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ブラック企業を話題にし続けることができますか?

今回は,少し前に授業をしながら考えたことについて書いてみたいと思います。何についてかというと,「ブラック企業」についてです。

最近,ちょっとブラック企業の話題が少なくなっているのではないかな?と思ったのです。もちろん学生たちにとっては今も切実な問題ですし,苦しんでいる人たちも沢山いることは想像できます。

でも,「見聞きする機会が減っているのでは」と思ったのでした。

実際にGoogleトレンドで「ブラック企業」を検索して,2004年から今までの検索数の変化をビジネスや産業分野でグラフに描いてみます。

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明らかに,一時期のブームに比べて下火になっているように思えますよね。

人手不足

おそらく一つの要因は,日本の人口構成の変化のために全体的に人手不足になってしまっていることが挙げられると思います。団塊の世代が退職することで,日本は一気に働く世代が少なくなりました。

ブラック企業の基本は「労働者の使い捨て」ですので,捨て駒になる労働者が不足すれば,ブラック企業のスタイルは維持するのが難しくなっていくだろうと考えられます。


避けるように

また,ブラック企業という言葉が浸透することで,職を求める人がそういった企業を避けたり,早めに退職したりするようになったということも挙げられるかもしれません。学生たちも「ブラックな職場はイヤだ」という思いが強そうです。

ただし,ブラック企業についての本を読めば分かる通り,避けようと思っても入ってからブラックだとわかることも多いのが現実です。また求職者のやる気を煽ったり会社との一体感を過度に求めたりすることで,若者の方があえてそういう企業に表面的な魅力を感じてしまうということもあります。「避けよう」としてもうまく避けられるとは限らないのが現状です。


最悪な理由

そして,もしかしたらこれがいちばんの理由なのかもしれないなと思えてしまって,もしそうなら「最悪だな」と思うことがあります。

それは,ブラック企業の体質が改善されたから話題になっているのではなく,「ブラック企業から日本人労働者が少なくなった」のかもしれないということです。企業体質は同じなのに,そこに日本人がいなくなったから話題にならなくなったとしたら,どうでしょうか?

そうではないかもしれないのですが,もしそうなら,なんだかとても悲しいことではないかと思ったのです。「もう自分たちには関係のないことだから,話題にはしない」「日本人にはどうでもいいことですよね?」「こういう会社で苦しむ日本人が少なくなったので,あまり声が上がることがなくなった」...。

結局これだと,いつの時代でも同じことの繰り返しです。私たちはずっと昔から同じことをしているのではないでしょうか。果たして私たちが社会の中で求めているのは使いやすい「奴隷のような存在」だということなのでしょうか。

そうではないことを祈っています。

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