕などに電極やセンサーをつけられて,簡単な質問に答えていくような場面が映されます。

そういう映像を見ると,噓発見器は本当に噓を発見できるのではないかと思いますよね。

噓発見器の歴史はそれほど古いものではなく,20世紀に入ってから発明されました。その背景には,さまざまなところで科学的な研究の成果が応用されていったという社会的な流れがあります。事件の捜査にも,科学を応用しようとする動きのひとつが,噓発見器だということです。

絶版になってしまったようなのですが『噓発見器よ永遠なれ』という書籍には,噓発見器の歴史が詳しく書かれています。図書館などで見かけたらぜひ。

偽陽性

噓発見器の大きな問題のひとつは,本当は噓をついていないのに「噓をついている」と判定してしまう可能性がある点にあります。

事実はそうでないにもかかわらず,「そうだ」と判定してしまうことを偽陽性といいます。犯罪をしていないのに「犯罪をした」と逮捕してしまうことと同じです。これは冤罪と言いますよね。

逆に,事実はそうであるにもかかわらず「そうではない」と判断してしまうことは偽陰性です。犯罪を見逃してしまう状態と同じです。

噓発見器は,血圧や発汗など,身体の反応から「噓をついた」と判断するのですが,問題は噓をついていなくても緊張などで同じような反応が生じてしまう可能性があることなのです。私も緊張しやすいので,きっと捕まって何か機械につながれて質問されれば,本当はやっていないのに「噓をついた」とされてしまいそうです。

ニセ物の噓発見器

多くの人が「噓発見器は効果がある」と信じていることを逆手にとって,「いま噓発見器につながれていますよ」という状況を利用した研究方法があります。これを,“Bogus pipeline”といいます。「ニセ物パイプライン」でしょうか……。

実験室に座らされて,腕とか頭とかに電極をつけられ,ものものしい機械につながれます。まるで,本物の噓発見器につながれたような状況です。実験に参加している人も,「本当に何か噓発見器のような,噓を見破ることができる機械につながれている」と思ってしまうことがポイントです。すると,「噓をついてはいけない」と思い込んでしまうと言うわけです。

もしかしたら最近だと,「脳を測定しています」と伝えた方が信じやすいかもしれません。これも多くの人が何をイメージしているかによって変わりそうです。

ナルシストをつなぐ

このような方法を使うと,自己愛的な人物の自己報告がどのように変わってくるのかを検討した研究があります。この論文(Using the bogus pipeline to investigate trait narcissism and well-being)です。

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