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日本の少子化対策はなぜ失敗したのか

今回も本の紹介です。

日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』です。

日本が少子化だということは,もうあらためて言われなくても皆が認識していることです。第二次ベビーブームのときには200万人を超えていた1年間の出生数が,現在では90万人を割り込んでいます。そして,その「200万人」世代というのはまさに私の世代なわけで,すでに50代に手が届こうかという年齢になっています。

もしもその「200万人」世代が,自分たちと同じように子どもを生む世の中であれば少子化にある程度歯止めがかかったのですが,それが起こることなく時代は過ぎていってしまいました。それが,日本の誰が見ても明らかな,大きな「失敗」です。

いくら「子どもを生もう」とかけ声をかけたところで,子どもを生むわけではありません。子どもを生む前提となっている,結婚の段階で躊躇してしまう人が多いからです。そして,結婚をすれば,夫婦のもとに生まれることもの人数の平均はふたりなのです。

ではどうすればよいか,ということがこの本に書かれていることです。結論としては明確です。

 つまり,親の愛情と,世間体意識,そして,リスク回避意識の三者が結合して,少子化がもたらされていると考えられる。
 その状況に対して,欧米型の少子化対策,つまり,女性が働きに出られればよい,とにかく子どもが最低限の生活を送れればよい,という形での支援は「無効」なのである。(p.152)

日本では,結婚のはるか前から,子どもが生まれたらどうなるのか,老後はどうなるのかという見通しをもつ傾向があります。

できれば,普通の生活から転落したくはありません。ですから,できるだけリスクを回避して生活できる見通しを立てます。今の世の中のように,収入も増えそうにないし,子どもが生まれたら「早い段階から準備をしよう」と言われるし,それが終わったら「親の介護の準備をしよう」「自分の老後に必要な金額はこれだけ」と,さんざん脅される中で,人並みの暮らしをしようと思ったら,結婚を避けようと思うのも当然です。

そして,子どもが生まれたら,子どもが世間から見て人並みに育つように意識します。子どもを通じて自分も成長しようとか,子どもが育つ様子を見て楽しもうと思うよりも,「よい人生を送ることができるように頑張ろう」と考えてしまいます。子どもの市場価値を高めることに,価値を置いてしまいます。すると,「これだけのお金を子どもにかけないといけない」と先読みして,ますます「そんなに大変なら子どもはひとりで十分」と,自分が投資できる額で子どもの人数を決めてしまいます。

必要なことは,皆が「どんな人生を送っても,生きていけるから大丈夫」という見通しを持つことだと思うのですが,今の日本でそういう見通しをもつことができず,結果的に結婚も出産も躊躇してしまう様子が,目に浮かびました。

危機が目の前に迫ってから「なんとかしよう」と思うことがとても多いのですが、それではもう遅いのです。本当にもう手遅れなので,別の道を探すしかないでしょうね。でもそれは,なかなか厳しい道かもしれません。

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